「第24回東北自然保護の集い」福島大会

〜見つめよう、人と自然の関わりを〜

                                期 日 2003年11月22日(土)〜23日(日)

                                     会 場 福島県二本松市岳温泉 東三番館

 
主催者あいさつ                                     大会実行委員長 三村 達道

来賓あいさつ                                      二本松市    三保 恵一

l         生命は森・自然から生れる.伝統ある日本文化も自然から育まれてきた.

l         国土保全・生命維持システム、全ての動植物にとって、地球レベルの生態系を保全保護することが大切.

l         地球規模での破壊と環境問題で人類の生存すら危ぶまれている.生命母体である自然を回復させることが,今求められている.

l         本大会を契機に豊かな自然を守り,将来に継承するために活躍していただきたい.東北自然保護の集いが新たな自然保護の礎となることを願う.

                   大玉村長    浅和 定次

l         安達太良を知る会から活動報告書をもらい、自然のすばらしさに改めて感銘を受けている.

l         各地で実践活動をしているこの集いは貴重である.各地の地元で活躍している自然保護の直接の声を聞けることを楽しみにしている.

l         自殺者,ホームレスが増加している.福島県530人,二本松広域地区では30人ぐらい.今こそ自然の回復が求められている.

l         ゴミを見ていると食に対する人間の生き様が見えてくる.食文化,自然との共生で住みよい人間社会につながっていくと考えている.この集いがさらに発展することを祈念する.   

 

基調講演「東北から広がる緑の回廊」

カタクリの会代表 瀬川 強

l         16年前に沼田真さんに緑の回廊(コリドー)の概念を教授された.コリドーの概念からグリーン・ベルトに名前を親しみやすく変えて提案して、活動してきた.

l         1990年に宮城県で自然科学者会議があり,大分、力を入れて話したが,無視されて落ち込んで帰ってきた.

l         同じ日に妻は自然観察指導員の講義を受けてきており、私とは対照的に張り切っていた.その夜、2人でいろいろと話し合ったのがきっかけで、1991年の1月にカタクリの会を結成して観察会を始めた.といっても最初は2人だった.その観察会も今月で155回になった.

l         グリーンベルトを進める中で,青森営林署から八甲田から蔵王にいたる奥羽山脈「緑の回廊」構想が発表され、さらに関東森林管理局が南に伸ばす構想が出てきた.今では全国17箇所でグリーンベルトが計画されている.栗駒から鳥海,鳥海から朝日にも計画されている.

l         北東北三県で民有林をつないで回廊を構築する「緑のグランドデザイン基本構想」計画が進んでいる.これは未来の人々に緑を保障するものであると考えている.

l         国有林のグリーンベルトはあくまでも骨格でありこれから更に広げていくことが大事.一人の力は小さくてもいい続けることが、やがて賛同者を呼ぶ.共感する人が大きな輪になり実現可能になる.いいつづけることが必要と思う.

l         1998年の沢内村での自然観察大会開催を期にネットワーク岩手を結成し、奥羽山脈一斉緑の観察会の実施を東北各地の団体に呼びかけた.98年は14団体であったが、現在は森林管理局も参加していて20団体を超える.

l         自然保護を唱える人々でも意外と身近な自然について知らないことが多い.幼稚園で使ったスライドを使いながらお話をします.

l         フキは岩手ではばっけという.フキにはオスとメスがあり,雌花は白くトウが立つ. 雄花は黄色でやがてしおれる.味はオスは苦い.

l         ミズバショウは岩手県ではべごのしたという.

l         カタクリの会は雨でも観察会は中止にしない.ブナの樹還流は雨の観察会でないと見られない.子供たちは雨の観察会を楽しみにするようになる.

l         ウサギとキツエの足跡を追いかけていくとウサギの足跡が途絶え、やがて糞からウサギの痕跡が観察され、更に追跡すると満足そうなキツネに出会った.クルミの食痕で食べた動物が分かる.赤ねずみは穴をあけ、リスは下の歯で割って食べる.

l         タヌキやキツネ、リスなどの死骸が道路に転がっているのをよく見られるようになった.これは動物の営みを考えない道路作りが原因だ.

