鳩峰峠広葉樹植林地の現在

高山の原生林を守る会では、20022008年の7か年にわたって鳩峰峠の牧草地で植林を行いました。当時は全国的に植林ブームで環境税など公的資金を活用した植林も行われました。その多くはブナ林の再生を目指したものでした。当会が実施した植林もブナ林再生を目指したもので、その経緯と内容は以下のようなものでした。
1.
植林地の由来:国有地をJA高畠が借り受けて経営していた鳩峰牧場を閉鎖することになった。借地を国へ返還するためには現状復帰が条件とされていることからJA高畠が広葉樹の植林を計画した。当会はこの事業に協力する形で参加した。
2.
標高は700m750m。現地はブナ林の開墾地であり、ブナの壮木が残っている。先駆的樹種のカバ類では、ハンノキの幼樹が既に育ちつつあり、マント植生ではタニウツギ、アキグミが再生定着していた。
3.
 植林した樹種と選定理由
(1)
樹種:ミズナラ、コナラ、アカシデ、クマシデ、イタヤカエデ、トチノキ、ナナカマド
(2)
 選定理由
@自然遷移によるブナ林形成のための環境を整えるため、ミズナラ林を養成する。
A翼果を持つ樹種(シデ類、カエデ類)を中心に植栽すれば、風によりかなりの範囲まで自然は種されるため、かなりの速さで二次林の復活が期待できる。
Bどんぐりを安定生産するミズナラ林を育成し、鳥類や小動物のえさを確保する。
当初は労働組合などの植林イベントも催されましたが、7年間継続的に実施したのは当会のみでした。植林した苗は福島森林管理署を通じての購入苗が中心でしたが、試行的に現地のブナの芽生えを採取、各会員に養成されたものや会員のコナラの芽生えなども植樹しました。また苗の購入資金の一部として、当会や当会会員が所属していた福島山想会からの経費も充てられました。7年間で植栽した苗は約2000本、植栽に参加した会員は延べ198名でした。
今回の観察会では、マザーツリー近辺の生育良好なミズナラ、コナラ、クマシデ併せて5樹の樹高、樹幅、幹周(高さ70130p)を測定しました。ナラ類は、樹高35mまで達し、結実も確認されました。クマシデはナラ類より更に生育が良好でした。対照的にイタヤカエデは極めて生育が不良でした。ブナは、活着したもののナラ類よりは生育が劣っていました。ミズナラに隣接したマザーツリーの芽生えと思われるブナは比較的良好な生育をしていたことが注目されました。今回の調査から上記選定理由の3項目の内@、Bは目的通り経過していますが、Aのイタヤカエデについては見込み違いでした。また、クマシデは山形県での自生地は極めて少ないことが植林後、判明しました。今後の生育経過を注視していきたいと考えています。なお、植林地ではブナ林では見かけることの少ないイノシシの砂浴び跡が広範囲で観察されました。撹乱により植生が変化するでしょうか。

胸高直径は高さ130pで測定

スリムなコナラ

よく枝が分岐したミズナラ

ミズナラの種子

次はどの木を計ろうか

樹幅は意外とあるね

ミズナラの生育は良好

ブナのマザーツリーと植林地

 

鹿狼山から  
31 〜一人で登る山〜    小幡 仁子

12月になってあちこちで雪の便りが聞こえると、土曜日・日曜日の朝、鹿狼山の駐車場は大勢の登山客で賑わう。車を停めるスペースがないくらいだ。震災以降は飯舘村・浪江町・双葉町等の阿武隈山系の山は放射能汚染により歩き難いものがあるから、放射能が少ない阿武隈北部に人が集まっているのだろう。鹿狼山以北の山々もずいぶん整備され、道標も新しいものになっている。冬枯れの一日、木々の間から青空を垣間見たり、西には蔵王連峰、東には太平洋を眺めたりしながらの山歩きは楽しいものである。大勢の人が集まるのは頷けることだ。

 さて、今日は久しぶりに鹿狼山に一人で来た。震災以降は姉や山友達と一緒に登ることが多くなった気がする。あの震災以来、「世の中、いつどんなことが起こるか分からない」という漠たる不安感が消えない。どんなことが起こるか分からないのは当たり前のことで、そんなことを気にしていたら何も出来ないとは分かりきっていることだ。しかし、心の奥に病魔のように巣くっていて、何となく気が晴れないのを感じている。また、「鹿狼山に熊が出た」というニュースが流れた時に、高齢の父が、私が一人で鹿狼山を登るのを心配したせいもあったかもしれない。熊の正体は大きな黒いイノシシだったらしいが、一人で登るより複数の方が安全で安心ということになったのだと思う。

