我が家の動物記   河上鐐治  2014625

現在の仕事といえるものは、庭の草むしり位です。自然観察会に中々参加できないので、我が家の自然について報告いたします。

1 動物編
 @ スズメバチ
一昨年の秋、生垣に絡みついたヤブカラシの蔓を引き離したところ、その陰にラグビーボール大のスズメバチの巣があり、下部の出入り口の穴から出てきたキイロスズメバチが不気味な羽音をさせながら頭上を旋回し、いつでも襲い掛かるぞといった態勢でした。これは危険と地面を這いながら後退し、安全と思われるところで立ち  
上がり逃げ帰りました。多少経費がかかりましたが、命あっての物種と業者を頼んで駆除しました。
昨年の夏、やはりヤブカラシの蔓を取り除こうとしたとき、突如上唇に蜂の一刺しを受けました。瞬間顔全体がかっかと熱くなり、痛みが口のなかに広がりました。直ぐに近くのクリニックで処置してもらい、事なきを得ました。昔ある女性が言った“蜂の一刺し”を思い出しました。
さて今年は春、雪解け期に庭木 の剪定と合わせて生垣の刈り込みを、シルバー人材センターに依頼しました。
作業を始めて直ぐに写真のスズメバチの巣を持ってきました。蜂が全部飛び去って空だから良かったものの、これに蜂が入っていたら大変でしたよ、と。巣のあった場所は、昨年蜂に刺された場所の直ぐ近くで、そこで仕事を止めたからよかったものの、そのまま続けていたら、大事になっていたかも知れず、何が幸いするかもしれません。

 A 狸
 家の右側の生垣をくぐり、庭を横切って左隣の庭に入って行ったり、向かいの家の方に行ったりする茶色の小動物が時々姿を見せます。猫ではなく、小型の犬のようですが犬でもなく狸と思われます。最初は1匹でしたが、その後2匹で連れ立って現れるようになりました。狸は夜行性なので中々見ることはありません。子狸が夢中で遊んでいるうちに、家に帰る道を見失ってしまい人里に迷い込んでしまったのか。近くの道路で親狸が交通事故にあって死んだとの話を聞き、その子供なのか。いずれにしても小さな兄弟で、住処を離れた異郷の地で、必死で生きていこうとしている姿に哀れみを覚え、早く住処に帰り、一族、仲間と楽しく暮らすことを願っています。それにしてもここ暫く姿を見せないのはどうしたことだろうか。

2 植物編
@ 食用山菜
 ワラビ
 20年前今の宅地にする前、空き地にしていた場所にワラビが生え、小人数で食べるには十分に採集できました。宅地として約1メートル埋め立てましたが、10年ほど前から又ワラビが生えてきました。10年経って1メートル下から生え出してきたのか不明です。だがここ23年不作で雑草に負けたのか、環境を整備しなければと思っています。
 コゴミ
 2株知り合いから貰って庭の片隅に植えたのが毎年増え、10株以上になりました。土地が合ったのか毎年思わぬところから芽を出します。一度だけ胡麻和えにして食しました。
 カンゾウ
 先日テレビを見ていたら、カンゾウの茎を食材として料理しているのを見ました。家の庭にもノカンゾウが毎年困るほど生えてきます。どの種類のカンゾウが食用になるのか、料理法は知っている方がおりましたら教えてください。トリカブトとかバイケイソウのように猛毒の植物もあるので。

A 食用樹木
 タラの芽
 タラの木は伸びた地下茎から思わぬところから新株が生えてきます。毎年天ぷらにして食しています。次々と新株が増えるので、知り合いに分けてやりましたが、そのうち親株が枯れてしまい、新株も生えなくなってしまいました。1本だけ残ったのが、今年も新芽を芽吹きました。これを次世代の親として新世代を繁栄させたいと思い採芽は一食分だけにしました。盛んに枝葉を伸ばしています。
 サンショウの木
 庭のあちこちに生えています。意識して植えたのは2本だけなので、後は小鳥のお土産でしょうか。そのうち実のなるのは1本だけです。“山椒は小粒でもぴりりと辛い”というので 歯で潰してみましたら、口がしびれるようでした。毎年鰊の山椒漬けを作っています。

