吾妻・安達太良花紀行5 佐藤 守

ウスユキソウLeontopodium japonicum キク科ウスユキソウ属)


  山地帯の砂礫地等の乾いた草地に植生する多年草。ほう葉と呼ばれる数枚の花びらのような器官が真綿をかぶったように白く、雪が降りた様である。花はその上に着いている頭花と呼ばれる球形のもの。頭花は小さな花が集合したもので雄花と雌花がある。真夏の鬼面山の岩や砂礫混じりの斜面は、トモエシオガマやミヤマシャジンなどが咲きそろい華やかな雰囲気をかもし出しているが、その一角で、あくまでも白いことにこだわる様に涼しげに咲いている。

アルプスの星・エーデルワイスの仲間であることは有名であるが、エーデルワイスとの類似性が強いミヤマウスユキソウ(ヒナウスユキソウ)やハヤチネウスユキソウとの対比からか、ウスユキソウは「高貴さ」に欠けるなどと表現する解説書もある。花の「高貴さ」の基準については素人には知る由も無いが、私の印象は全く違っている。ウスユキソウの姿は凛としていて高山の仲間にひけをとるものでは決してない。なお、不思議なことにウスユキソウ属の植物は飯豊、磐梯、安達太良には植生するが、吾妻連峰では確認されていない。

ツルコケモモVaccinium oxycoccus ツツジ科スノキ属)


ツルコケモモの実

  針葉樹林帯の高層湿原に植生する蔓性の常緑小低木。ミズゴケのマット上に細い茎を伸ばし群落を形成している。葉は互生し、細長い楕円形。表面は光沢があるが、葉の裏は紛白色。葉縁は滑らか。花は頂性で、茎の先端に赤みがかったピンクの花を下向きに咲かせる。花冠の先は4裂し、反転する。花びらは繊細で、花びらについた水滴のレンズ作用で日焼けしているものが見られることがある。果実は意外と大きく、赤桃色に色づく頃は真珠の様に輝く。北欧や北米ではクランベリーと呼ばれ、コケモモと供にジャムやケーキ、果実酒等に利用される。

北欧の森の妖精を題材にしたトーベ・ヤンソンの童話「ムーミン一家」の中でもムーミン谷の湿原に植生するクランベリーやコケモモがムーミンママの料理の逸品として登場している。森の妖精が食する果実と思えば、その美しさも納得がいくような気がする。「ムーミン一家」のためにも湿原からツルコケモモ群落が喪失することのないことを祈る。

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