若い頃は、よく一人で山歩きをした。飯豊連峰のように標高が高く山懐が深くて、山小屋に泊まらなければならないような山でも、大して怖いとも寂しいとも思わずに歩いたものだ。今から30年も昔のことである。一人で歩きたかったのか、たまたま一緒に登る人がいなかったのかは覚えていない。ただひたすら足を前に出して、がむしゃらに歩いた記憶がある。若かったから、自分の力を試したかったのかもしれない。前を見ても、後ろを見ても誰もいない、ただ、来し方行く末に一本の登山道があった。遠く懐かしい思い出である。

 

一人歩きは存外気楽で楽しいものだ。自分のペースで歩けるし、好きなときに休み、好きな時に写真を撮り、誰かに気を遣うこともない。花や樹木、風やお日様が友達だ。一人で歩いた方が自然を身近に感じるかもしれない。単独で歩く人は年代に関わらずどの山にもいる。みんなそれぞれに、自分の自由な時間と自然を楽しんでいるのだと思う。
 子育てが一段落して山登りを再開してからは、一人での山歩きをほとんどしていない。一人で歩くのは鹿狼山だけだ。体力的なことや家族のことを考えると、無理は出来ないと思うようになった。それに、気心の知れた山仲間と一緒にあちこちの山に行くのが楽しい。また、「高山の自然を守る会」で自然観察会を始めてからは、会員の皆さんとともに、自然の美しさや不思議を学ぶ機会を得て、色々なことを教えてもらうことが多い。ルーペを通して見る花々や樹木の世界は驚くほどに緻密でよく出来ており美しい。そこには「感動の世界」が広がっている。そして、その感動を仲間と分け合うこともうれしいことである。

 

自分の山登りに「自然観察」という視点が加わってからは、山々の印象はまた別なものになってきた。植物は地域によって植生が違っている。あちこちの山に行く度に、今度はどんな花や樹木に会えるかと楽しみが増えている。
 今日、鹿狼山を一人で歩いたご褒美は、アオゲラに出会えたことだ。コゲラはよく見かけるが、鹿狼山でアオゲラに出会ったのは初めてだった。人の少ない午後に一人で歩いたのが良かった。アオゲラは暗緑色だからそれとすぐに分かった。頭と顔に赤い線があったから雄である。お腹にはコゲラと同じような黒い縞模様があった。なかなかファッショナブルな鳥である。杉の木に縦に止まって何やら忙しくつついていた。後で調べたら、アオゲラは主にアリ類を餌とし、多くは虫におかされた木をつつくらしい。健全な木をつつき回ることはなく、林業では益鳥、となっていた。虫が沢山いたのか、結構長い時間、同じ所に留まっていてくれた。冬になると、色々な種類の小鳥たちにも会えるが、大人数でがやがやしていては見ることが出来ない。一人歩きもラッキーなことが多いのだ。(2014/12/17記)

東側・太平洋、手前はマユミの実

西側・宮城蔵王

熊注意の看板

 

高山の原生林を守る会 204年定期総会報告

                  20141130日(日) 午後13001530

福島市東部学習センター

1.    201年活動報告

 

月 日

内 容

参加人数

1124日(日)

131回 第131回 高松山(蛾?山)里山陽だまり観察会

14名

223日(日)

132回 高湯-不動沢登山道周辺ブナ林雪上観察会

4名

429日(火)

133回 奥土湯ブナ林・スプリングエフェメラル観察会

20名

525日(日)

134回 古霊山自然林新緑観察会

15名

621(日)

西吾妻登山道誘導ロープ設置ボランテア(NF米沢と共同)

4名

76日(日)

135回 早稲沢夏の山岳植物観察会

12名

823日(水)

西吾妻山域登山道保全に係る環境省東北地方環境事務所裏磐梯自然保護官現地説明

2名

9月23日(火)

霊山空間線量調査(学習院大学・村松教授同行)

3名

928日(日)

136回 龍ヶ岳自然林と鳩峰峠の植林地観察会

14名

1018日(土)

西吾妻登山道誘導ロープ取り下げボランテア

5名

11月11日(火)

吾妻山周辺森林生態系の保全管理に関する検討会(主催:置賜森林管理署)

1名

1130(日)

137回 弁天山・里山陽だまり観察会・総会

14名

 2.201年会計報告(1125日現在)

 

.皆勤賞

松井さき子

 

.201年活動計画

(1) 2015自然観察会は、別項へ

 観察会参加費は500円とする(保険代および30周年記念事業の基金に充てる)

) 山岳の放射線量調査

2011年より継続している学習院大学村松教授の霊山の放射能汚染調査を実施する

調査候補山岳:箕輪山、高山、花塚山、虎捕山、野手上山、高太石山

) 西吾妻山域登山道保全管理に関する検討会の設置にむけた活動

西吾妻山域登山道保全管理に関する検討会設置について置賜森林管理署、環境省裏磐梯自然保護官事務所NF米沢との連携を図る

(4) 高湯地区共有林放射能除染土壌仮置き場設置問題に対する対応

高泉修氏、県自然保護協会との綿密な情報交換により、共同歩調を図る。