 

現地報告「南会津地方のブナ林の現状」

                                         日本野鳥の会南会津支部事務局長 渡部 康人

l         本日の集会参加について河野氏に電話したら,FAXでコメントを送ってくれた.

l         奥只見のブナ林の特色は5つに分類できる.

l         只見は東は急峻、西はなだらかな非対称山脈が特徴の越後山脈にあり,有数の多雪が作り出した雪食地形を成している.

l         また多雪に適応した独特の植物が植生している.

l         原生的なブナ林が11万ha存在する.只見エリアのブナ林の特徴は,小国町は大面積でブナ林が広がっているが,只見のブナ林はなだれの間にモザイク状に原生状態を維持したブナ林が3〜4万haヘクタールぐらい残っている.しかし,地形は極めて厳しいため,特殊な山登りの技術を持たないと人間は近づきにくい.

l         樹洞棲のクロホオジロコウモリは只見の浅草だけでしか確認されていない.ミズラモグラ,ノジコなど多様な動物が生息する.

l         黒谷川の渓畔林は巨木が多く貴重.

l         昭和55年に只見町でブナ伐採が議題に.議会は伐採反対を陳情.只見町が議会として林野庁に陳情.しかし成果は得られなかった.平成12年より南会津野鳥の会として布沢地区でイヌワシを確認し始めてブナ林の自然保護にかかわった.平成13年、関東森林管理局の英断で50haのブナが伐採中止.同年更に只見エリアでブナ伐採計画が明らかになり関東森林管理局と激しい対立があった.この年は計画通り全て伐採されてしまった.

l         平成13年度より計画縦覧が始まったので,会員に閲覧,意見書提出をお願いしたところ,多く(40通)の意見書が寄せられた.登山者,釣り愛好者等の46,700名の署名を集め、平成14年3月に林野庁に提出した結果、20万haの天然林の伐採を中止してもらった.これは,大変な英断であった.

l         われわれは,ブナ林を伐採から未来永劫,守るため河野教授に只見の沼の平地区を調査したところ,違法伐採が見つかった. 南会津の伐採問題は単なる手続きのミスという問題では処理できない.

l         平成10年に林野庁の抜本改革により,森林の広域的機能を重視した施行重視に移行することになり平成15年度にその成果が始めて明らかにされることとなっていた.

l         平成5年以来,林野庁は種々の生物多様性確保のための施策を講じていたにも拘らず,末端の林野職員に伝わっていなかった.残念ながら霞ヶ関の通達は現場サイドにはまったく伝わっていない.違法伐採ではこれを感じた.

l         原生林の管理を林野庁に任せていていいのかすら疑っている.林野庁に対して猛省を促したい.

Q 東京の小島:林野庁地方支署の山に対する地主根性が問題としているが,その代替機関としてはどのように考えているか.

A 1つは法律をつくり,それを専門に守る役所をつくること.それは,地元の役所でもいい.林野行政の独立採算制的なやり方を抜本的に変えなければならない.つまり、法改正と管理形態あるいは地方管理に変えていく必要がある.国民的な論議に高めていく必要がある.  

 

「東北地方における今後の緑の回廊計画と保護対策」

林野庁関東森林管理局計画部長 田米開 隆男

l         今回の南会津伐採問題は全く言語道断な行動.二度とこんなことの無いように,林野庁全体として国民にお詫びしたい.

l         会津地方のブナ林の取り扱いについてまとめてきた.先ほど来ブナ林の会津地方の貴重さは、十分に話されている.

l         現在は伐採指定していないが,もう少し明快な対応をするため,原生的なブナ林については自然維持タイプの管理をするよう位置づけ指定したい.

l         しかしその範囲については、調査が必要であり時間が必要である.そのための調査の準備をしている.調査が終わり次第,制度化のための法改正を行いたい.

l         それまでの期間は、ブナ伐採を行わない.

