コナラ林からミズナラ林の沢沿いなどやや湿った平地に植生する落葉小高木。関東以西に分布しているマンサクの変種で多雪地帯に植生する。
葉は互生、有柄で葉形は左右不対象に崩れたひし形。葉身の上半分が丸みを帯びることが名の由来である。変種小名のobtusata は鈍頭を意味し、葉の先端の角度が緩やかなことを意味する。葉縁は葉の下半分は全縁であるが上半分は緩やかな波状となる。葉脈は葉柄から先端に走る主脈から両側に5、6対の側脈が葉の下半分の葉縁と並行に斜上する。
花は腋性、短枝に複数の花軸を付け、その先に2〜4個の純正花芽を着生する。花は両性花。花の構造は4数性で、がく片、花弁、雄しべともに4個である。がくは赤紫色で反転する。花弁は黄色でリボン状に細長く、縮れる。がく片と花弁の色どりが華やかな雰囲気を醸し出す。雄しべの間には短い仮雄しべ(花粉を作らなくなった雄しべ)が残存する。雌しべは柱頭が2分する。アブラチャンと並ぶ迎春花で、早春に他の樹木に先駆けて花を咲かせる。2月下旬頃には高山登山口にいたる雪深い男沼林道周辺でもマンサクの黄色い花を観察することがある。開花期間は長く、葉の展開は花が咲き終わってからである。
マンサクは花芽の分化が難しいのか樹冠全体に花を咲かせる樹は少ない。2011年3月24日、私は防護服に身を固めて川俣町、飯館村、南相馬市の放射線量のモニタリング調査に従事した。何故、原子力関係の職場でもない私の職場に出動要請がされたのか、その理由も、命令を下した責任者も不明のまま。参集したメンバーは私の職場以外はすべて原子力関係を担当する県やJAEA等の職員であった。放り込まれた状況の不合理性と義務感が混とんとした緊張感の中で慣れない測定を繰り返した。石ポロ坂トンネルで測定を終え、ふと山際を見上げるとアカマツ林の縁に黄色い花を全面に咲かせたマンサクがぽつんと1樹。思わず心が和んだ。
|