【記念碑】 2002年から実施してきた鳩峰牧場跡地の植林は、森林管理署において林地復元が承認され、JA山形おきたま様の土地償還が2005年に完了したことから、山形側の協力団体として、植林作業に取組んでこられた「まほろば登山愛好会」の手によって「記念碑」が建立されることとなり、当会の名も記していただけることとなった。除幕式に出席の折、目にした記念碑は「共生の碑」と名付けられ、森の復活、そして動物と人間との共生の願いが込められていた。「戦前は夏になると牛を引き連れ、峠まで登り、草を食ませた場所であったことから放牧地として開発したが、役目を終えれば元に戻さなければ」そう言った関係者のやさしい眼差しが印象的であった。 |
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【森林生態系保護地域設定委員会】 今年1月、関東森林管理局の担当者から電話が入った。「会津地域の森林計画策定に伴い、森林生態系保護地域設定等の設定委員を依頼したい」以前より、会津地域の森林計画に対しては、意見提起をしてきただけに、2つ返事でOKし、設定委員会に望むこととなった。2月24日の第1回から最終8月10日の計4回(内1回は現地視察)の委員会、現地視察を経て、会津地域約20万ヘクタールの半分以上が「森林生態系保護地域」、残りが「緑の回廊」に設定されるなど森林保護の観点からは画期的な結果となった。この中には、吾妻連峰や飯豊連峰の拡張も含まれており、現地調査を踏まえた具体的提案によって当初予定面積をさらに530ヘクタール余を追加拡張できたことは大きな成果であった。特に、観察会で何度訪れた中吾妻中腹、二十日平のブナ林およそ115ヘクタールについては、10年来の念願であった。また、12月6日まで実施された、これら森林計画の公告縦覧においては、さらに踏み込んだ保全計画が表明され、禁伐的な扱いの森林は全体の50%、「奥会津」「飯豊」「吾妻」の3森林生態系保護地域の92,910ヘクタールを含め、102,500ヘクタールがその対象となることがほぼ確定した。 【熊たちの災難】 木ノ実の不作、里山の手入れ不足、個体数の増加、習性の変化等々、頻発した熊の出没に対して、様々な意見が飛交った。捕獲数は全国で5千頭を超え、死者3名を含む150件近い人的被害が発生したと報道された。勿論、捕獲された個体のほとんどは、処分ということで殺されている。正確な生息数は不明だが、ヒグマ、2千頭前後 ツキノワグマ、1万頭前後と推定されている。 これらの数字から、福島県を始め他県の一部には、狩猟期間中の自粛を要請する動きもあるが、出没しただけで捕獲、処分というのは哀れな話である。地域によっては行政や民間団体によって生息調査や捕獲後の奥山放獣等が実施されているが、ごく僅かである。 推定生息数の40%以上の捕獲は絶滅を招くとの専門家の指摘もあるが、「熊は怖い」と言うのが多くの日本人の熊の印象であり。このことが結果とし捕獲、処分という方向に向かわせているのである。しかし、捕獲された個体中、人的被害に及んだのは僅か3%程度であり、多くの熊たちは無実か、軽度の過失ということではないだろうか。人間であれば、よほどの凶悪事件でない限り、死刑となることはないが、言葉を持たない熊たちには弁明も更生の機会を一切与えられないのである。人間社会においては、「声無き声に耳を傾けよ」と言われるが、熊たちの行動が「声無き声」だとすれば、それは、温暖化等に代表される、大きな環境変動の前兆とも言える警告ではないだろうか。 |
東北自然保護の集い・青森集会参加報告 高橋 淳一 |
