森の素敵な仲間たち 野鳥シリーズ VOL.7 高橋 淳一

 

 野鳥の棲息には、餌の確保と子孫を残すための営巣地として、豊かな森や水辺の存在が不可欠である。しかし、人口の増加に伴なう開発や日本を含む先進国といわれる国々における浪費によって、それらの環境は日を追って減少し、我国においてもイヌワシやシマフクロウなど生態系の頂点に位置する猛禽類をはじめ、絶滅の危機に瀕している種は少なくない。一方、天敵の少ない人間社会へ適応することにより種を維持することは当然のこと、棲息数を増加させている者もいる。カラスはその代表格と言えるが、今回はそのような人間との関わりの中にしたたかさを身につけつつある鳥達を紹介する。

メジロ(目白) スズメ目 メジロ科

 3月の声を聞けば、福島でも梅の花がほころぶようになるが久しぶりの「冬らしい冬」のおかげで、開花はもう少し後になりそうである。「梅に鶯」という言葉があり、梅の花が満開の頃にウグイスを見かけることが多いとされているが、意外に多く見かけるのが目の周りに白い輪の有るこの鳥である。体長11cm程度で体の上部は緑黄色、腹部は白く、チーチー、チーチーと小さな鳴声を発しながら活発に動きまわり花蜜を吸っている。梅以外にも桜、椿の蜜を好み、人が与えるリンゴやミカンも喜んで食べると言う。大勢が集まることを「めじろ押し」と表現する場合がある。これは巣立ち直後の雛が体を寄せ合って並んでいることから引用した言葉だといわれているが、昔の人々はよく観察していたものだと感心する。また「鶯色」「鶯パン」などウグイスの体色を色彩にたとえ使われているが、メジロのほうがより近いのではないかと思えてならない。ところで、私自身、市街地でこの鳥を目にすることは無かったが、昨春、偶然通りかかつた民家の庭先で、満開の梅の木や餌台に集まる5、6羽の群れに出会った。多くの人々が往来する中、気にもせず動き廻る様子を微笑ましいと思いつつ、人間社会に依存していくことへの哀れみを感じてしまった。

コゲラ(小啄木鳥)キツツキ目 キツツキ科

 雪に覆われ、冷気に包まれた厳寒の森で、コーヒーを味わっていると、コン、コンと鈍く低い音が頭上から伝わってきた。音の発信源へそつと視線を向けると、スズメ程の鳥が、ミズナラやカエデの古木を盛んにつついている。時折、つつかれた幹の樹皮が無造作に地上に落下してくるものの、こちらの存在を気にする様子も無く、盛んに餌を探していた。黒褐色の背や翼には白い縞模様があるものの、冬の森でも比較的目立ちにくい色合の鳥である。この鳥も、多くの野鳥や動物たちと同じように豊かな森の存在がかけがいのない物であることは当然のことだが、近年では、東京など都市部の街路樹や公園でも繁殖が確認されるようになったという。自身も数年前の同時期に宮城県庁前のイチョウ並木にこの鳥を見つけたことを記憶している。一説には、成長した街路樹や公園樹が営巣に適するようになったということだが、騒音や大気汚染の深刻な都市に好んで棲む訳はなく、本質的には従来自然が豊かで有った都市近郊の開発が原因ではないだろうか。  
(原図 小学館・野鳥図鑑)


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