一枚板のテーブル 渡辺 仁 世の中の木製テーブルの殆どは、合板とか集成材で出来ていると思います。そしてまた、例えばそば屋とか喫茶店とかペンションなんかには「一枚板」のカウンターやテーブルがけっこうあったりもします。あるいはこの読者の何名かのお宅には、立派な一枚板のテーブルがあるかもしれません。残念ながら我が家にはないのですが。 仕事柄、私も何枚かそういう板を扱ってきましたが、同じ幅や厚さでも、いくつかの材料を継ぎ合わせた板と、樹肌がわかるような耳がついた一枚の板では、その迫力というか生命感というものは、全く違っているといえると思います。テーブルになってもその木の太さや年輪がそのままわかるような板の場合だと、その木が森の中に立っていたときの様子を容易にイメージできるように思います。気持ちの持ち方ひとつでは、対話も可能な「板」といえるかもしれません。 私は南会津に住んでいたことがあるので、パルプ材として切られたと思われるけっこう太い広葉樹(ブナなど)を積んだトラックが走るのを日常的に目にしたこともあり、さらには土場に積まれた大木というのも普通に目にしてきました。そういう木材の山を見て「もったいない」とか思ったりしました。気の利いた人だと、その一山いくらのパルプ材の中から、家具として使えそうな木に目をつけて格安に手に入れて立派なテーブルにしてしまうということもできたようでした。実際に私が最初に強い印象を受けたトチノキの一枚板は、長野県ではありましたが、パルプ材の中から出てきたテーブルでした。パルプ材としてチップになってしまえば、紙という物質としては残っても「木」としての存在はそこまでということになります。拾われて家具として使われれば、まあそれなりに長い第二幕がはじまるわけです。 そんな感じで「木の魅力」に目覚め始めたちょうどその頃、知床と白神ではかなり強烈に自然保護運動が展開されていて、特に知床のチプコ運動のインパクトは強かったと思います。しかし私自身はそれほど自然保護に熱心ではなく、はっきり言って「大木が切られてテーブルになる」ということについて、「だから切らないで守るべき」という発想には至らなかったと思います。そういう価値観だったら木を切ったりふんだんに木材を使うという仕事はできなかったのではないかとも思います。 |
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「東北自然保護の集い」は下記の日程で開催されます。会員諸氏の多数の参加を歓迎します。 「第24回東北自然保護の集い」テーマ:見つめよう、人と自然の関わりを 東北地方のブナ林を始めとする豊かな森林は戦中、戦後の乱伐や高度経済成長期における乱開発によって、そのほとんどが消失し、僅かに残された奥地の原生林もバブル経済期に多くがスキー場などのリゾート開発の対象となりました。一方、これらの開発行為に対し、自然を守る活動が各地で展開され、中止や凍結により一時的にせよ危機的状況は回避することができました。さらに活動は保護、保全から再生、創造へと着実な進歩を見せており、かつての対立の構図は序々に解消されつつもあります。しかし、一部には未だに破壊の槌音が響いていることも事実であり、第24回「東北自然保護の集い」福島大会におきましては、自然保護の原点を見つめつつ、新な段階に入った活動について大いに議論を深め、よりよき方向に進んでくことを目指したいと思っております。どうか多くの皆様の参加をお願いいたします。 1. 日 時 : 2003年11月22日〜23日(土〜日曜日) 13.00〜13.10 開会 主催者あいさつ 大会実行委員長 三村 達道 来賓あいさつ 大玉村長 浅和 定次 13.10〜14.10 基調講演「東北から広がる緑の回廊」 カタクリの会代表 瀬川 強 14.10〜14.50 現地報告「南会津地方のブナ林の現状」 日本野鳥の会南会津支部事務局長 渡部 康人 14.50〜15.10 特別講話「東北地方における今後の緑の回廊計画と保護対策」 林野庁関東森林管理局計画部長 田米開 隆男
「南会津地方のブナ林の保護対策」 (財)日本自然保護協会参事 吉田 正人
15.10〜17.00 分科会(問題提起) 第一分科会―「森林の再生」(植林・植生回復・人工林保育) コーデネイーター 秋田 泰治(仙台のブナ林と水・自然を守る会) 発表者 小幡 昇(仙台のブナ林と水・自然を守る会)
望月 達也 (花巻のブナ原生林に守られる市民の会) 佐藤 守 (高山の原生林を守る会) 第二分科会―「人と自然との関わり」(環境教育・登山道・産廃問題) コーデネイーター 佐久間憲生 (出羽三山の自然を守る会) 発表者 横田 清美(福島県自然保護協会) 鬼多見 賢(福島県自然保護協会) 村上 克恭 (岳温泉文化協会) 奥田 博 (高山の原生林を守る会) 戸沢 章 (日本野鳥の会いわき支部) 第三分科会―「公共事業を考える」(林道・リゾート開発・ダム) コーデネイーター 東瀬 紘一 (博士山ブナ林を守る会) 発表者 菅 敬浩(博士山ブナ林を守る会) 高橋 淳一(高山の原生林を守る会) 17.00〜18.00 休憩&入浴 18.00〜21.00 夕食・懇親会(地酒・銘酒持込歓迎) 23日(日) 7.30〜 8.30 朝食 8.30〜10.30 分科会 各分科会討論・まとめ 10.30〜11.30 全体集会 各分科会報告 11.30〜11.40 大会アピール採択 11.40〜11.45 次回開催県あいさつ 山形県代表 11.45〜11.50 閉会 主催者あいさつ 大会副実行委員長 星 一彰 13.00〜16.00 現地観察会(村民ふれあい公園:安達太良山麓)(希望者) 4. 主催団体 東北自然保護団体連絡会議・第24回東北自然保護の集い福島大会実行委員会 後 援 福島森林管理署・二本松市・本宮町・大玉村 NHK福島放送局・福島テレビ梶E福島中央テレビ梶E兜沒放送・潟eレビユー福島 朝日新聞福島支局・毎日新聞福島支局・読売新聞福島支局・河北新報社福島総局 福島民報社・福島民友新聞社 5. 参加費 : A、集いのみ参加 1000円 参加費振込み先:郵便振替口座 高山の原生林を守る会 02170−0−24351 連絡先: @〒960-2155福島県福島市上名倉字粕内31 A〒969-1302福島県安達郡大玉村玉井字薄黒内161 7. 分科会発表予定者 分科会発表予定者は事前に連絡願います。また、資料につきましては11月10日まで一部送付頂きますとともに、当日50部程度を準備願います。その他スライド等を使用される場合につきましても事前連絡願います。 |
