鹿狼山から  
3 気になるあれこれ     小幡 仁子

鹿狼山(かろうさん)は私が住む新地町にある。町民の鹿狼山に対する思いは深く、町のシンボル的存在である。私は昨年は30数回、今年も30回近く登って、四季折々に咲く花や樹木の緑を楽しんでいるところである。因みに毎日登っている人もいるし、100回くらいという人もザラである。そのくらい身近な山である。

ところで、昨年の11月ごろから町が「鹿狼山を自然公園として整備する」ということで工事が始まった。私としては、これ以上の整備は必要ないし、花が少なくなったり樹木を傷めたりするのではないかと心配だった。人工的な公園ではなくて、自生する植物を大事に保っていく方向で進めてほしいと思った。

それでなくも、ずっと前から前知事の登頂記念碑が山頂にド〜ンと建っている。それも黒々とした御影石の立派なヤツである。何百万円もかけてせっかくの景観を駄目にしており、見る度に忌々しいと思うから、町のHPにあれを撤去した方がよいと書き込んだ。でも、あれを撤去するにもお金はずいぶんかかるから、それも税金の無駄使いになるんじゃないかという人もいた。

 結局あの記念碑はこのままほおって置かれるのかもしれない。一度建てたものは壊すこともままならないのだ。これが気になることの一つ。

 次に気になることは、自然公園に話を戻すと杭とロープが増えたことである。まず、山頂から北へ向かってのくだり道にずっと杭が打たれ、ロープが張られた。ここはもともと急な登山道ではあった。自然公園としては、安全確保を考えたのだろうか。昨年11月に基礎工事が終わり、そのときにコンクリートのブロックがずっと連なって並んでいるのに驚いた。あのコンクリートの下にある樹木の根はどうなっているんだろうか。やがて、枯れてしまうのではないか。そして、登山道の幅もずいぶん拡張された。こんなことをせずとも、今までみたいに、木を伝いながら少しずつ降りたり登ったりしてもよいのではないか。それに、山頂から北のほうへ向かう登山者は本当に少ないから、この杭とロープの利用価値はどうなんだろうと思う。

 この他にも、登山道の途中に杭と鎖が張られた。砂利が敷かれ、登山道はかなり広い。二人で並んで歩いても十分なくらいはある。おまけにこの杭が打たれているところは一段高くなっている。尾根が細くて滑落の危険性があるというなら分かるが、ここを誤って落ちていく人がいるだろうか?ここに、杭を打ち鎖を張ることを決めた人に、なぜここにしたのか聞きたいものだ。ここは右側はヒノキの林で薄暗いが、杭が打ち込まれたほうは、クマシデが林立しており、その根元には春はカタクリが美しく咲く。当然花も減るだろうし、景観だって良くないと思う。

 それから、登山道の入り口には車止めの杭も立てられた。下の鹿狼旅館脇に立派な駐車場があり、ここまで入るのは、工事用の車両だけだと思われるが、こんな物が本当に必要なのか?

また、新しく拓かれた登山道には下のようなテラスができていた。「展望台」という名目であるが。これも本当に必要なのか?鹿狼山はただの公園になってしまうのだろうか。とても気になる。

山頂から北へ向かう登山道の杭とロープ

間もなく山頂だという時に見えてくる記念碑。無いほうが望ましい。

昨年11月の基礎工事

基礎工事の上に杭が立ちロープが張られた

クマシデの木のそばには杭と鎖が・・

テラスや車止めなどが新しくつくられた

 

「第28回東北自然保護の集い岩手県大会」参加報告    高橋 淳一

 第28回東北自然保護の集い・岩手県大会が1110日・11日の2日間にわたり、レトロな趣が残る岩手県花巻市「大沢温泉泉自炊部」で開催されました。参加者は100名近く、福島県からは高橋が唯一の参加でありましたが、東北の仲間との再会、そして深夜まで及ぶ活発な議論と有意義な時間を過ごすことができました。特に「東北の自然保護の集い」では初となる核問題を取り上げたことは、汚染問題がいかに深刻であるかと同時にエネルギー需要と温暖化対策が相まって、今後ますます複雑化していくことの前兆であり、私達の生活スタイル、価値観を改める時期に来ていることを痛感しました。以下に2日間の要点を報告します。