 

                                    林野庁東北森林管理局計画第一部長  中岡 茂

l         青森森林管理局で「緑の回廊」を計画した.その計画に当たっては、緑の少ない外国と異なり緑の豊富な自然で日本的な緑の回廊の特徴づけに苦労した.

l         「日本の回廊」は動物保護だけでなく,植林地と自然林とを回廊に取り入れて、植物遺伝子を残すという機能も兼ね備えており,原生的な自然を回復させていこうという目的も含まれている.

l         瀬川さんから紹介のあったグリーンベルトだが、人工林にモザイク状に広葉樹を植林する息の長い活動にも取組んでいきたい.

l         人工林については,まだら伐採施行により広葉樹の植生回復を図っていく.

l         朝日山地の森林生態系保護地域指定(7万ha)に伴って,入山規制の程度の調整に手間取った.今後は入山者のマナーを守ってもらうため,朝日山地森林生態系保護地域管理委員会を設置し巡視等を実施するようにした.

l         モニタリング調査として、入山・釣り等の状況を捉えていく.

 

「南会津地方のブナ林の保護対策」

                                    (財)日本自然保護協会参事    吉田 正人

l         昨年「自然再生推進法」が成立.世界公園会議が開催された.これは10年毎に行われる.

l         南会津地方のブナ林は,東北地方のブナ林と越後のブナ林を結ぶ機能を果たしている.更には奥日光から三国,信州に至るブナ林を連結するものとしても重要であり,猛禽類の生息密度も高いことで重要な位置を占めている.

l         会津のブナ林は世界遺産にはエントリーしなかったが,自然度が低いことが理由ではない.今回選抜された知床,小笠原等は,植生タイプ的にまだ登録されていないもの.ブナ林は既に白神が登録されている.

l         朝日山地の保護対象ブナ林7万haは日本一の規模で,飯豊とあわせると9万haに達する.

l         コリドーとは沼田会長が以前から提言していたが,最近になってまた世界的に注目されてきている.線形コリドー(緑の回廊),飛び石コリドー(鳥類対象),景観マトリクス(二次林,景観を連結)の三タイプが提案されている.

l         オーストラリアでは先住民に土地を返還した上で国立公園として維持する施策に踏切っている.

l         世界公園会議では自然保護策として,先住民,地方自治体に任せたり,経済活動の推移にゆだねるシナリオ等が検討された.

l         「野生生物保護法」制定について日本自然保護協会で取り組んでおり,その考えを本にまとめた.

 

 

 

分科会(問題提起)

第一分科会―「森林の再生」(植林・植生回復・人工林保育)

                コーデネイーター 秋田 泰治(仙台のブナ林と水・自然を守る会)

                     発表者 小幡  昇(仙台のブナ林と水・自然を守る会)

l         天然下種更新としてブナの母樹を残しておいても下草管理が伴わないと,笹に覆われてしまい.ブナが再生しない.コリドー指定しても後の管理をしないとブナ林は再生しないことに注意する必要がある.

l         笹を繁茂させないための手法はいろいろあるが,わが会は笹刈りを実施することになり6年で750haぐらいを刈り払ってきた.

l         1984年に40%の托伐をし,85年にベソレートを散布した後放置されたところで行った.

l         笹刈りには剪定鋏が便利,実生は養成する.笹刈りによりブナ林に植生する広葉樹の若木が育ってきた.

l         今後は,観察林として利用しながら,炭焼きなども行って行きたい.
小関 俊夫(船形山のブナを守る会)

l         3年前にふれあいの森(遊々の森)の構想で年2回,スギの人工林で混交林にするため間伐作業を実施した.その結果,スギがかえって成長し広葉樹林が生育しなかった.

l         別の隣地で,枝打ち,間伐をしているが,スギを間伐しないと混交林にはならない.

l         最終的な森林の利用目的を明確にして管理する必要がある.山仕事をしているうちに仕事が面白くなってきて参加する人が多くなってきた.

l         作業は安全第一に間伐と笹刈りの2班に分けて行っている.笹刈りは最初はきれいに刈り取ってやったが,ブナは陰樹であるため,直射日光を受けて枯死してしまった.広葉樹がどんな順番でいくつ再生してくるか観察できて面白い.作業後も楽しい.

