「第23回東北自然保護のつどい宮城大会参加報告   佐藤 守

23回東北自然保護の集いは9月14日(土)、15日(日)の2日間に亘り宮城県鳴子町で開催されました。その概要を報告します。

テーマ:森林の再生

記念講演 「東大北海道(富良野)演習林がめざすもの」 東大教授・北海道演習林林長 大橋邦夫

l         東大北海道(富良野)演習林は1899年に開設された。面積2万3千ha。1907年以降天然更新を基本とする管理をしてきた。1950年代より林分施業法による管理を導入。

l         北海道は汎針広混交林で世界で最も美しい森林地帯といわれている。10年ごとの択伐林、20年ごとの択伐林に2分して管理している。伐採対象は成長の見込みの無い老齢樹としている。

l         一般的な択伐は生育の良い樹木を伐採の対象としている。これでは、天然更新は不可能。

l         「持続的な森林経営」が演習林の目標である。1986年から40,000m3/年の木材を生産している。それ以前は70,000m3/年の生産であった。1981年に大風害があったため減少してしまった。

l         林分区分:択伐区分(天然更新が容易な立地条件の地域)補植林分(幼稚樹が少なく天然更新が比較的困難な地域:植林を加える)、偕伐林分(現在は適用していない)

l         戦後5回ほど択伐を実施している。1957年からこの施行法を導入して継続している。1981年に30%の樹木が倒木。木材伐採を5年間中断。以降は従来の60%に伐採量を減らし再開。

l         森林が保有する木材生産能力と環境保全の調和を図りながら20,000haの経営規模を維持している。

l         演習林では豊富な木材資源と生物多様性のバランスがとれている(現在の木材生産40,000m3/年)。

l         基本80箇所+補足350箇所(2,000ha)で継続的な調査を実施している。

l         1958年からの計画的な林道設置により40m/haの林道が整備され、択伐作業による木材の運搬が効率的にできるようになった。

l         天然更新困難地への植林を可能にするため苗木生産を継続的に実施。エゾマツ等6万本/年を生産している(北海道では成功例が極めて少ない)。遺伝子撹乱を避けるため演習林から採種。

l         北海道演習林の実績は持続的森林経営をほぼ実現していることである(しかし経営は赤字)。

l         現在の課題は植林が計画通りに行っていないこと。

 

各団体からの森の再生を目指した活動報告から

l         ササ刈りにより広葉樹が豊富になり5年で間伐可能な密度になった。間伐樹は移植を考えている。

l         森林ボランテアが全国的な盛り上がりを見せている中、末端行政はこれに対しどのような支援をしていいのか右往左往しているのが実体。

l         子供達は樹を切るのは悪いことだという第一印象を持っている。果たしてそれが正しい見方なのか。

l         人工林の面積は増加しているにもかかわらず危機的状況にある。これからはいろんな森に係っている自然保護団体を市民が選択する時代になるだろう。

l         韓国にはツキノワグマは5頭しかいない。海に注いだ、無機塩類を山に循環させているのは、遡行する魚、鳥、山の動物である。いまクマも重要な役割を果たしている。このような視点に立つことは新しい見方。

l         スキー場で森林の再生はあるのか。鰺ヶ沢スキー場は14,00名の反対署名にもかかわらず1992年12月にブナ林を切り開始されてしまった。これに許可を与えたのは林野庁である。スキー場と森林再生とはどうつながるのか。

l         ダムの魚道の構造を工夫する必要がある。魚が登れない勾配の魚道がある(スナヤツメ)。

l         船形山で17,000haのブナ林が伐採された事実を明確にする必要がある。ササ刈りや除伐の実践面積は点に過ぎない。

l         行政に立ち向かって行かないと森林の再生は不可能。自分達が伐採したのだから自分達で再生しろと要請する位の自覚が必要である。行政と闘う姿勢が必要。

l         行政が切ったところは行政のお金で回復させるという意見には真っ向から反対する。公的施業は赤字を増加させるだけで、結局その税負担は国民に帰着する。

l         植林ボランテアは林野行政のつけを自然保護団体が払っているのではないかという視点も可能であるが、それだけでは森林回復にはつながらない。リタイヤした高齢者を組織化して森林回復作業を組織した韓国の事例はヒントになる。