 初日、行政関係者の挨拶後地元岩手県の「三陸の海を放射能から守る岩手の会」事務局長永田文夫氏並び「京都大学名誉教授」河野昭一氏の記念講演に続き各県からの現状報告が行われた。記念講演では永田氏より青森県6ヶ所村に建設された核燃料再処理工場の操業(現在試験操業中)によって海洋や大気中へ排出される放射性物質には「原発並の排出基準」を求めているにも関わらず、法的制約が無いことから、対策を講じようとしない行政や「日本原燃」の姿勢について話された。さらに、それら放射性物質が増大、拡散することによって懸念される健康不安に対しても、一次産業への影響を懸念し(風評被害)、かつて「再処理工場誘致」に反対した地域住民までが口を閉ざしている現状が報告された。河野氏からは天然林(国有林)の現状についての報告において、政策転換をしたはずの林野庁が、国有林に僅かに残る天然林の伐採を今でも継続していることへの懸念と警鐘を訴えた。また、続いて行なわれた各県からの報告後、河野氏が中心となって進めている「国有林内の天然林を環境省へ移管し保全する改革に関する請願書」について、参加団体からの賛否両論様々な意見提起があり、最近では稀な活発な議論が行なわれました。(意見集約:請願署名は各団体独自の判断で行なう。)

 2日目は「野生生物との共生を考える」「環境教育と登山マナー」「公共事業を考える」の3分科会の後、全体集会に移り、分科会の総括報告が行なわれた他、30回大会に向けての意見提起、そして最後に以下7項目の大会アピールを採択し閉会となりました。とりわけ二年後の30回大会については福島県が開催県であり、「今後の活動の方向性」を示すような大会にしてほしいなどと、期待を大きいことから、早期に準備体制を整備し取組んで行きたいと思いました。

【大会アピール】

@六ケ所村からの放射能排出に関しては明確に反対する。A林野庁が管理する天然林の内、原生的な天然林については、伐採を中止すること。B緑資源機構が進める大規模林道について、現在進行中のものに関しては凍結し、完成したものについても「時のアセス」の対象とする。Cダム建設については、着工しているもの計画中のものを含めて見直しを求める。D生物多様性の観点から、林野庁の指定している「緑の回廊」を北海道、関東地方の設定を求める。E子供たちの生物や環境に対する関心を高めるためのアクションを連動し、活発化させていく。F野生動植物に関する情報を共有しきめこまやかな配慮が出来るよう、緩やかな組織作りを模索する。

「高山の原生林を守る会創立20周年記念自然展」開催報告

自然展は1114日〜1119日までの期間、市民ギャラリーで開催されました。展示内容は高山の原生林を守る会20年の歩み、高山の植生区分、高山の植物、観察会、登山道破壊の記録写真、草木染め、木の実細工、山でスケッチした水彩画、巨木の版画、押し花のアンサンブルとバラエティーに富んだものになりました。

開催期間中の来場者は、会員の方々を含め200名余りでした。手作りの作品群はどれも好評で、熱心に見入る来場者が目立ちました。ささやかですが、参観された方々は、自然の多様性の一端に触れることができたかなと思います。

作品の作成、展示、会場設営、受付など、ご協力いただいた会員の皆様、ご苦労様でした。

高山の原生林を守る会 2007年定期総会報告
                              日時:20071125日(日)13301530 場所:サンスカイ土湯

(1)2007年活動報告

2月 4日(日) 第88回自然観察会(仁田沼)(17名)

   2月18日(日) 国有林保護監視員委嘱式(福島森林管理署)(6名)

   4月22日(日) 第89回自然観察会(高山)(18名)

   6月 2日(土) 第90回自然観察会(龍ケ岳)・鳩峰峠植林ボランティア(18名)

   6月 3日(日) 東大巓湿原植生回復ボランティア作業(6名)

   7月 1日(日) 第91回自然観察会(西大巓)誘導ロープ補修ボランティア(14名)

   8月25日(土) 東大巓・弥兵衛平湿原植生ロープ補修ボランティア作業(2名)

   8月26(日) 第92回自然観察会(幕川温泉周辺)(17名)

  10月 7日(日) 西吾妻小屋周辺誘導ロープ補修ボランティア(2名)

  10月21日(日) 第93回自然観察会(高山的場川)(16名)

  11月10日(土)〜11日(日) 第28回東北自然保護の集い(岩手県花巻市大沢温泉)(1名)

  11月14日(水)〜19日(月) 20周年記念自然展(市民ギャラリー)(来場者200名)

  11月25日(日) 第94回自然観察会(高山山麓)

2007年高山の原生林を守る会会計報告書(1118日現在)

収入の部

 

支出の部

 

 

 

 

