再び山に向かう私          小幡仁子

 二人の男の子の母親となって、子育てと仕事に忙しく、この13年間はあっという間に過ぎてしまった。子供には、毎日毎日「ママ、ママ」と呼ばれて、(母親って良いもんだなあ )と思いながらの13年間であった。 ところが、その掌中の玉であった長男が、最近反乱を起こし始めた。「うるさいんだなあ、ママは。分かってるんだ、言われなくとも」だって。あららー、反抗期だわ。 本来ならば「やったあー、万歳」と、順調な成長ぶりを喜び、世話焼きを止めて、自分の自由な時間を増やす絶好のチャンスなんであるが、なぜかとても複雑な気分。「あー、待って。もう少し私にくっついていてちょうだい」と言いたい心境。 それで私は気がついた。これまで自分が子供を遊んでやっていたと思っていたけれど、そうじゃなくて、遊んでもらっていたのは私だったんだと。 (まあ、しょうがない。良かったじゃないの順調に成長して。子供だって母親にいつまでもべったりくっつかれても困るんだし、少し離れて、好きな山登りを始めたらいいんじゃない。)そんな声がきこえた。 そうだった。もうそんなに若くないんだし、したいことがあったら、今のうちにやっておかなくちゃ。がっかりしている場合じゃないぞ。 それで、昨年は,チャンスに恵まれて、奥田さん達とモンブランに登ってしまった。私としては、すごい冒険だったけど、最高に充実していて、楽しかった(苦しいことも多かったけど)。子育てとは違う喜びがある。頑張れば13年のブランクも埋められるし、自分の世界が、また別に広がって行くと思った。 高山の原生林を守る会の自然観察会にも久し振りに出てみた。樹木の芽や野鳥の観察をゆっくりやりながら、こんな風に歩くのもいいなあ、と思われた。芽の中には、不思議な世界が埋もれていたんだと、今までにない感動があった。そして、今、入院中の山の友達もこんな木々を見たら、元気がもらえるのになと思った。
  森深く 命の芽吹く 木々ありて 君に見せたし 春の訪れ

ブナの芽吹き

 それにしても、今日も息子達は学校で疲れたらしく、スースー寝息を立ててねむっている。長男は、頭をなでようとすると「さわんなよ」というけれど、寝顔を見られているとは知るまい。二男の方は、甘えん坊で、こっちの方は、まだ膝に抱っこをしたり、頬擦りしたりできるので、あと2、3年は私をかまってくれるかな。 子育てに余裕が出てきた分、山登りをしたり、自然観察に参加したり、何か自分にできることを探しながらこれからはやっていきたい。再び山へ向かう気持ちになって、また新しい道が見えてきた気がする。

会員が書いた本の紹介

@ 山田恒人「シダ植物の世界」(歴春ふくしま文庫16 歴史春秋社 1200円+消費税

山を散策すると必ず目にするシダ植物ですが、図鑑類が少ないため、親しみづらい植物でした。それが、福島県のシダ類に焦点をあてて書かれている上、「吾妻山のシダ」の項目があるのがとても嬉しい。内容も素人でもわかりやすいような表現に配慮されており、筆者の人柄がにじみ出ている。会員にお薦めの一冊。
A     小林澪子「歴訪の作家たち」(論創社1500円+消費税)

保原町出身の女流作家の一生を辿った「小林美代子の生涯と文学」は秀逸。今後、時代を重ねるに従って、必ずや輝きを増すであろうことを確信させる。
B
小林澪子「ふくしまに生きた女たち」(歴春ふくしま文庫73 1200円+消費税)
 「高山の原生林を守る会」を支えているのは、感性豊かな女性達であるというのは事務局の一致するところである。多分にこの本に紹介されている6人の女性達はその源流ではないだろうかと思う。ちなみに「高山の原生林を守る会」にも会津、中通り、いわきに熱心な女性会員がいる。

C 奧田博「福島の山と温泉」(歴春ふくしま文庫84 歴史春秋社 1200円+消費税)

 福島の山50を温泉とセットで紹介。しかし、ただのガイドブックでないことは、第1部「福島の山とこれからの山登り」を読めば一目瞭然。この章に筆者の「高山」会員としての歴史が凝縮されている。
D     穂積正 歌集「教育散歩」(歌と観照社):社会情勢全般について多角的な視点から詠んだ歌集。

「レッドデータブックふくしまT」(植物・昆虫類・鳥類を編集)について

「レッドデータブックふくしまT」は直接出版社に申し込めば購入可能です。連絡先は以下の通りです。
 日進堂印刷所 TEL 024-594-2213 FAX 024-594-2041(所定の様式でFAXでの申し込みが必要)
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