l         林野庁は反省を明確にした上で、国民からの支援をお願いをするのが筋である。どろ亀先生の場合は木材生産施業と森林保護を両立させてきた。なぜ林野庁はできなかったかを考える必要がある。

l         ブナの植林はできないということが有永(元山形大学教授)先生の持論(出羽三山の自然を守る会)。

l         1970年結成以来様々な開発反対運動を続けてきたが、会員以外の人に自然のしくみを知らせる必要性を感じ1979年から1年間スケジュールをくみ「子どものための自然教室」を開催。更に4年前に新たな試行を求めて子どもの自然教室の中に組み入れて高舘山、月山山麓で森づくりの取り組みを開始した。参加している子ども達は小学校1年生〜中学校。現在は、杉の伐採跡の整備を中心に行っている。ブナも3mぐらいの樹高のものを25本ぐらい植林したが(支柱も添えた)、積雪に負けて、翌年まで残った株は無かった(出羽三山の自然を守る会)。←春の根踏みを怠ったのでは(岩手自然の会)

l         「朝日岳周辺森林生態系保護地域」が7万haの規模で設定されることになった。これまで、この地域での設定が遅れたのは林道建設反対運動があったため。今後は緑の回廊と連結させることも目指して対象地域を検討していく意向である。設定委員会は4回開催し平成15年の3月に終了の予定。祝瓶山も対象地域に入っている(葉山の自然を守る会)。

l         30年前に構想された灌漑用の筒砂子(つっちゃご)ダム工事休止の知事方針が土地改良区、周辺市町村長の圧力で継続に変更されてしまった。自然保護団体は中止を求めている(江合川(えあいがわ)水系のブナを守る会)。

l         江合川水系の鳴子峡上流に潅漑用の岩堂沢ダムの建設が予定されている。これも30年前から構想されたもので転作が進んだ現在では必要性が感じられないもの。地元の土地改良区関係者等と自然保護団体が話し合いを持ったが理解は得られなかった。

l         博士山周辺住民は民有林を管理するための林道を要望していたが、これを利用して林野庁は赤字解消に寄与するとして国有林のブナ伐採のための広域基幹林道設置を目論んだ。これを阻止するため裁判に訴えた。福島地方裁判所では敗訴したがその判断に誤りがある思われるため仙台高裁に控訴し現在係争中。

l         赤石川の渇水期の放流量を今までの2.9倍の提案を東北電力が提示してきたが、鯵ヶ沢町長は更に放流の時期を増加させるように要求している。 

 

 

植樹その後          我妻三夫

今日、猛暑のなかバイクで鳩峰峠に行ってきました。朝、茂庭のダム工事の横を通って行きましたが、ダムの上流に凄い道路を作っていて工事中の高い橋げたをおそるおそる通りしばらく行くとやはり通行止めでした。オーバーハングした大きな岩をとっているとかで完成は3年後と言っていました。ダム建設に便乗して超スーパー林道を作ってるようです、完成するとまた福島県の自然破壊のひんしゅくをかうかもしれません、一度橋げただけでも見に行ってください。オーバーハングの岩は稲子の手前のようで、七ケ宿から稲子に出れば福島側から峠に入れそうです。今日はあちこち小さな山道は台風の影響を受けているので私は七ケ宿からマツタケ街道にでてから登りました。
 植樹の状態は先日の大雨でずいぶん息をついたと思いますが、やはり1/3は葉が落ちていました。ナナカマドとミズナラは葉も青々として頑張ってる、ヤマザクラはまるぼうず、カエデは葉が半分ぐらい枯れていました。根張りは確認できませんでしたが、根が張ってくれれば来年は大丈夫でしょう。
植樹の当日は下草も小さく植樹木も目立っていましたが、今は下草がのびて幼木が負けそうです、その内草刈り機を動員して下草刈りをしたほうが良いかもしれません。
 帰りにマツタケ街道のそばやに立ち寄ったら、そこの主が鳩峰峠の福島側に風力発電を作る計画があると言っていました、送電線も今ある道に柱を立てれば安上がりとかで、先ほどの超スーパー林道も関係あるのかな?(調査日:7月20日)

 


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