森の素敵な仲間たち 野鳥シリーズ VOL.5 高橋 淳一

 

10月の声を聞けば、吾妻山や安達太良山では紅葉が見頃となるが、今年も高温の影響か昨年同様、青葉が目立つようである。2週間は遅れているだろう。この陽気のせいか、冬場、低山や人里で暮す留鳥も下りるのをためらっているようで、亜高山帯の針葉樹林には、いまでも多くの鳴き声が響いている。

また、南の国へ旅立っているはずの夏鳥の代表格、メボソムシクイのさえずりが聞かれる一方で、市街地でも観察出きる冬鳥のツグミがすでにブナ林に飛来している。昨今言われる温暖化の影響を受けて、自然に生きる野鳥達のライフスタイルにも変化を来たしているのだろうか。それとも越冬地や繁殖地の森に異変が起きているだろうか。

キクイタダキ(菊戴)スズメ目 ヒタキ科

 日本で記録されている野鳥は、約550種と言われているが、最も小さいのがこの鳥である。体長は10cmあまり、全身淡緑色で尾羽と翼がやや黒味を帯びている。さらに体重も6g前後と1円玉6個分程度であり、どんな体の構造なのかと興味が沸いてくる。
 夏場、針葉樹林で繁殖するが、晩秋にはシジュウカラなどのカラ類に混じり低山の松、杉林等へ移動してくる。リリリリと、か細い声で鳴きながら枝先を動きまわり、小昆虫を捕食しているが、注意して見ないとなかなか見つからない。雌雄に共通する頭上の黄色い羽毛を「菊の花弁」に見たてて着けた名前には、良く観察したものだと感心するが、体が小さく虫のような鳴声から、子供のころは悪友達と勝手に「マツムシ」と命名し呼んでいた。

ウソ(鷽)スズメ目 アトリ科

 残雪の頃、針葉樹林の中をフィーフィーと笛を吹くような鳴声を発しながら、飛び回る鳥に出会うことがある。スズメよりやや大きめで、比較的小さなくちばしを持ち、雄は灰色、雌は褐色の羽毛につつまれている。また尾羽や風切羽そして頭部は黒く、雄は頬からのどにかけては鮮やか紅色である。
 秋から春にかけては、低地や人里で越冬しているが、果樹や桜の冬芽を食べてしまうことから、害鳥扱いされる場合が多い。ある桜の名所では、対応策として「麻の実」の給餌台を設けたところ、食べ残して地上へ落下した実が発芽成長した結果、大麻(麻薬の原料)であったため、あわてて刈取りを行ったとのエピソードもある。しかし、そんな厄介物も神事の中では、厄払い用の木彫りとして一役買っているのはなんとも面白い。

(原図 小学館・野鳥図鑑)


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