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「第27回東北自然保護の集い・岩木山大会」が9月16日・17日の2日間にわたり、津軽富士と称される岩木山の山麓、百沢温泉「あすなろ荘」で開催された。 集会は1日目に幹事団体である地元「岩木山を考える会」会長の阿部東氏による記念講演「岩木山の自然から・種の多様性と保全」に続き、地元青森県の6名から下記の7テーマの発表、報告が行われた。今回の会議では、これまでとは若干、趣向変え、助言者のコメントを戴く手法が採られ、秋田「白神山地のブナ原生林を守る会」奥村清明氏、青森「下北野生生物センター(民間)」森治氏がその任を勤めた。この中で、特に印象に残ったのは、阿部氏の記念講演で、内容は岩木山にまつわる話題から国内外の自然保護、そして、本題の遺伝子の多様性と多岐わたる内容であった。また、ユーモア溢れる語る口で聴衆を惹き付ける巧みな話術も内容以上に魅力的に感じられた。 2日目、前日に引き続き、県内外各地からの報告(下記)が行われ、最後に全体討議、大会アピールで締めくくられた。筆者も福島県の唯一の参加者として、会津地域の森林生態系保護地域設定に関する報告の他、博士山ブナ林を守る会が原告として戦った林道訴訟他、県内の話題について報告を行ったが、トップバッターとして報告した岩手県の望月氏からの青森下北半島や北海道松前半島におけるブナ林の大量伐採問題については、会場内からの緊急アピール提起などの具体的行動の動きが無かったことが残念であった。また、この件については筆者自身にも責任があることから、後日、青森県の関係者へ事実確認と具体的な行動の要請を実施した。 最後に、来年28回大会は岩手県での開催となる、「カタクリの会」瀬川氏、「和賀川水系の自然を考える会」永田氏、「花巻のブナ原生林に守られる市民の会」望月氏が中心となり、運営に当たられる。盛会となるよう協力していきたい。 「各地からの報告」 1. 2.白神山地に関す問題(赤石川の発電ダムによる水量問題他):赤石川を考える会(中濱
和夫氏) 3.ブナの植林事業(ブナ苗木の育苗手法の確立と環境長官賞受賞):白神山地を守る会(今 正博氏) 4.自然再生活動・森林環境教育について:東北森林管理局白神森林環境保全ふれあいセンター(原田
正春氏) 5.南八甲田山の無断伐採問題(繰返される登山道の無断伐採):岩木山を考える会(三浦
章男氏) 6.ラムサール条約と仏沼の現状と課題(オオセッカ生息環境の保全策):弘前野鳥の会(小堀
英憲氏) 7.岩木山弥生スキー場予定地跡地問題(中止されたスキー場予定地の森林復元):岩木山を考える会(三浦
章男氏) 8.下北半島、松前半島におけるブナ伐採(薬研温泉・恐山の伐採状況):花巻のブナ原生林に守られる市民の会」(望月
達也氏) 9.津軽半島におけるニホンザリガニの分布と生態(分布調査報告):五所川原農林高校(奈良岡
隆樹氏他学生) 10. 11.朝日連峰における諸問題(環境省非難小屋計画を林野庁が中止):出羽三山の自然を守る会(長南 厚氏) 12.日本勤労者山岳連盟の自然保護憲章策定報告:日本勤労者山岳連盟(三浦
章男氏) 13.山岳ガイド業務の問題点(事故発生時の責任・補償問題):みちのく花見遊山の会(高橋
仁志氏) |
岩木山 |
講演する阿部東氏 |
2006年11月26日(日) 午後13:30〜15:30 ユラックス熱海 |
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(1)2006年度活動報告
(2)2006年度会計報告
平成18年度決算額 164,438円(次年度繰越金) (3)会創立20周年記念事業 2007年は会創立20周年の節目の年であり、記念事業を実施する。 ※1 20周年記念会報:発行時期6月号として16〜20ページ予定(会員に特別寄稿を依頼する) ※2 20周年記念写真展:開催時期11月、予算10万円(テーマは、後日検討する) (4)2007年度新役員 |
植物和名考(V) 河上鐐治 |
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12 カバザクラ(ウワミズザクラ、ヤマザクラ) ばら科 サクラ属 樺桜 語源: 樹皮を樺細工や曲げ物を縫い合わせるのに用いた。 万葉集「桜皮(かには)まき作れる船」(山部赤人)が見られる。 アイヌでは樺と桜を同類とする。「カリンパ」は樺や桜の樹皮の事。 伊勢神宮を始めとする神社、檜御殿と呼ばれる和式豪邸、贅沢な檜風呂など、日本の高級建材である檜とその仲間について。 13 ヒノキ ひのき科 ヒノキ属 檜 牧野: 「火の木」の意 大昔木をこすって火を起こした。