l         笹刈りをしながらブナがどのような生長をするか学習できる.
佐藤  守 (高山の原生林を守る会)

l         福島森林管理署の紹介で経営を中止した牧場で植林ボランテアを開始した.植林にあたっては,森林管理署とJAの協力もあり実施している.

l         今年度は東大巓の湿原植生回復事業にもボランテア参加した.

l         いずれもそこにある植物の遺伝資源をかく乱しないように注意を払って,今後とも継続していきたい.

議論と意見

l         山火事の多いところでは,防火帯として,部分的な帯状間伐を行ってきた.部分的な間伐は猛禽類のエサ場確保にも有効.

l         ボランテアは勿論,大事であるがこれまでにしてきた林野庁の責任も自覚してもらう必要がある.

l         どこをどうすれば森が回復するか,グランドデザインを明らかにしてもらう必要がある.

l         樹木はサイクルがある.先行樹種があってブナに至るので最初からブナを植えても仕方がない.

l         人工林は小林班ごとに将来方針を明確にする必要がある.営林署で小林班ごとに状況を明確にして公表する必要があるのではないか.

l         樹種が分からない職員も多い.今は職員が少ないので現地を把握しているか不安なところがあるが,5年に1回は航空写真を撮影して確認している.

l         現在は職員レベルで意識改革できない部分もある.現在の林野庁職員は木を切る技術はあるが森を再生する技術はないのでは.

l         平間:環境マネジメントの基本は上流域と下流域をどのように結合するか.

l         RITで100年後の地球をどうするのか検討している.自給率18%の木材需要をどうするか.

l         森の再生は人手と金がかかることを認識しなければならない.

l         林野庁は森林の広域的機能重視に転換したが木材生産をしないと言うことではない.

l         人工林はコストが追いつかないので帯状間伐を適宜実施している.

l         拡大造林で一斉に実施するノウハウと異なり,自然林の再生については手探り状態というのが正直なところ.

l         仙台森林管理署108林班にスギと広葉樹の美しい混交林がある.

l         間伐材は売れないのが実態だが,その活用法の開発が課題.運搬方法も含めて.

l         ブナ林を人工林にして木材をどうあつかうかをきちんと考えられていないのではないか.利用方法が見つからないのではないか

l         今放置されている間伐材は予算の関係だけなのか.(実態はその通りです.=森林管理局)

l         制度的に工夫すれば民間団体に売り払うことは可能ではないかと思っている.

l         制度的には立木で刈った木は搬出しないで6ヶ月経過すると国に戻る.現在は権利関係まではボランテア団体との契約には盛り込まないことにしている.

l         利用の計画がきちんとしていないと問題になる.曲がった材も昔は橋の材料として貴重であった.

l         最近の国有林白書を見ていると間伐材利用の実例が大分掲載されている.特に山形の事例が多い.

l         ダムは水を通した方がいい.これはコンクリートダムでは不可能だが木材で作れば可能となる.

l         砂防ダムの寿命を何年と見ているのか.20年と見ているのでは.木材でも100年はもつ.

l         構造物としての寿命はコンクリートが当然長いが,木材はコンクリートと同様の機能を維持した上で同様の寿命が確保されるのか.

l         実態として砂防ダムは20年程度の寿命が確保されればいいのではないか.砂防ダムの目的は最終的には植生回復であって.回復したときに木材の方が撤去の労力がかからない.

l         砂防ダムでは,このようなルールつくりがされていないのでは.

l         原生林の定義が自然林になったりするが,どれが正しいのか良く分からない.

l         人工林との境い目の今までの解釈を改める必要がある.

l         不在存地主の存在は里山の有効利用を考えると問題.法的な整備が必要.

