吾妻・安達太良花紀行1 佐藤 守

アリドオシラン(Mymechis japonica ラン科アリドオシラン属)

何気なく撮影したもののその名前が分からず、いつのまにか忘れてしまっていたものが、ちょっとしたきっかけで疑問が解けることがある。この植物は、「原生林を守る会」創生期の頃の観察会で標高1000m付近の2次林上部のブナ林で撮影したものである。その頃は、手持ちの植物図鑑は一般的なものしか記載されていなかったため、その名前が不明のままになっていたもの。

その後、本格的な植物写真撮影開始にあたって購入した図鑑でその名前を知ることとなった。1987年のことだから写真撮影から8、9年は経過していることになる。以来もう一度撮影し直そうと高山にかよっているが、正確な開花期が不明でまだ再確認には至っていない。ただ場所は明確に記憶しているのでいつかはその願いはかなうものとのんびり構えている。(2000年の西大巓清掃登山で13年ぶりの再会を果たした。)

テツカエデ( Acer nipponicum カエデ科カエデ属)

穂積初代会長親子達と高山の植生調査をした時の調査票に記載されていたもの。私自身は、それが植生していた地点に記憶がなく、そのままになっていたが、それから2、3年後に丸山旭さんと植生調査に入った際に麦平を過ぎた標高1500m辺りの針葉樹林で個体を確認することができたもの。その後カエデの花の撮影に集中的に取り組んだ時期があったが、開花期がいつになるのか分からずそのままになっていた。 

それが、1998年の6月30日に鳥子平から麦平を往復した折り、テツカエデの満開期と一致し、思う存分撮影をすることができた。テツカエデはオガラバナのグループに属するのだが、高山のテツカエデはオガラバナと並んで植生していたので開花期がオガラバナと同時期であることも知ることとなった。 

面白いことにオガラバナは直立して咲くのに対しテツカエデは下垂して咲くのである。またオガラバナはこの地点から上部一帯で植生が認められるのに対し、少なくとも高山の登山道沿いでは、テツカエデの植生はこの地点に限られることである。なお二十日平のブナ林では、オガラバナよりテツカエデが優占するカエデの群落が認められる。 

戻る 花紀行目次へ