森の素敵な仲間たち 野鳥シリーズ VOL.2 高橋 淳一

森や水辺に棲む野鳥たちには、春夏に繁殖のために南方より渡って来る夏鳥。秋冬、北国から越冬に来る冬鳥。そして一年を通し一定の場所に留まる留鳥と生活スタイルの違いによって分類する方法がある。
 その中でも一年を通して姿を見ることのできる留鳥は私達人間にとって、最も身近な野生動物である。代表各のスズメやカラスは人間社会によく順応した鳥として馴染み深いが、農作物への食害やゴミ荒らしとやっかい物扱いされているのはなんとも皮肉な話である。
 一方、マスコット的存在の野鳥として愛されているのがシジュウカラなどのカラ類であり、ポスターやシンボルマークに度々登場している。
 今回は、これら留鳥の中でもカラ類と共に行動しながら以外に知られていない「エナガ」そして倒木や枯木に多くの食痕を確認しても、なかなか姿を見ることができないキツツキ科の「アカゲラ」を紹介する。

エナガ(柄長) スズメ目  エナガ科

カラ類はシジュウカラ、ヒガラ、ヤマガラ、コガラ等が混じった群れをつくり、森の中を移動しながら採餌しているので、その姿を見つけることは容易であるが、エナガもそれらの群れと行動を共にしていることが多く、群れをよく観察していればシジュウカラより一回り小さく、全体的に白っぽく、黒い翼に長い尾羽が目立つこの鳥を見つけることができる。またジュルリ、ジュルリ・・・と連続する鳴き声も特徴的である。そしてこの鳥のもう一つ特徴は、その小さな小さなくちばしである。日本に生息する野鳥の中で一番小さなくちばしを持つと言われている。しかもそのくちばしで、樹液を吸い、虫を捕らえ、木の実を食べる様子はとても愛らしい。 ところで「エナガ(柄長)」という名前の由来だが、尾羽をひしゃくの柄にみたてて付けられたと言われているが、小さく丸い体に長い尾の様姿を逆さまにしてみると、なるほどと肯ける。


(イラスト 瀬川 強)

アカゲラ(赤啄木鳥) キツツキ目  キツツキ科

冬のある朝、ピンとはりつめた冷気に包まれた厳寒の森に、コンコロロー……と木々の幹を叩く低い音が響いていた。音の発信源へそっと近づき、目を凝らして見れば、ミズナラの幹を伝わるように動くムクドリ大のキツツキ、アカゲラであった。キョッ・・キョッ・・と鳴きながら幹を垂直に昇り上がっている。白い腹部の羽毛は下腹部から尾羽にかけて赤く、黒い翼には白い斑模様があり、葉が落ち、雪に覆われたモノトーンの森ではよく目立っている。しかし警戒心が強く、人の話声が聞こえるとパッと飛び立ち、波打つように飛びながら森の奥へと入っていった。
 このアカゲラの餌は枯木に棲む昆虫が中心だが、そのような採餌木のある森は開発や原生林伐採によって、年々減少しつづけている。
 そういえば、奥深い山の樹林でしか見かけなかったこの鳥をここ数年自宅近くの桑畑で見掛けるようになったのは、何とも複雑な心境である。

(イラスト 瀬川 強)

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