B 果樹
 グミ
 青い葉の間から真っ赤な実がぶら下がっています。グミには何種類かがあるが我が家に有るのはナツグミか。丁度今が食べ時である。子供の頃どこの家にも1本ぐらいはあって、木に登って食べたものでした。シブグミといて、あまり食べると尻が詰まると言はれたものでした。手の届く所の23粒を食べ子供の頃の郷愁を感じました。
 ビワ
 去年は不作だったが今年は豊作のようです。シルバー人材センターに依頼した剪定で花の咲いていた枝が大分切られてしまったが、下のほうが残って今青い実をつけています。毎年鳥との競争で、少し色付いたから明日あたり食べ頃かなと思っていると、翌朝もう鳥にやられて地面に落ちてしまっています。鳥は早起きで毎日観察しているので、どうしても負けてしまいます。さて今年はここ何日かが勝負です。

C 樹木
 ナラ、ケヤキが葉を茂らせています。これでどれだけの酸素をこの地球にもたらしているか、毎日眺めています。実生やひこばえがあちこちに生えています。なかにはさつきなどの中に入り込み他の樹木の生長を邪魔しているのもあります。掘り出して捨てようかとも思っていますが、せっかく生えてきたものを切り捨ててしまうのは可哀そうですので、誰か希望者がいれば差し上げますので申し出下さい。

スズメバチ     

タヌキの子供   

 

鹿狼山から  
30 〜ヤマユリの戦略    小幡 仁子

9月になって、鹿狼山も秋の気配がしてきた。タマアジサイが終わって、紫色のコバギボウシが登山道沿いに点々と並ぶと、今年も秋がやってきたと思う。そのコバギボウシも盛りは過ぎていた。センニンソウもいつものようにアセビの上に白いベールを広げていて、赤いミズヒキや黄色のキンミズキヒキがあちこちに咲いていた。キツリフネもあったし、シロヤマギクやオトコエシ、ヤマジノホトトギスも白く存在感を出していた。うれしいことに、クサボタンが花びらをくるんとさせて、かわいい薄紫色の花を咲かせていた。鹿狼山は色とりどりでなかなかの賑わいであった。

 

樹木の方はどうなったかと見上げると、オトコヨウゾメにはオレンジ色の実がついていた。もう少しすると赤い実に変わることだろう。今年は山頂直下のヤマボウシの実が豊作で、日当たりが良いせいかずいぶん濃いピンク色に熟していた。一緒にいた姉が、あれは何の実かと聞くので、あれはヤマボウシの実だよ。お猿の大好物というから食べてみたことがあるけれど、ちょっと甘くてぬるぬるしていて、そう美味しくはないけれど、お猿が山で食べるものとしてはご馳走だと思うよと答えた。私たちが幼い頃は近くにヤマボウシの木はなかったので、姉はヤマボウシの実を見たことがなかったのである。そしたら姉は「私も食してみたい」と言うのだった。山頂直下のヤマボウシには近づき難いので、登山道沿いにあるヤマボウシの所に行った。たった一つだけ実がついていたので、二人でよいしょとストックを伸ばして取ってみた。本当に食べるのかと思ったら、ちょっとかじって「なるほど甘いわね」と言って、後はぷっと吐きだし、残りをポイッと放り投げてしまった。あまり美味しくはなかったのだろう。放射能値が高いかもしれないし・・・。

 

私たちが小さい頃は、たとえばサガリコと言っていたウグイスカグラの実は、甘酸っぱい味がして、秋のお楽しみだった。その他、スグリコやキイチゴやイチジク、ヨツズミと言っていたのはガマズミの実だ。みんな子供のちょっとしたおやつだった。虫が入っていたり熟していないものもあって、苦かったり、渋かったりするものだから、投げたり吐きだしたりしたものも多かった。それでも、外遊びばかりしていた私たちの世代は、野にある草木の実を口に入れるのにそう抵抗はなかった。

 

考えてみると、猿やイノシシ、鳥などの動物は果実が美味しければ喜んで食べ、その種を遠くまで運ぶわけだから、植物は種の繁栄をかけて美味しい実を育て、食べてもらうのを待っているに相違ないと思う。人間の子供だって昔はそういう運び屋動物の一部だったということだ。

 

