鹿狼山から  
5 鹿狼山のスミレたち     小幡 仁子

 鹿狼山には私が知っているだけで12種類のスミレがある。アオイスミレ、マキノスミレマルバスミレ、ヒナスミレ、エイザンスミレ、アカネスミレ、タチツボスミレ、オオタチツボスミレ、アケボノスミレ、サクラスミレ、ニオイタチツボスミレ、ツボスミレである。この他にも、葉脈がやけに赤いので、これはアカフタチツボスミレかも?と思うものもあり、見る人が見れば12種類を超えるだろう。      

 3月下旬になれば、アオイスミレが一番に咲く。今年2月、瀬川さんの「カタクリ通信102号」にアオイスミレのスケッチがあった。08.4.8の日付があったから、鹿狼山は西和賀と比べると半月ほど春が早いということか。西和賀は雪深く寒い所である。こことは一月くらいは違うかと思っていた。いつか、西和賀のカタクリは吾妻のよりも色が濃くて大きくて美しい、と聞いたことがある。鹿狼山のカタクリもなかなかのものなので、西和賀にそれを確かめに行きたいとは思いつつ、まだ実現していない。アオイスミレも何か違いがあるだろうか。

 それにしても、つい2年ほど前は、私はスミレに関しては、白いスミレ、ピンクのスミレ、紫色のスミレくらいの分類で、色こそ違えすべてがただの「スミレ」であった。今のようにスミレの一つ一つの名前が分かり、花も葉の形も個性的に見えるようになったのは昨年からである。これは高山の会と、会員のKさんに依るところが大きい。

 それで、昨年は鹿狼山のスミレ確認に勤しんだのだが、最初から全部分かったのではない。鹿狼山に登って目に焼き付けたり、写真に撮って、山渓ハンディ図鑑6「日本のスミレ」と照らし合わせて一つ一つ決めていった。

 忘れもしない2年前の429日。いつものように鹿狼山を歩いていて、アカネスミレが登山道沿いにいっぱいあるなあ。と思って通り過ぎようとしたら、「あれっ!アカネスミレにしては葉っぱがつるつるしているし、花が大きいなあ、アカネスミレとは違うみたい」と気がついた。そして写真を撮って図鑑と合わせたら、サクラスミレだったのである。早速Kさんにも連絡して見に来ていただいた。

 サクラスミレは「スミレの女王」と言われ、花の大きさは日本最「」大。スミレに興味があるなら最初に憧れる花。と書いてあった。ちなみに鹿狼山には「スミレのプリンセス」と言われるヒナスミレもある。アオイスミレは初春の初々しさがあり、アケボノスミレはうっとりするすてきな紅紫だし、エイザンスミレは全体的な姿がよいと思っている。日本のあちこちに咲いているスミレ達を見てみたいものである。

鹿狼山のサクラスミレ 鹿狼山のアケボノスミレ 鹿狼山のアオイスミレ 鹿狼山のエイザンスミレ

 

風景印の旅(2)    鎌田和子

「その日」はよくよく当てのはずれる日となりました。しかし、そこには偶然の出会いが潜んでいたのでした。

私はその夜、植物図鑑でしか見たことのない「アラカシ」の殻斗をとっくりと眺め、満足感に浸っていました。その殻斗の薄いとび色の縞模様は、見慣れているシラカシの殻斗とは明らかに違う色合いをしています。が、じっと見つめていると、あれっ、シラカシかな?と思えてくるから不思議です。慌ててホントのシラカシの殻斗を手にとって見比べ、「ああ、やっぱりシラカシとは色が違う!」とほっとするのでした。美しいとび色はアカガシの殻斗によく似ているけれど、アカガシほどにはビロードのような厚みがなく、さらっとした感じがします。形にしても、アカガシはお椀のようなふくらみをもっていますが、アラカシはロートのようです。ここまで観察して、ハッと気がついたのです。図鑑のアラカシの殻斗を見ると、ロート型ではなく、皿型に近いのです。個体差はあるにしても、アレッ??? 

実は、磐城太田の郵便局の「風景印」に、県天然記念物のスダジイ樹林が図柄に入っていることを知り、その日、スダジイ樹林があるという「初発神社」を目指して出かけたのでした。所在地は原町市高というところで、そこは「磐城太田駅」の西だと聞いただけ。地図で確かめたりもせずに出かけてしまったので、なかなか初発神社は見つかりません。立派な鳥居を見つけ、喜んで文字を読むと「多珂神社」となってます。「初発神社」ではないけれど、取りあえずその神社に入ってみました。たいていの神社には照葉樹の大木があるはずだし、お腹もすいたので、ここでお昼にすることにしました。思った通り、参道の入り口と社務所の後ろに照葉樹の大木がありました。シラカシかな? こんなときは殻斗が決めてになります。落ち葉に目を凝らすと、ありました、ありました。灰色ではなく、褐色の殻斗です。「わあ、アラカシ!?」 嬉々として殻斗を拾いました。アカガシの殻斗に似てるけど、これはアラカシかもしれない。そうだ、葉に鋸歯があるかないかを観れば分かるのだ。どれどれ、う〜ん、上のほうに鋸歯があるからアラカシに違いない!そう思ってしまったのです。アカガシの葉は全縁であることを、先日、兄嫁から送ってもらったアカガシの葉を観たばかり。だから自信がありました。そして、偶然とはいえ、アラカシを見つけたことに、ホクホクしながら帰途につきました。スダジイ樹林を見に行ったはずなのに、それがアラカシの大木に変わってしまってもかまいやしないのです。

