会津地域における森林生態系保護地域設定等、国有林保護計画の概要について   高橋 淳一

福島県会津地域には、吾妻山を始め、飯豊山、田代山、帝釈山、会津駒ケ岳、燧ケ岳など2000mを越える山岳が連なっている。また、これらの峰々の周辺には、標高1000m前後ではあるが、ブナを中心とする原生的な森林が広がっており、特に豪雪地として有名な只見町周辺には34千ヘクタールに及ぶブナ原生林が残されている。また、絶滅が危惧される、イヌワシやクマタカなど希少な猛禽類の代表的な生息、繁殖地となっている他、ツキノワグマ、カモシカなどの大型哺乳動物の繁殖地としても注目されている。2003年には、世界遺産の候補地となるなど、専門家、研究者からも高い評価を得ている地域である。

他方、これらの森林の多くは国有林であり、全国的な乱伐によって、伐採対象が限定される中において、本地域も2001年には大規模な伐採計画が林野庁から表明された。これに対し、地元自然保護団体である「日本野鳥の会南会津支部」をはじめ、関東地方の諸団体による積極的な運動により、計画が凍結された。また、後に違法伐採が発覚するなど、当局側の不手際もあり、20031123日「第24回東北自然保護の集い・福島大会」において、関東森林管理局より全面禁伐の方針が示され、具体的な保護計画に着手することとなり、今回の「奥会津森林生態系保護地域」並び「緑の回廊」の設定に至った。これらの保護計画では、拡張される「飯豊山周辺」「吾妻山周辺」の既設生態系保護地域を含めた生態系保護地域全体の面積は、約9万2千9百ヘクタールとなり、その他の保護林(植物群落保護林等:約580ヘクタール)を含めた保護林全体では会津地域の国有林20万5千ヘクタールの約46パーセントとなる。さらに、残る国有林についても、「緑の回廊」として高齢級の天然林は禁伐的な扱いとなることがほぼ確定した(約1054百ヘクタール)。

なお、具体的な計画概要は以下のとおりである。

 

1.新設「奥会津森林生態系保護地域」

(1)対象地域

南西部(尾瀬周辺部)の田代山、帝釈山、会津駒ケ岳、燧ケ岳から中西部只見町周辺部)の会津朝日岳、浅草岳、御神楽岳一帯

 (2)対象面積

区    分

保存地区(ha

保全利用地区 (ha)

面    積

7715.47

76175.38

合 計 面 積 

83890.85

2.既設「飯豊山周辺森林生態系保護地域」の拡張

 (1)対象地域

南西部(西会津町)の鏡山、高陽山一帯並び南東部(山都町)飯豊山登山道・川入周辺

 (2)拡張面積(福島県側)

区    分

保存地区(ha

保全利用地区 (ha)

既設面積

 

862.40 

拡張面積

 

2193.56 

合計面積

 

3055.96

3.既設「吾妻山周辺森林生態系保護地域」の拡張

(1)対象地域

南部地域(猪苗代町)の中吾妻山中腹部並び西部地域北塩原村)西大巓(グランデコスキー場隣

接部)矢筈山、東鉢山入周辺

 (2)拡張面積(福島県側)

区    分

保存地区(ha

保全利用地区 (ha)

既設面積

4133.97

3670.24

拡張面積

 

393.47 

合計面積

4133.97

4063.71

総合計面積

8197.68

生態系保護地域&緑の回廊位置図(林野庁図面)


会津朝日岳のブナ林(保存地区)

酸ヶ平のトイレと兎平キャンプ場の改修工事について        鈴木 勝美

昨年から吾妻山酸ヶ平避難小屋のトイレ増設工事と兎平キャンプ場の改修工事が行われていましたが、先日(平成18年7月1日)その状況を見てきました。
 酸ヶ平のトイレは避難小屋が小さく見えるような立派なトイレでした。バイオ用トイレと汲み取り式のトイレがそれぞれありますが、中はハエが飛んでいたり手押しポンプの水は出る様子がなかったりで、循環型のバイオ浄化システムはまだ動いていないようでした。
 また、入り口にはチップ投入口が設けられています。各自の自然に対する意識と良心を喚起する目的といえるでしょう。みなさま御協力をお願いします。これで小屋周辺の状況は改善されることでしょう。
 兎平のキャンプ場ですが、駐車場から吾妻小舎近くまで舗装された道路にはがっかりですが、トイレ棟は建物近くまで樹木を残して建てられており、キャンプ区画や炊事棟をつなぐ道も砂利敷き、木道、施工なしと場所に合った工事がされているように見えました。
 キャンプ区画自体もあまり手が加えられず、最低限の工事にとどめられているようです。また管理棟はログハウス風で立派になっていますが、団体の利用が多いであろう利用形態を考えれば致し方ないところでしょうか。
 今回の改修工事は、概ね妥当な施工がなされているようです。

