西吾妻山域登山道保全に関する事業報告   佐藤 守

  

西吾妻山域の登山道保全ボランテアは2000年に西大巓から樹林帯の区間で行ったのが始まりでした。その後、作業領域は天狗岩まで拡大し、昨年からはNF米沢との共同作業として取り組んでいます。開始当初から「環境庁、地元市町村そしてゴンドラを運行するグランデコ、天元台両スキー場関係者による組織的な体制が必要である」(2000年会報34号)との認識でおりました。10年が経過した今年は、当初の方針を具体化するための活動にも取り組みました。

.登山道誘導ロープ設置ボランテア

6/20(日)に実施しました。参加者は守る会11名、NF米沢5名でした。作業は天狗岩〜西吾妻小屋、西吾妻小屋〜樹林帯、樹林帯〜西大巓の3班に分かれて行いました。NF米沢の方とも、顔見知りとなり、作業内容もすっかり把握されているので、極めてスムーズな作業となりました。なお、10/17(日)にNF米沢と共同で取り下げ作業を行っております。

 

 

 Bブロック水場付近

 Cブロックでの作業

 若女平分岐

 Bブロックの作業をする4名

.西大巓−西吾妻小屋間登山道周辺植生崩壊調査

9/5(日)に5名の参加で実施しました。 調査は、西大巓山頂から西吾妻小屋まで3ブロックに区分し、登山道沿いの植生崩壊状況により分画し、距離と幅を測定しました。植生崩壊状況によりランク区分し、崩壊マップを作成しました。概要は以下の報告書の通りですが、このマップに基づき福島県自然保護課と協議をしております。 
                           西大巓−西吾妻小屋間登山道周辺植生崩壊調査報告書

 

.裏磐梯自然保護官事務所・会津森林管理署、福島県自然保護課との協議

裏磐梯自然保護官事務所(6/108/2211/4)、会津森林管理署(6/10)、福島県自然保護課(10/28)を訪問し、申し入れを行いました。内容は西吾妻登山道問題が中心ですが、山形県で組織されている「吾妻山周辺森林生態系保護地域の保全管理に関する検討会」の福島県側での立ち上げについても話し合いをしてきました。国立公園計画(昭和60.1.31告示)では、西大巓から西吾妻山頂の区間および若女平コースの管理者(事業執行者)が空白のままであることが問題となっております。なお、20104月より「日光・吾妻山地緑の回廊」が設定されましたので「検討会」につきましては福島森林管理署にも説明していきたいと考えております。

 

 

蝶と私   鎌田 和子

 写真@はコミスジという蝶です。滑空するような飛び方で、よく目の前に現れるのですが、なかなか止まってくれません。だから、この日も、どうせ私をからかいにきただけなのでしょうと、コミスジの写真を撮る気は全くありませんでした。ところが、珍しいことに、その蝶が私のポシェットに止まったのです。ポシェットからケータイを取り出したら逃げるに違いないと思いつつ、ケータイを引っ張り出しました。案の定、コミスジはポシェットから離れました。が、すぐに同じところに戻ろうとしています。それなら「この指にと〜まれ!」と、左手を出すと、本当に止まりました。パシャッ、パシャッ、数枚撮っても逃げずに翅を開いたり閉じたり、歩いたりしています。三年前、ウラギンシジミと同じように戯れたことがありますが、コミスジとこんな風に遊ぶなんて思いもしなかったことです。/私が、蝶を追いかけるようになって早くも三年になります。今年は、珍しい蝶との出会いを求めるというより、身近に飛んでいるモンキチョウの産卵に遭遇したのをきっかけに、卵から幼虫へ、幼虫から蛹化(写真A)、羽化(写真B)の観察に挑戦しました。小さな卵から小さな幼虫が孵るのは当たり前なのですが、あまりに小さく、繊細そうな幼虫を飼うのは、神経を使い、疲れてしまいました。幸い羽化に成功し、二頭飛び立っていきました。

夏には、サイクリングロードの土手から連れてきたジャコウアゲハの幼虫を、庭に移植したウマノスズクサの葉上で観察しました。モンキチョウの幼虫と違って、ジャコウアゲハの幼虫はギャングのような感じです。黒くて大きくて丈夫そうで、気が楽でした。すくすく育った、その終齢幼虫は、会員のK子さんからいただいたオオマツヨイグサの茎に蛹化し、羽化しました(写真CDE)。そこから飛び立っていった雌蝶が、その後、産卵に戻ってきたのか、庭のウマノスズクサの葉の裏に卵が見られるようになりました。ウマノスズクサの果実を見たいがために、23株移植したにすぎません。まさか卵が産みつけられるとは思ってもいなかったので、卵を数えて焦ってしまいました。全部孵ったら、ウマノスズクサが足りなくなることは必至です。しかし、産みつけられた卵が、全部孵るのでもなく、また、孵化した幼虫が全部育つわけでもないようです。孵ったはずの幼虫が終齢になる前に、いつのまにか消えてしまうのです。蝶は一般に成虫になる確率が低いと聞いていましたが、なるほど本当なのだと納得できました。それから、「母蝶は、死ぬまで産卵し続けるのね!?」と、気づかされるような場面に出会いました。ジャコウアゲハの羽化から、ちょうど1か月後のこと。雌蝶がウマノスズクサの葉に止まっているのを、偶然見つけました(写真F)。カシャッという音に、雌蝶は逃げましたが、その姿の弱々しいこと。そして、草地に翅を開いたままペタッとしていました。何気なく、ウマノスズクサの葉を返して見ると、卵が一個だけポツンと付いていました…。雌蝶は、ヨレヨレになって、生を終えるまで卵を産み続けるのでしょうか!子孫を残すことにのみ生きてきた雌蝶の最後を、図らずも観察できたことに興奮し、この母蝶の子孫が、せめて一頭だけでも成虫となって飛び立つよう祈らずにはおれませんでした。

