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FSC認証紙 渡辺 仁 6月10日の福島民友新聞に、こんな記事がありました。 「 「初もの」は、それだけでもニュースになるわけですが、WWFジャパンの事務局長も ごく大雑把にいえば、「適切に管理された森林」から生産された紙を使用したということです。紙の原料を生産したその森林が、適切に管理されていることを認証したのが「FSC」という国際的な機関なのです。FSCはForest Stewardship Councilの略称だそうで、日本語では「森林管理協議会」となっています。 FSCのような機関によって、「持続可能な森林経営」のための一定の基準を満たした森林に格付けを与えることを、「森林認証制度」といいます。一番有名で実効性もあるとされるのが、1993年にWWFが中心となって発足したFSCですが、森林認証制度はこれ以外にもたくさんあって、『森林認証と林業・木材産業』(全林協2004)という本によると世界で50を越すそうです。ちなみに、日本でも「『緑の循環』認証会議」という認証制度が、2003年6月にスタートしました。 しかし、森林認証制度にも問題のあるものがあります。たとえば「マレーシア木材認証協議会」は、先住民族の生活の場である森林の伐採にも認証を与えているなど様々な欠陥によって、グリーンピースから激しく非難されています。この他にも、業界団体の自主的なラベリングにすぎないような認証制度もあるようで、「森林認証」を得ていますというだけでは、その製品が環境に配慮したものであるということはできないようです。 |
ところで、肉・魚・野菜あるいは米などの食品関連では、産地表示というものが義務化されてきましたが、木材に関しては、製品の段階でその産地がわかるものはまだまだ少ないと思います。まして「紙」となると、古紙使用率によってエコマークがついたとしても、そのパルプ材がどこの森林を切った木でできたものかということまでは、なかなか知りえないというのが現状だと思います。 たとえば、南会津のブナ林からも、これまで実に大量の樹木が「パルプ材」として切り出されて紙になり、私たち消費者の手元に届いているわけですが、「これが南会津のブナ林からできた紙です」とは知りえないのです。日本の紙に使われる木材チップは、輸入モノが年々増加してきて、「生態系への配慮なく伐採した木材」という意味で現在最悪のものは、おそらくタスマニア産のものということになるかと思います。「この紙は、タスマニアのオールドグロス林からできています」と表示してあるような紙を、日本人は胸を張って使うことができるでしょうか。しかし、実際には、原生林を切り倒した木から作った紙を使っているかもしれないわけです。 こうなると、「FSC認証紙」を使うということが、どのくらい意義のあることなのかが少しはわかるのではないかと思います。その紙は、ホームセンターで特売している紙の数倍の価格かもしれません。しかし、よく考えると、それがほんとうの紙の値段で、産地表示もエコマークも何もない特売紙は、生態系破壊型の搾取林業による紙なのかもしれません。 |
一握りの土に 山内幹夫 |
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4月24日の東吾妻観察会に参加して、佐藤守さんのレクチャーの中で、「ダケカンバの種は何十年も土の中で眠っているが、オオシラビソの木が倒れて間隙ができるとすかさず発芽する」という話がとても印象に残った。確かに、オオシラビソ林やブナ林の中でダケカンバがポツンと点在している風景はよく目にする。しかしそのお話からは、森が森たらんとする幾多の可能性を示唆した深い意味を感じることができる。 たとえば森の草木を今の人間に、林床の土を銀行にたとえるとするならば、林床の土に蓄えてある様々な植物の種子が次世代への資産として代々相続され、樹木が倒れては新たに発芽して資産運用され森が維持されていくのではないか。土の中には樹木のみならず、様々な草本類の種も含まれ、万一の時にも、森という状態が復元される財産がパックされているものと理解した。しかし、種子も土の中で眠り続けられるものとそうでないものとがあり、人手により森が相当な面積伐開されれば、保水力も弱まり土壌浸食が進んで、自力での回復が困難な状況にもなりうるだろう。 広く樹木が伐られ日が当たるようになって、眠っていた種子が発芽し、その森で今まで確認できなかった植物が繁茂開花している様子を最近はよく目にするようになった。中には絶滅が危惧されている種類もある。私も一昨年から今年にかけて、福島や白河近郊の伐開された丘陵裾部から今までお目にかかれなかったような植物と出会う機会が多くあった。最初は喜んでいたが、良く考えれば当たり前の現象で、いわば森の悲鳴に似た開花だったのかもしれない。 林床の植物を観察すると、茎がある程度まで伸び、葉は出るものの開花しない多年草も見られる。これは日陰のために開花しないのであって、倒木などのため間隙ができ日光が当たるようになればやがて開花し結実するだろう。間隙が新たな樹木の成長により塞がれれば、その多年草は再び眠りにつき、種子が眠る土は森を形成する樹木に守られることだろう。ゆえに、何十年ぶりに日が当たった斜面に花咲いた植物を人間の欲望のおもむくままに盗掘することは絶対にやめてほしい。 福島県は広く落葉広葉樹林帯のエリアにあり、林床土壌は落葉が積もって腐食した豊かな埴壌土である。その土は植物の成長を支えるとともに、未来の森を保証する種子を蓄えるという素晴らしい力があることを知ってほしい。 当会で実施している水源の森復元のための植林事業は、やがて、育った樹木が林床の土のパワーを回復させ、いつしか極相林を目指した森の営みが復活することであろう。登山道ロープ補修事業は高層湿原の泥炭層の破壊をくい止め、やがて高山植物を育てる壌土の形成につながるだろう。ひとにぎりの土を見ていると、土が土であり続けることが当たり前ではなく、いかに困難かを考えさせられる。そして、その困難さの原因の大部分が人間の自然破壊であることも。 |
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芽生えはするが、日陰のため開花に至らない。 枯葉の下の土中にはたんさんの種子が眠る。 |
林縁に日当たりを得て咲く花。やっと得られた 開花条件。大切にしよう。 |
2005年カタクリの会奥羽自然観察会計画(7月〜12月) |
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