科目

予算額(A

決算額(B

増減B-A

科目

予算額(A

決算額(B

増減B-A

前期繰越金

164,438

164,438

0

会議費

10,000

0

-10,000

会費

35,000

45,000

10,000

郵送費

30,000

34,300

4,300

観察会参加費

34,500

35,400

900

 

観察会経費

10,000

9,725

-275

書籍販売

0

0

0

 

交通費

15,000

3,140

-11,860

カンパ

0

19,032

19,032

 

苗木購入費

45,000

40,840

-4,160

謝金等

0

110,000

110,000

 

保険代

35,000

31,830

-3,170

その他

0

5,746

5,746

 

渉外費

20,000

20,000

0

小計

69,500

215,178

 

 

雑費

20,000

149,925

129,925

合計

233,938

379,616

145,678

 

予備費

83,184

6,000

-77,184

 

 

 

 

 

 

 

合計

268,184

295,760

27,576

平成19年度決算額

83,856円(次年度繰越金)

 

 

 

 

 

 

 

2008年観察会日程

 

 

 

 

 

回 数

実 施 日

場  

テ   ー   マ

95

2月 3日(日)

不動湯温泉周辺

冬の動物と冬芽

96

4月27日(日)

高湯蟹ケ沢

春の草花(イワウチワ)

97

6月 8日(日)

龍ケ岳

鳩峰植林地除草ボランティアと水源の森観察

98

7月 6日(日)

西吾妻山

ロープ補修ボランテイアとヒナザクラ観察会

99

8月24日(日)

吾妻谷地平

湿原観察と清掃登山

100

1019日(日)

高山

紅葉と登山道整備状況の観察

101

1130日(日)

霊山

中世の歴史探訪と岩峰の自然・総会

注:予備コース 第95回 思いの滝散策 第96回 微温湯雪ウサギ観察

1018日は100回記念前夜祭(赤湯温泉)とし、19日のみ参加もOK

2008年カタクリの会奥羽自然観察会計画

月 日

回数

自然観察会のテーマ

1月20日(日)

205

雪と遊ぼう

西和賀町廻戸

2月17日(日)

206

雪の自然観察

西和賀町沢内

3月16日(日)

207

春を探そう                    

西和賀町沢内大荒沢

4月27日(日)

208

カタクリの里歩き

西和賀町無地内・廻戸

5月11日(日)

209

夏椿と夏の渡り鳥

西和賀町白木峠

6月8日 (日)

210

新縁のブナの森

西和賀町真昼ブナ指標林

7月6日 (日)

211

ブナの森の滝巡り

西和賀町下前風景林

8月24 ()

212

和賀川遊び

西和賀町沢内和賀川源流

9月28日(日)

213

秋のブナの森

西和賀町笹峠

1019()

214

落葉とキノコ

西和賀町未来の森

11月2日 ()

215

冬の渡り鳥

西和賀町錦秋湖

12月7日(日)

216

初冬の森

西和賀町湯川

    カタクリの会は西和賀町で、自然観察会開催を目的とした会です。
    会則、会費はなく誰でも自由に参加できますが、各観察会の一ケ月前から電話でのみ受付です。

* カタクリ通信を偶数月に発行いたしており、希望者には年間千円で送付致します。  

(郵便振込みをご利用ください…02350-5-38765 加人者名…カタクリの会)       

連絡先:郵便番号029-5512和賀郡西和賀町川尻41-72-15  電話&FAX0197(82)3601 代表:瀬川強

 

編 集 後 記

■高山の原生林を守る会の設立総会は1987525日に福島市中央公民館で開催された。以来、今年で21回目の冬を迎えようとしている。私は、それまでの登山経験で培った感性のみで参加したのだが、それから20年間、せっせと森に通い、四季折々の自然と接することで山の知識を深め、感性は知識に裏付けられた確信に変わった。■当時、樹を切ることばかり考えていた行政も、表向き自然保護を標榜するようになった。しかし、季節は記録的な温暖化現象を呈しているのは自然の皮肉か。■尾瀬が日光から独立して国立公園になった。行政機関は自然保護を考慮した観光を重点的に推進していくと言う。この二十年間、変わらなかったことがある。それは、「尾瀬は自然保護のシンボルであり、尾瀬の自然を大切にすべき」とのドグマが、身近の自然を破壊することの精神的な免罪符になっていると言う事実である。樹を生物として扱う視点は依然として未成熟である。■ノーベル平和賞を受けたゴアは環境経済学をアメリカで初めて提唱した人物である。そのゴアを1万票差で破って大統領となったブッシュが最大の自然破壊を推進しているのは歴史の皮肉である(MS記)。