福島県以南 14 アスナロ(ヒバ、アテ、羅漢柏、シロビ、アスヒ、) ひのき科 アスナロ属 翌檜 広辞苑: 明日は檜になろう 牧野 : 明日は檜になろう、は俗説。アス→はっきりしない意(アテ)ヒ→ヒノキ 語源 : 葉が檜に対して厚いところから、厚檜(あつひ)が訛ってアスヒになった。 厚葉ヒノキ *「あすなろ物語」 井上 靖著 冬山の景観は針葉樹林にある。枝葉に積もった雪、樹氷、吹雪の中でも風を遮る樹林帯。 15 モミ(さなぎ) まつ科 モミ属 樅 *「樅の木は残った」で知られている。 牧野: 語源明かでないが、芽富に由来の説もあり。 語源: 朝鮮のトウシラベを朝鮮語でmunbi(紋榧、紋檜)と云い,日本の似た木を渡来人 がそのように呼びそれが転じたか。 16 シラビソ(シラベ、リュウセン) まつ科 モミ属 白檜曾 分布は吾妻山系以南 牧野:白ヒノキの意で、葉の裏が白く重なり合うから。「そ」は不明 福島県から和歌山県 語源:牧野の説は誤り。シラビソとヒノキは似ていない。「ひ」と「そ」を分けるのではな くて、「ひそ」として考える。「ひそ」は「檜楚」が本字か。楚(スハエ)は真っ直ぐ に伸びた小枝。「檜楚」は三寸方の角材で、これを屋根材に用いた。ヒノキの代用に シラビソを使用し、樹肌が白いところからシラビソと称したのではないか。「ヒスハ エ」が詰まって「ヒソ」になったか。 リュウセン(龍髯) 枝葉の姿を龍の髯にたとえる。 広辞苑: ヒソ(檜楚、檜曾) 二、三寸角の角材 17 オオシラビソ (アオモリトドマツ) まつ科 モミ属 大白檜曾 牧野: シラビソに似て球果が大きいから。 語源: アオモリトドマツを主にしてオオシラビソを別名にしている。 18 ツガ(トガ、ツガマツ) まつ科 ツガ属 栂 牧野: 語源不明。福島県から九州 19 コメツガ まつ科 ツガ属 米栂 牧野: 葉が小型である。 |
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樹木の和名を調べてみて、その語源の雑多さ、当て字、命名の適当さが分かった。 いつか新聞でいわきの方だったか、「びゃっこい」と云うカヤツリグサ科(?)の植物を保護している記事が出ていました。いかにも田舎くさい名前で、「ひゃっこい」が濁ったのかと思っていたらその後で、この地だけの希少植物で牧野富太郎が白虎に因んで命名したとの記事を目にしました。会津の白虎隊ならいわきも会津も同じ福島県で、白河以北一山百文の見方からすれば同一地域なのでしょう。 また樹木には福島県、特に吾妻山系を南限、北限とするものが多く、観察会で説明されていることだが改めて貴重な地域であることが再認されました。 |
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2007年度は、会設立20周年を記念して「高山」周辺を中心とした観察会とします。
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* カタクリの会は西和賀町で、自然観察会開催を目的とした会です。 * 会則、会費はなく誰でも自由に参加できますが、各観察会の一ケ月前から電話でのみ受付です。 * カタクリ通信を偶数月に発行いたしており、希望者には年間千円で送付致します。 (郵便振込みをご利用ください…02350-5-38765 加人者名…カタクリの会) カタクリの会連絡先: 電話&FAX0197(82)3601代表:瀬川強 |
■高山山麓の塩の川右岸の崩壊地帯を調査した高橋氏から送信された現場写真を見た。■その状況は、20年前に私が、撮影した的場川支沢の崩壊地と相似していた。崩壊した岩の上に細い広葉樹類が載っているものである。的場川支沢は以前に自然林が伐採された一帯に沿って崩壊したものであったが、塩の川の場合も同様のケースである。■一旦、破壊された自然を回復することはきわめて困難なことを今回の崩壊は教えている。崩落した母岩の上を薄い土層が被っているだけの高山の地層の状況は20年前と変わらないのである。自然のタイムスケールを侮ってはならない(MS記)。 |