山が好き

 

編集後記に変えて:震災後5年に思う

2011311日の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故が発生してから5年が経過した。津波と原発事故の衝撃は大きく、おびただしい数の人々の生活と人生に大きな影を落とした。原発事故は深刻な環境汚染を引き起こし、福島の美しい自然を誇りに思い謳歌していた県民は絶望のどん底に落とされた。事故を契機とし、日本の原発行政は大転換を図られるものと誰もが疑わなかったはずであった。5年が経過した今、建設から40年以上経過した原発でも新たな安全神話のもと再稼働が許されるまで原発行政は「復興」し、震災前は深刻な不況に喘いでいた大企業は除染や大防波堤工事などの公共復興事業に忙しい。一方、被災者間では除染廃棄物処理や津波被害のシンボルの扱いなどを巡る擦れ違いが顕在化している。忘却とともに浸透する無責任の拡散。この5年で顕在化したのは復興ではないように思う。環境回復への時間軸を取り戻すためにも、見え透いた大義名分や偏見を排して自然が示した警告を直視する眼を養い、起きてしまったことを記録し、後世に伝えることを忘れてはならない。