ところが、どうもそれがアラカシではないようなのです。ならば、いったいこの殻斗は何?確認しなければならなくなったときのためにと、一枝頂いてきてよかったと思いました。その枝についている葉を観てみると、鋸歯が上半分よりは少し下のほうまでついていました。つまり上から2/3 くらいまで鋭い鋸歯があるのです。はて、アラカシの鋸歯は葉のどこまでついているのかしら? 調べなくちゃと思ったそのとき、ようやく「落ち葉図鑑」で確認すればいいことに気づきました。「落ち葉図鑑」にはきちんと鋸歯が記載されてました。アラカシは下2/3は全縁(→)となっています。私が手にしている葉は、上2/3に鋸歯があるのです。う〜ん、それに該当するものなどあるのかしら?とページを一枚めくりました。すると、ぴったりなのがあったのです。しかも、「落ち葉図鑑」では、アラカシの葉は幅が広いですが、私の手にしている葉は細めです。なんと、それはウラジロガシのイラストとそっくりではありませんか。要するに、私が「アラカシの殻斗」と思っていたのは、本当は「ウラジロガシの殻斗」だったようです。 

自分が、早とちりで、思い込みに走っていたことが可笑しくてたまりませんでした。スダジイ樹林を見ようとしてあてがはずれ、代わりにアラカシを見つけたと喜んでいたら、それもハズレだったなんて! またもや、一枚の「風景印」が予期せぬ「ウラジロガシとの出会い」を作ってくれました。それはそのまま「照葉樹林の旅」につながることに、妙に感動する私でした(2008.3.23)


アラカシ


ウラジロカシ


21世紀の超巨大環境破壊  21世紀の巨大開発を考える会 会長 織田重己

愛知県豊田市(旧下山村)と岡崎市(旧額田町)の山の中でとんでもないことが行われようとしています。トヨタ自動車(株)がテストコース、研究棟、実験棟、厚生施設等の建設を計画しているのです。テストコースは2キロの直線コース、6キロの周回路、4キロの周回路など、いくつか造る予定です。現在は環境影響調査(アセス)を実施中です。工事や買収は愛知県企業庁が行い、造成後トヨタが購入することになっています。

問題はその面積と場所です。総面積は660haで、山を切り崩して谷を埋める造成面積は410haです。2010年に着工して2020年の完成を目指していますが、過去にも短期間にこれほど大規模な開発が行われたことは無かったと思います。東京ディズニーランドとディズニーシーを合わせても100haしかないことから、そのとんでもない大きさがわかるかと思います。予定地の環境は約8割が森林で、2割が農耕地です。その森林のうち約7割が里山で、3割が植林地です。完成すると研究者だけで5000人、その他職員を合わせると6000人ほどが働く計画です。現在下山地区の人口が5500人なので、これだけの人が働くことになるとインフラの整備でもかなりの環境破壊が予想されます。経済の発展のためとはいえ、この時代にこれほどの環境破壊を計画することはとても不思議なことだと思います。

 予定地には国の絶滅危惧種で生態系の頂点に立つ猛禽類のサシバ(絶滅危惧U類)やオオタカ(順絶滅危惧)、ハチクマ(順絶滅危惧)などが多数生息しています。これらの種はテストコースができればこのエリアでは絶滅することになります。企業庁はこれら貴重種がいても計画の変更はしない見解を示しました。これも時代遅れの発言といわざるをえません。日本ではアセスにより計画が中止や変更になることは何故かありません。また、今回相手が世界一の企業なだけに反対運動など声をあげる人はいません。地元になればなるほど声をあげづらくなります。そこでこの現実を世の中に広めるためにホームページを作りました。是非ご覧ください。

21世紀の巨大開発    http://bio-diversity.info

 

100回参加者(前日泊)募集案内

高山観察会が10月19日開催されます、第100回記念として土湯峠の赤湯温泉で前夜祭を行う予定です、予約の都合で前夜祭参加希望される方は 8月30日まで申し込みをお願いいたします。尚、当日のみ参加の方は観察会の2日前まで申し込み可能です。