西大巓周辺誘導ロープ補修作業の報告          高橋 淳一

登山ブームによる大量入山は、各地の山域で様々な問題に直面している。吾妻連峰でも例外に漏れず、アクセスの便利な浄土平周辺や山頂付近までスキーリフトが延びる西吾妻山には、夏から秋の登山シーズン中に多くの登山者が訪れ、その結果、東吾妻山頂や人形石、いろは沼、弥平平などでは裸地化が深刻な状況となってしまった。これらを背景に平成8年度より、「緑のダイヤモンド計画」(環境庁、福島県、山形県)による保全、復元作業が行なわれている。一方この復元事業から外れた、西吾妻小屋、西大巓間には米沢市と地元山岳会によって数年前から誘導ロープが設置されている。

しかし、例年積雪により損傷し機能しない状況となっており、去る9月3日、関係者(環境庁、設置者)の承諾を頂き補修作業を行なった。当日は、朝から雨模様という悪コンデションの中、グランデコスキー場から幹事の佐藤氏と2時間半余(期待のゴンドラは8月末で運行終了)の歩行をへて現地に到着、作業に取り掛った。作業は雪の重みで折れ曲がった鉄杭の修正を行ない、再度打込んでから、ロープを張り直すという順序で3時間余りを費やし、最小限の補修を終えた。しかし、毎年必要となる作業を考慮すると、今後は環境庁、地元市町村そしてコンドラを運行するグランデコ、天元台両スキー場関係者による組織的な体制が必要であるとともに、本格的な復元作業の実施が不可欠であることを実感した。

実施状況

補修区間全景(裸地化した登山道)

ガレ場と化した水場から西大巓頂上側

ガレ場と化した水場から西吾妻頂上側

水場入口補修前

水場入口補修後

水場から西吾妻頂上側補修前

水場から西吾妻頂上側補修後

【編 集 後 記】2001年須賀川市で開催される未来博のニュースや話題が、新聞、テレビを賑わすようになった。「森」や「自然との共生」をテーマとする博覧会だということで、各パビリオンの建築にも自然素材の積極利用やリサイクルを検討するとのことだが、結果はいかに。また、「森」(雑木林)を造成しての会場跡地は宅地としてリサイクル?するという。一方、愛知万博は「海上の森」を保全しようとの市民の声により、「森」の改変は当初計画の100分の1以下に縮小し0.5ha程度に抑えられることになったという。当然、150haの宅地開発は白紙に。名古屋市と須賀川市、同じ「森」を舞台にした議論、テーマ、大都市と地方小都市の市民意識に隔たりがあるのは当然だが、そこに棲む野生動物たちの生きる権利や命の尊さに違いはあるのだろうか。■「カタクリの会」の瀬川強さんの提唱による「グリーンベルト構想」が東北森林管理局(旧青森・秋田両営林局)で「奥羽自然保護樹林帯」として策定されたのを契機に、林野庁では全国的展開を行なうことになった。福島県の国有林を管轄する関東森林管理局(旧前橋営林局)でも本年度中に南会津(只見町他)地域の策定を完了させるとのこと。また、「吾妻、飯豊」等、福島、山形両県境(東北森林管理局との隣接区間)についても平成13年度以降策定作業を予定とか。「蔵王-吾妻-安達太良・飯豊-朝日」をグリーンベルトとして結ぶことを願う「守る会」としても、積極的に提案して行きたい。■西大巓清掃登山のおり、デコ平スキー場を被うヨツバヒヨドリとハンゴンソウの大群落に驚いた。翌週、誘導ロープ補修のため再訪して、その原因を、思わぬところで知ることとなった。詳細は次報で紹介したい。

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