あんなに暑く長かった夏が嘘のように去り、キタテハが、カナムグラの上を乱舞する秋が訪れました。なぜか、今年の私の目は、カナムグラの葉を傘状にして潜むキタテハの《巣》を捉えたのです。昨年まで見えなかったものが、ラクラク見えることに驚きました。友人は、その愉しさを、「蝶の巣ウォッチングね!」と言ってくれました。大きい傘には若い小さな幼虫が隠れ住み、自分の隠れ家の葉を食べてしまって、小さくなった傘の陰には、まるまると太った終齢幼虫がCの字になっている、その姿には笑ってしまいました。そうして、「蝶の巣ウォッチング」は、ヨモギを食草とするヒメアカタテハの《巣》発見へと広がりました。勿論、それぞれの卵も蛹も、観察できました。

青空を、穂先で突くように真っすぐ伸びたセイタカアワダチソウの花が咲き出しました。その黄金色の花は蝶や蜂たちにたっぷり蜜をふるまうのでしょう。キタテハとキチョウが、蜜を吸っています。今、ふと、来年は、手に止まったあのコミスジの子孫探しをしてみようか、クズの葉に特徴的な食痕があるらしいから…。そんな思いが頭をよぎり、なんだか幸せな気分に包まれたのでした。(2010.10.14)

 @    コミスジ

 Aどれが前蛹かな?

B下には抜け殻がついています

 Cオオマツヨイグサに移動して前蛹スタイルに

 

 

  D黄色の蛹に変身しました

 E二週間後に羽化! ホッとしました

  F1か月後。同じ個体かどうか??

 

 

 

鹿狼山から  
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 鹿狼山のモミとカヤ     小幡 仁子

  昨年から、11月と12月は「阿武隈強化月間」と自分で勝手に名付けて、阿武隈の山々に友人を呼んで陽だまりハイクをしている。あちこちの名のある山々の紅葉が終わり、雪の便りが聞かれる11月過ぎに、阿武隈山地の紅葉は見頃となる。そして、「阿武隈の山には芋煮がよく似合うから」と、これも自分で勝手に決めて、お昼には芋煮汁を作ってお腹いっぱい食べることにしている。フーフー言いながら食べる芋煮汁の美味しいこと!ああ、幸せって感じ。
それで、今年は手始めに、大熊町の日隠山(601.5m)を登ることにした。高山の自然を守る会の山好きの方々に声をかけ、1113日に6名で坂下ダム登山口から入った。駐車場も広く、水洗トイレもあり鹿狼山と同じくらい整備されていた。案内板などもずいぶんお金をかけているようで、カラー絵入りであった。この登山道は旧会津街道で「塩の径、鉄の径」として明治時代まで使われていたという。そんなせいか、里山にしては自然度が高く、ヤシャブシやモミやブナの大木が見事だった。特にモミは樹高20m〜30mあろうかと思われるものが林立しており、阿武隈山地にこのようなところが残っていたのだと感心した。と同時に、実家の父が鹿狼山にも昔はモミの大木が沢山あったと話していたことを思い出した。50年くらい前には鹿狼山にもこんな風景があったのかもしれない。そのモミの大木を切り出して売り払い、そのお金で最近まで杉の共有林の税金を払っていたという。今ではその共有林は手入れもされず、放置されたままである。
さて、薄暗い林床にはカヤもあって、「モミとカヤ」は似ているがどこがどのように違うのかという観察会モードになった。モミの葉先は二つに分かれているが、カヤは葉先が分かれずに鋭く尖っていて、触ると痛いんですよ、とS氏は説明をしていた。ところが、モミと思われるのに、葉先が二つに分かれずに丸い物もあったので、「モミなのか?カヤなのか?」としばらく談義は続いた。モミは大きいものは木肌の特徴からすぐに分かるが、林床にあるモミやカヤの幼木は、同じものに見えた。しかし、よくよく観察してみると、カヤの葉は比較的同じ長さで並んでいるのに対して、モミの葉は長さが不揃いであるし、樹皮の質や色も違っていることが分かったので、目が慣れてくると同定は簡単であった。その後はゲームをするように、モミとカヤの同定をしていったが、モミの木が林立する割にはその幼木は少ないように思えた。帰宅後、S氏からのメールで、モミも老木になると先の丸まった葉を付けることがわかった。(人間が歳をとると、性格が丸くなるのと同じです。という注釈付きだった)                                       
日隠山のことから、鹿狼山でカヤだと思って見てきた物の中にモミがあったのではないかと気になり、登山道から見える範囲を確かめながら登ったが、みんなカヤかイヌガヤであった。頂上近くに1本の大きなモミがあり、冬は小鳥たちの休み場にもなっている。今は藪が薄くなっているので、落ち葉を踏み分けながら近づいてみた。モミの木の下の幼木は当然モミだと思ったらイヌガヤの木であった。周辺を探すと、本当に小さなモミの幼木が1本、落ち葉にうずくまるようにしてあった。この幼木はこれから先、成長できるのだろうか。鹿狼山にモミの木の林ができるのはずっと先のことと思われた。(2010/12/17)

日隠山にて

左はカヤの葉 右がモミの葉

日隠山のモミ原生林

鹿狼山にも昔はこのような風景が・・・

日隠山のモミ原生林

鹿狼山にも昔はこのような風景が・・・