女神山整備に係る投稿と回答
会報31号の内容に対して月舘町在住の長谷部氏から投稿がありましたので,その全文と事務局からの返信を掲載します。

女神山について                長谷部 精(月舘町在住)
 高山の原生林を守る会会報「高山」第31号(99年12月発行)に対して一文を寄せたく筆をとりました。女神山頂の岩は女神山の象徴としてこの地方の人たちに尊ばれ、一名「雨乞岩」とも言われてきました。この岩に登ると不思議に雨が降り、昔旱魃のときには蓑笠姿で祈りを捧げたと伝えられています。古老の話では昭和初期まで実施されました。かつては注連縄を張り、毎年張り替えて尊崇されてきて、地元の人たちは絶対登らぬことにしています。
 現在女神山には県内外から大勢の人々が登っていますが、雨乞岩まで登るのには私も心を痛めていました。幸い昨年春、川俣町秋山在住の「女神山を愛する会」会長蓮沼昇氏外会員が、雨乞岩の周囲に鎖をとりつけてくれました。現代にあって雨乞いの行事は行われていませんが、神聖な岩をいつまでも守ってゆきたいものです。
 昨年秋に県職員、月舘町役場職員、伊達森林組合職員、川俣町蓮沼昇、飯野町伊藤俊英、月舘町長谷部茂の各氏と私で、女神山の景観・保護対策を山頂で話あいました。山頂附近も立木が伸び放題に伸び、360度展開でみえるものも大分見晴らしが悪くなっていました。また、東斜面にはカタクリの群生地があり、群生地に影響を及ぼさないように注意を払いながら立木を伐採することにしたものです。 
 私の友人で、一昨年ふくしまテレビが選んだ「うつくしま百名山」に半分以上登ったのが居りますが、せっかく頂上まで登っても立木が繁りなにも見えなかったという山も幾つかあったと話しています。 月舘町、川俣町の地元では登山者のために春秋道づくりをし草を刈り、大雨の災害があって登山道が荒れたときにはその修復に心がけています。私たちは登山者へのサービスを主にするものではなく、私たちが誇りとする女神山を大切にしたい心でいるものです。

事務局からの返信
 里山は地元の方々によって、守られていることがよく分かりました。特に山頂の雨乞岩に関しては、初めて訪れる者は知らない場合が多く、後世に伝えたいものだと思いました。しかし長谷部さんの言う通り「登山者へのサービスを主にするもの」ではないとはいえ、山頂に付けられた展望覗きパイプや山頂付近の伐採には疑問も残りました。パイプは雨乞山であった山頂の景観を損なわせ、伐採は展望の代償にしては余りにも大きいように思えました。山頂のパイプや展望のための伐採は「登山者への誤ったサービス」であると思いました。山頂からの展望は、確かに楽しみなもの。「うつくしま百名山」を半分以上も登った方でさえ、山頂の展望を望んでおられます。しかし山頂が素晴らしい雑木林で覆われている山もまた魅力なのです。女神山の残された雑木林は実に美しいものです。福島の山をたくさん数を登っても、何が大事で、何が魅力かが分からないことは残念です。そしてその様な方の意見にのみ傾聴し、女神山の森の良さをなぜ、活かさなかったのか残念で仕方ありません。伐採された山頂周辺は、近い将来イバラが繁殖し、またそれを刈る必要が生じるかも知れません。
 今回の観察会で、多くの発見がありました。中腹の森では、萌芽更新技術を長年行ってきた貴重な地元の先人の営みの後が多く残されているのが、他の山にない女神山の価値であると感じました。その山の頂上部での伐採や後継樹の伐採がされているのは、これまで女神山を守り育ててきた地元の先人の苦労に報いることではないはずです。 カタクリの群生地は適度な土壌水分が保持されていることで生息が可能であるのです。頂上部のただでさえ乾燥しやすい条件であるところに、伐採はより乾燥を早め、登山者によって運ばれるキク科の野草の繁茂を促進する可能性があります。山は木によって守られていることを忘れてはなりません。
 私が初めて女神山に登った20年前から素朴な里山の雰囲気が好きで何度か訪れました。しかし近年登って落胆したのは20年前には無かった七ツ森林道が開かれ、大雨で土砂崩れした林道であり、山頂周辺の風景(パイプや伐採)でした。「うつくしま百名山」の本で田部井淳子さんは『「うつくしま百名山」に選定された山々については、あえて百名山の標識などを立てるべきではありません。標識自体が自然を壊すゴミになるからです』とあります。自然を自然のままで残すことの大切さを語ったものです。 
 女神山には長谷部さんたちが取組んでおられる登山道の草を刈る程度で十分であると思いました。 今後パイプを外すことや、将来山頂周囲の森が育った場合の森のあり方などを地元の皆様で話合われることをお願いします。そして長谷部さまのおっしゃる通り、「誇りとする女神山を大切にする心」で、登山者への誤ったサービスではなく、これからも美しい里山を大切にして頂けることをお願い致します。  (文責 奥田 博)


新たな地域管理経営計画の概要と高山
 一昨年に行なわれた国有林野の制度改革に伴ない策定された、地域管理経営計画及び実施計画については、昨年の4月会報にて概要並び当会としての意見を掲載致しましたが、計画年度が旧制度によって策定された流域毎の施業管理計画との調整により、阿武隈森林計画区(白河〜福島の中通り地域)について平成12年度〜16年度の5年間を新たな計画年度とし昨年12月に決定されました。
 前回の計画策定の際は原案の縦覧及び意見書提出を行なってきたところでありますが、今回は情報収集の遅れより意見提起の時期を逸し、反省の残る結果となってしまいました。しかし計画内容は前回計画と大差なく、森林保護の面からみた場合でも進展も後退も無い状況となりました。
 今後の対応としては、高山の機能類型区分の見直し(自然維持林への編入)を5年後(平成16年夏頃)の次回計画策定を睨み福島市を始めととする関係機関へ働きかけしていきたいと考えております。
 なお、決定した計画は、各森林管理所(旧営林署)で閲覧できますので、興味のある方は是非ご覧下さい。また、概要等につては、下記に示します。

機能類型別面積の前回計画との比較
機能類型区分 タイプ 目的 現在計画 次回計画
水土保全林 (国土保全)  災害の防備 7,756 ha 7,776 ha
(水源涵養) 渇水緩和・水質保全  38,258 ha 39,465 ha
森林と人との共生林 (自然維持) 森林、野生生物の保護  6,998 ha 6,997 ha
(森林空間利用)レイリエーション利用(スキー・ゴルフ) 9,008 ha 8,519 ha
資源の循環利用林 (林業生産活動)木材生産・その産業活動 30,587 ha 29,681 ha

高山周辺の伐採計画
7林班な1、2小班 男沼林道台ケ森山・南西斜面 ミズナラ等20%択伐(薪炭材の供給)
37林班わ3小班 高山登山道瀬峰南西斜面 ミズナラ等20%択伐(薪炭材の供給)

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