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大会宣言(案) バブル崩壊に伴う景気の低迷により、東北地方の豊かな自然を蝕む大規模開発は、一時的にせよ危機的状況を回避することができました。そして、多くの人々によって自然の修復も行なわれるようになりました。 しかし、その一方では、大規模事業の構想が着実に進められており、監視の目を緩めることは出来ません。また、自然志向の高まりによる人と自然との関わりかたにも変化がみられるようになりました。オーバーユースによる登山道の荒廃や高山地域へのペットの持込等、皆が自己中心的になっていると思われるような行為が多く見られるようになりました。このことは、自然に接することに限らず、日常生活にも現れています。ゴミ処理、産業廃棄物に代表される問題はまさに、豊かさを追求するなかでの「負の遺産」である。これについては処分問題だけに特定せず、消費生活そのものを見直すなど私達一人一人が真剣に取組まなければなりません。 そしてこれらの多くの問題は「人が自然とどう関わるか」という原点を見つめなければ解決できない問題であり、国民的課題として官民挙げての努力をしなければなりません。 私達は福島県二本松市に集い、これらの問題を真剣に議論しました。そして自然破壊に明け暮れた20世紀に対し、真に豊かな自然に抱かれ、安心して生活できる21世紀の東北地方を実現するために次の宣言を行ないます。 1.大規模林道、広域基幹林道を始めとする開発行為は環境負荷に対する徹底した基礎調査を行い、環境コストと環境を保護した場合の利益を含めた投資効果の分析を行うこと。また政策決定にあたっては、調査情報はすべて開示することを原則とし、国民的合意が得られない場合は計画の撤回や見直しを積極的に行なうこと。 2.世界遺産の白神産地に匹敵する南会津及び越後地方のブナ林を始めとする東北各地の多様な生態系を有する森林については、生態系を保全する上で実効性のある法的な保護対策を早急に講じること。 3.奥羽山脈を脊梁とする「緑の回廊」計画は関東森林管理局管内への延長を促進するとともに、太平洋と日本海を繋ぐ樹林帯の再生・保護についても早急に取り組むこと。 4.森林再生と湿原植生回復を図るための体系的な制度を整備すること。また自然の修復にあたっては風土性、多様性、変異性を考慮した復元の3原則を規範とすること。 5.環境保全を指向する自治体やボランティア団体に対しては、資金、技術、税制の多方面にわたる支援策を策定すること。特に自然破壊が最も進行している里山の回復のための支援策を最優先すること。 6.東北の豊かな森はゴミ捨場ではない!各地で問題になっている産業廃棄物処理場、不法投棄については関係機関が一体となって解決に当たるとともに、リサイクルの推進を含め関係法令の強化と緩和をバランスよく進め、ゴミの発生源からの対策を講じ、積極的に減量化を図ること。 7.人は自然に抱かれてこそ存在できることを教育の場を含め、広く啓蒙していかなければならない。そして、私達自らが率先して行動していきます。 2003年11月23日 第24回東北自然保護の集い 福島大会 |
去る8月22日(金)から24日(日)にかけて、福島市上町の福島テルサ4階ギャラリーで「福島花紀行写真展」が開催されました。この写真展は、『福島花紀行・奥羽山脈編』(歴史春秋社)の刊行記念で当会が企画したものです。 本に掲載した写真の中から、北は半田山から南は那須連峰三本槍岳の18山で撮影した66点を選び、展示しました。お盆過ぎの厳しい残暑にもかかわらず、福島市内はもとより、郡山市やいわき市、遠くは岩手県から延べ250人の方々が来場され、当会会員の方々も多数足を運ばれました。来場者の中には写真のことをスタッフに質問したり、花談義をする方もおり、和やかな中にも熱気溢れる写真展となりました。マスコミ関係では8月22日付けの福島民友新聞、8月24日付けの読売新聞福島版に開催記事が報道されました。
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■東大巓の湿原植生回復ボランテアは12時間に及ぶ強行軍となりました。事故も無く、無事終了できて何よりでした。■ボランテア帰りの谷地平で大学生の集団に会った。登山ではなく兎平キャンプ場をベースに周辺を日帰りで散策していると言う。昔は、このような形態は無かったように思うが。■憑かれた様に頂上を目指す登山に明け暮れた若者がいた時代もあったが。世代が代われば山の楽しみ方も変わるということか。■ボランテアの取材に駆けつけた中央紙の記者は、二十代半ば、夏休みの大半を登山に費やしていると言う。■それぞれに自然に対する感性をどのように磨いていくのか気になるところである。■今年の「東北自然保護の集い」は二本松市開催です。「緑の回廊」に代表されるように日本の森林保全の先駆的役割を果してきた集会です。多くの会員の方々が参加されるよう希望します。 |
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