デコ平スキー場に見る雪面硬化剤の環境への影響

8月の西大巓清掃登山の折,ゴンドラ下のスキー場一帯に広がるヨツバヒヨドリとハンゴンソウの群落に異様感を覚えた。他の地域に比べて草丈が大型な上、これだけの規模のヨツバヒヨドリの群落は見たことが無かった。

翌週、ロープ補修に再び訪れた時に、ゴンドラ駅前の倉庫らしき建物と終点駅の軒下に大量に積まれた硫安肥料を見つけた私は、かなりの量の硫安がこのスキー場で散布されていることが、ヨツバヒヨドリの大群落形成の原因であるとの確信をもった。それは、通常の農地であればまずまともな作物は収穫できないほどの量であることは、積まれた硫安の量から容易に推定できたからである。硫安は窒素成分であるアンモニアと硫酸基が結合した化成肥料であり、散布された後は土壌中の水分に溶けてアンモニアイオンと硫酸イオンに分離する。アンモニアイオンは酸化されて硝酸イオンに変化し、植物に吸収されるが、硫酸イオンは吸収されないので土壌の酸性化をもたらす。私は、植生と腐植質の脆弱なスキー場の土壌がこれだけの硫安を保持する力は持ちえず、かなりの量の窒素イオンと硫酸イオンが中ノ沢に流れ込んでいるのではないかと不安になった。

それから間も無い9月15日に小林淳雄氏から誘いを受けて、県自然保護協会主催の「猪苗代湖のアサザ観察会」に参加した。これは、猪苗代湖北岸の水質汚濁に伴うアサザ群落の衰退を危惧して開催されたもの。観察会後の小林氏とのメール交換でデコ平の件を紹介したら、日本生態学会誌に「スキー場の雪面硬化剤の環境への影響」について発表されているとの情報を頂いたのでコピーを送って頂いた。その論文は長野県野沢温泉スキー場でのケースを調査したもので、硫安の散布の実態は意外と知られていないこと。スキー場の散布量は農地の6倍以上に達していること。硫安散布によりヨツバヒヨドリ等の大型化と植相が単純化していること等を明らかにしている。この論文の調査結果は殆どデコ平スキー場と似ており、私の推測を裏付けるものであった。

ところで、県自然保護協会のHPでは「猪苗代湖の北岸の水質、著しく悪化」との朝日新聞福島版 2000年1月11日の記事を紹介している。その内容は、「県の1999年度調査では、北岸の汚濁の指標となる化学的酸素要求量(CCD)は、環境基準(1g当たり3r)を大きく上回り、1g当たり9.5rで、基準を超す4〜6rのところが多く、10年前の調査に比較し全般に悪化していることが明らかとなった。原因は、生活雑排水の増加や田畑から流れる肥料、スキー場の融雪防止剤、キャンプ場の排水などが考えられるとし、対策として、下水道の整備予定がない地域への合併処理浄化槽設置、水中に排気ガスを出すプレジャーボートの利用区域規制、家畜排泄物の適正処理、融雪防止剤の使用量低減など30項目以上を盛り込んだ水環境保全推進計画を策定する予定。」というもの(ここで融雪防止剤とは雪面硬化剤を指す)。

県が今後、スキー場に対しどのような具体的指導をしていくのか注視するとともに、環境庁サイドにもスキー場における雪面硬化剤への対応について確認していく必要があると思う。(文責 佐藤 守)

 


大型化したヨツバヒヨドリ群落


硫安散布で予想される環境への影響(日本生態学会誌1999:建元、中村)


 