さて、鹿狼山にイノシシが増え、ヤマユリの大株がなくなったことを、私はIさんに話した。Iさんは植物に大変詳しく、色々なことを教えてくださる方だ。Iさんは事も無げにこう言った。「あのね、イノシシがヤマユリの球根を食べるのは、ヤマユリの戦略ってことよ。というのは、イノシシの食べ方は本当に雑で、食い散らかすから、球根が飛び散って、そこから新しい芽が出てくるらしいの」ということだった。そうだったのか!と私は目から鱗が落ちた気分だった。ヤマユリはイノシシに食べてもらうのを待っていたのか!だったら、鹿狼山にヤマユリの花が少なくなったとしても、そうがっかりすることはなかったのだ。ヤマユリの球根も他の果実と同じように、種をいかに繁栄させるかの戦略を持っていたのである。

 

ただ、この度の原発による放射能汚染が原因でイノシシは増えているわけだから、自然界のバランスは崩れているかもしれない。イノシシがあまりにも増え、ヤマユリの球根を食べ尽くしてしまえば、消えてなくなるかもしれないと思ったりもする。それに飛び散った球根から芽が出て花開くまで何年かかるだろうか。飛び散ったまま消えてなくなる方が多いだろう。そんなことを思うと、登山道沿いのちっぽけなヤマユリまでがやけに目につくようになった。これは種子から発芽したものなのか、それともイノシシが食い散らかした球根から出てきたものなのか、どっちなのだろうか。そして、何年後に花咲くのだろうか。

 

ヤマユリにしても、他の植物にしても、種を残し次の世代に繋いでいくために様々な戦略を持っていることは確かである。生き物の世界は本当に奥が深い。季節折々に色々なことを教えてくれる鹿狼山である2014/09/17記)

コバギボウシ

シロヤマギク

キンミズヒキ

オトコヨウゾメの実

このヤマユリは花開くのか?


 

苗場山・平標山の山岳保全管理に学ぶ

夏の終わりに仲間と苗場山と平標山を訪れた。苗場山はその景観がまるで「神様が苗を植えた場所」のようであることから名付けられたとされ、その山頂には1 0平方キロメートルにも及ぶ高層湿原が広がる。湿原には数百をこえる池塘があり、そこにはミヤマホタイが群生していた。また、湿原ではヤチスゲ、ショウジョウスゲなどに混じってイワショウブの花と果実が紅白の彩りを添えていた。

踏査した祓川コースは、登山道のほとんどに木道が敷設されており、山肌に直に触れながら歩く感触がそがれるのがさびしい。休憩ポイントの要所には大きな木造のテラスが設置されその規模からこの山の人気度が推し量られる。出会った登山者は圧倒的に若者と家族連れが多い。急登を凌ぎ、たどり着いた湿原にも山頂まで木道が敷設されていたが、山頂に至るまでほとんど湿原の崩壊が見られないことに驚いた。人気度が高いだけに、早くから湿原保護対策が徹底されていたのだろうと想像した。しかし、帰宅後、調べてみたら長野県側からのルートでは湿原の崩壊が問題になり、湿原を迂回するルートに変更した事例もあることが分かった。この事例では自然保護団体と県、地元自治体、環境省、大学の植物専門家との合議の上で対策が決定されている。

当会では2000年より西吾妻山域の登山道保全に取り組んでいるが、湿原に加え、西大巓山頂付近の斜面崩壊という難題を抱えている。今年は、ネーチャーフロント米沢の支援もあり、置賜森林管理署と裏磐梯自然保護官事務所に現地説明を実現することができ、ようやく関係機関による協議の場を設ける環境が整いつつあるところまで来ているが、苗場山の事例を知り、何とか新たな一歩を踏み出したいと思った。

平標山山頂で落ち葉をあしらったしおりをいただいた。しおりには中越森林管理署の記載があった。翌日の苗場山で再び同様のしおりを配布する集団に出会った。調べてみると、中越森林管理署には森林保護員( グリーン・サポート・スタッフ)という山岳保全管理活動を行う集団が組織されていることが分かった。また、平標山の登山口では「ペット連れ登山自粛」を呼びかける張り紙があった。これらの事例は、東北の山岳自然保護でももう一歩踏み出すべきことが有ることを感じさせられた。