馬場谷地問題のその後


  97年林野庁(旧秋田営林局)によって実施された、白布峠-馬場谷地湿原間の歩道整備事業(森林生態系バッファ-ゾーン整備事業)の諸問題が明らかになってから3年余が経過した。

同時期に実施した他の路線(幕川ルート・浄土平ルート:旧前橋営林局施工)に比較し、ずさんで乱暴な工事方法は、吾妻を愛する多くの人々に衝撃を与えたばかりか、当局ですら全面的に非を認めざるを得ない状況であったことは会報26号でも報告した。

その後、植生回復に対する当局の対応や関係者の熱意により、重機走行箇所へのロープ設置(登山者の歩行制限)や湿原ルートの閉鎖(新ルート開設)等、具体的な対策と検討が講じられてきた。また、当局よりの依頼に基づき米沢市のNGO「吾妻の森と緑のトラスト運動」を中心とする有志により、定期的な植生調査や湿原の水位調査などが99年より継続実施されてきた。私自身も水位調査に昨年と今年の計3回ほど同行させていただいたが、地道な作業を3年間も継続していることに対して頭の下がる思いである。

しかし、このような対策や調査については今年度限りで終了し、年内には検討委員会において管理方法についての方針が示されるとのことらしい。当然、湿原に打ち込まれた丸太(直径30cm、長さ60cm前後)の取扱い(残置or撤去)についても、議論されるものと思われるが、判断は非常に難しく、ミスした場合のリスクも大きい。慎重な対応が望まれるところである(丸太周辺の植生もかなり回復しているが乾燥化しているようにも見える)。

さらに、林野庁においては、今回示される結果により、一連の問題の解決を終了することの無いよう、自然の回復が明確になるまでの継続監視(今後10年程度)を加害者責任として実施していただきたいものであり、私達も見守り続ける必要があろう。(文責高橋)
                       

編 集 後 記

■歴史春秋社より会に「花紀行・奥羽山脈編」の執筆依頼があり、自然保護の視点を重視した編集内容を条件に受諾しました。そこで、事前に会員の方に会報にて、その概要を紹介します。気づいた点があれば連絡ください。■そのため、「吾妻・安達太良花紀行」、「東北のブナ紀行」、「森の仲間たち」は、2003年春までお休みさせていただきます。■西吾妻ロープ補修兼観察会で犬を連れた夫婦に遭遇し、驚いた。注意したら旦那に逆に睨まれてもっと驚いた。地元観光業者は、注意喚起していないのだろうか。観光資源保護の意味からもマイナスだと思うが。■そのロープ補修には、ここ2,3年内に入会された方々も多数参加された。特に女性の方々は慣れない力作業で大変だったと思いますが本当にご苦労様でした。■本会も参加している東北自然保護団体連絡会議が日本自然保護協会の沼田眞賞を受賞した。ブロック単位で毎年「自然保護のつどい」を行っているのは東北だけとのこと。改めて先人の努力に敬意を表したい。

 

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