高山の原生林を守る会 2000年度定期総会報告

(1)2000年度活動報告

1月28日  環境庁へ登山道整備についての意見書提出

 2月 6日  自然観察会(峠駅周辺):参加者15名

 3月4、5日 高山調査 :5名

 3月15日  環境庁へ要望書提出

 4月23日  自然観察会(微温湯周辺):参加者20名

5月 2日  高体連へのルート表示用ポール寄贈

 5月21日  馬場谷地湿原植生回復検討委員会出席: 2名

 5月28日  千葉県我孫子市立白山中学校自然体験学習会講師派遣:2名

 6月 4日  自然観察会(中吾妻山麓):参加者30名

 6月11日  馬場谷地湿原植生回復調査(雨量観測計荷上げ):2名

 8月27日  自然観察会(西大巓)(清掃登山):参加者25名

 9月 3日  西吾妻誘導ロープ補修:2名

10月13、14日 東北自然保護の集い参加(青森県鯵ケ沢町):2名

10月22日  自然観察会(高倉山周辺):11名

11月 5日  馬場谷地湿原植生回復調査(雨量観測計荷下げ):1名

11月26日  自然観察会・総会(高湯)

(2)2001年度自然観察会予定

 

期日

場所

定員

内容

第45回

2月4日

男沼・女沼周辺

20名

厳冬の滝観察会:女沼の「思いの滝」を訪ねます。                        

第46回

4月22日

高山

20名

高山の雪上観察会:鳥子平付近から残雪期の

高山の森を訪ねます

第47回

6月23、24日

西吾妻

20名

登山道調査とロープ補修:梵天岩付近と西大巓

のロープ補修をします。1泊2日を予定しています。

48回

8月26日

幕川周辺

20名

幕川周辺ブナ観察会:幕川温泉からスカイラインに

いたる遊歩道コースを訪ねます。

第49回

10月14日

デコ平-中津川

30名

中津川渓谷紅葉観察会(芋煮会付):二十日平

から中津川渓谷までの紅葉を楽しみます。

第50回

12月1、2日

栂森

30名

50回記念観察会・総会:観察会50回目を記念して

土湯周辺の温泉に泊まって初冬の森を散策します。


(3)総会発言から

l         花と森ガイドの本を手本に歩いている。仙水沼への道は自然度が高くて感動した。

l         中津川の観察会が楽しみ

l         皆勤賞を2年連続で受けて励み。家族と話題作りに活用している。教えてもらう一方だが、何か自分の出来ることは何か。来年も楽しみ

l         西大巓で登山時に集団登山に出会ったことが印象的。景場平上の展望台で、木道の数箇所の休憩所には疑問。弁天山の遊歩道は、ほとんど公園で自然を楽しむには程遠い。

l         どの山に行っても、自然度が低くなってきた悩みがあって、山登りはスランプ

l         いい山、いい場所を案内することへの、抵抗感がある。

l         夫を尾瀬に誘ったら「ゴミ拾い」を見て感心していた。大勢で山に入る功罪の難しさ。

l         来年こそは図書券をもらいたい!

l         観察会は興味が尽きない。子供を自然の世界に誘うことの面白さ。それが出来ない状態で環境を理論化しようとする。子供を自然に連れ出すことが最も大事で、理論ではないはず。

l         昔の山岳会は、4〜5人で出掛けていたような気がする。近年はバスで集団で登ることが多いような気がする。山は観光地。登山者は観光客に成り下がっている。

l         山の自然度が低くなっている。一昨年「うつくしま百名山」というイベントがあった。自治体は山は観光地と同じ感覚。道を造る、看板を建てる、公園整備をして金を使う、金を使わせることが主体。山は観光地。登山者は観光客は実態。昨年提案のあった「全員参加イベント」の宿題をもらっていながら、中々アイデアが無い状態。しかし自分なりに考えるのは「140人集まる」ことは罪悪か?我々に出来ることを、やっていくしかない。

l         行政に対しては、言うべき事は言う姿勢が大切だ。さりげなく言う必要がある。名山以外の山に登って、自然度の高い山を楽しんでいる。吾妻連峰と飯豊連峰の間の尾根の観察を行っていきたい。

l         福島市側の登山道の刈り払い幅が広いような気がする。

l         自然保護の知識を少しでも体験してもらうために友人を誘いたい。せっかく木道を造ったのに、その外で休むなど、無知なことがあるので、それを正す意味で観察会に参加をしたい。

l        浄土平のビジターセンターがあるのに現場ではマナーが守られない。ビジターセンターでそのような教育をすべきだ。

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