酸ヶ平避難小屋の小屋より立派なトイレ棟

協力金投入口

トイレ

兎平キャンプ場管理棟

兎平キャンプ場炊事棟

兎平キャンプ場内木道

 

植物和名考(U)      河上鐐治

4 カシ                           ぶな科 コナラ属

    樫

   牧野:  堅木を合わせる

     広辞苑: イカシ(巌し)の上略形か。樫、橿、?

          特にあかがしを言う。

  樫の仲間  

5 イチイガシ(イチイ、イチガシ)              ぶな科 コナラ属   

  櫟

 6 カシワ(カシワギ、モチガシワ)              ぶな科 コナラ属

    柏  炊(かしき)葉の意、食物を盛る葉

     語源: 食物を盛るだけでなく、この葉に包んで蒸した

 7 ウバメガシ(イマメガシ、ウマメガシ)           ぶな科 コナラ属

 牧野:姥目樫  若葉が褐色であるから
       語源:姥芽樫  「牧野では姥芽の意味であると説明している」と書いてあるのに当の牧野図鑑では姥目樫となっ                                ている。牧野図鑑の誤植か。
        姥女樫  葉の表面が波打っているのを皺に見立てた。

 広辞苑: 姥女? 

8 シラカシ(クロガシ)                   ぶな科 コナラ属

    白樫

牧野: 材が白いから、福島県以南


カシワ

磐梯吾妻スカイラインには、吾妻八景なる名所があり、高湯口からの最初が「白樺の峰」である。ここを通過するときバスガイドは、「ここは吾妻八景の一つ白樺の峰であります。白樺には色々種類があってここの白樺は岳樺といいます」と説明する。そこで白樺について。

9 シラカバ(シラカンバ、カンバ、樺の木)         かばのき科 シラカバ属(牧野)

カバノキ属(山渓名鑑)

白樺  樹皮が白い

牧野: 「カンバ」は古名「カニハ」の転化

語源: 樺 アイヌ語「カリンパ」から「カニハ」に。金田一京助

       後記ウダイカンバと共に樹皮が雨中でも燃えるので、「あかり」として用いられた。

      「華燭の典」の華は樺の意。昔中国で結婚式に樺の皮を蝋燭とした。
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 ダケカンバ(そうしかんば)               かばのき科 シラカバ属(牧野)                                                 

カバノキ属(山渓名鑑)

   * カバノキ属が正しいと思うが、シラカバ属であれば、バスガイドの説明もあながち間違いではないか。

岳樺(草紙樺)  
     牧野: 山嶺に生えるから

語源: 樹皮は剥がれて文字が書ける。草紙樺
     *  白樺の峰付近を地元では「てらし平」と呼んでいた。

11 ウダイカンバ

語源:鵜松明樺の略、鵜飼の松明に使われたから。

広辞苑:鵜松明(うたいまつ) 雨中の鵜飼用の松明、白樺の皮を用いる。

編 集 後 記

■会津地域の森林生態系保護地域及び緑の回廊の指定地域の設定が完了した。「高山の原生林を守る会」としては、林班図に基づいて、具体的な提案書を提出して委員会に望んだ。「中吾妻のブナ林」、「二十日平のブナ林」、「浅草岳のスキー場」の保護地域への組み入れと飯豊山域の本県側の保護地域拡張等をポイントに提起した。結果は、ほぼ全ての要望が最終案に盛り込まれた内容となった。地元との運用面での調整等、今後の課題はいろいろあるだろうが、森林管理局の今後の対応を見守っていきたい。■森林保護が地元利益と対立するとの視点もあるようである。山村の実態はすでにそのレベルを超越しており、その論点の前提が崩れているものと考えるが・・・。