 

第二分科会―「人と自然との関わり」(環境教育・登山道・産廃問題)

                コーデネイーター 佐久間憲生 (出羽三山の自然を守る会) 

発表者  横田 清美(福島県自然保護協会)

        鬼多見 賢(福島県自然保護協会)

          村上   克恭 (岳温泉文化協会)

     奥田  博 (高山の原生林を守る会)

     戸沢  章 (日本野鳥の会いわき支部)

横田 清美(福島県自然保護協会)

環境教育について

l         改めて環境教育を考えると、体系化されていないのが実態.

l         「日本型環境教育の提案」では「環境問題に関心を持ち、知識、技術、実行力を持った人を育てること」とある.環境保護教育なら分かりやすかった.

l         学校環境ということで、外来種を植えたり、錦鯉を放したり、護岸工事したりで誤った教育.

l         自然保護に結びつかない「名前だけ」とか怪しい「森の案内人」や「エコガイド」4人で600人の高校生を引率してエコツーリズム.

l         人気のある尾瀬、安達太良山、裏磐梯などを自称「エコガイド」,「自然保護ガイド」が仕事とすることが多い.

l         学校に正しい指導者がいないことが問題ではないか.

 

鬼多見 賢(福島県自然保護協会)

鳥類の餌付け

l         「白鳥を守る会」とかで餌付けをしているが、本当に役立っているか.

l         白鳥は風や雪のない、動植物を求めていくが、鳥にも自分で捕食する能力をつけることが大事.

l         生態系の乱れで帰れなくなる、糞が臭い等の鳥自信の問題が発生している.

l         いき過ぎた餌付け、偏った餌付け、異物(農薬など)による遺伝子への影響=>伝染病の発生を誘発する恐れがある.

 

村上 克恭 (岳温泉文化協会)

安達太良山の登山道現況

l         安達太良山は登山口やくろがね小屋に温泉があり人気が高い.

l         特にゴンドラで運ばれる奥岳口の人気が高く、オーバーユース状態.吾妻・磐梯に比べてヒドイ.

l         登山道の洗堀溝が出来た状態に対して木道を設置.

l         勢至平は昔,閉鎖したが、植物が回復していることを確認することができた.

 

奥田  博 (高山の原生林を守る会)

登山者問題

l         昔は大規模開発でしたが、今は個人破壊が問題.

l         現在は中高年登山ブーム.特にバスを連ねてやってくる集団登山が大きな問題.

l         自然を体験することはイイコトだが、オーバーユースは自然へのダメージが大きい.

l         先の自然教育者:正しい指導者がいない.

l         登山者の発する問題は、登山道拡幅、湿原破壊、植物の踏付け、トイレ問題、ペット犬連れ、盗掘.

 

戸沢  章 (日本野鳥の会いわき支部)

いわき市水源地の産業廃棄物処理場問題

l         我々の狙いは人間、それも子孫の命を守ることだ.ダイオキシン分析費用は非常に高く(1検体当り15万円程度)厳しい財政状況.現在、高等裁判所の判決待ち.いわき市の水源地に産業廃棄物処理場を建設する秘密裏に計画が推進されていた.

l         小野町で処分場のオープン時には北海道から九州までの参加者があった.処分業者と小野町との契約内容を見ると杜撰な内容であった.

l         問題が起きた場合には、しかるべき処置を取る.トラックは密閉されていることと記述されている(実際には守られていない)等、いい加減な管理がなされている.

l         水溜りが発生している等不可解な問題が発生している.

l         一般住民の意識が希薄であるこそ問題だ.

 

議論

1)             環境教育について

l         Aさん)野外体験を企画して小中高学生1000人程度の参加を見た.ミツバチ生態にとどまり、環境教育まで話が及ばない.花と蜂の関係の先に環境があるが、そこまで(ブナ林の保護)話をもっていけない.

l         Bさん)環境の概念は複雑であるが、環境という言葉を掲げない、振りかざさないでいいのではないか.自然破壊を理解した人をどう育てるかは確かに大事だ.

その方策については、後の話でヒントがあった.

l         Cさん)福島県森の案内人だが、オーバーユースに関して何か対策があるか.

l         Dさん)産廃施設反対で環境を考える会を設立したが、戦争が最大の環境破壊と言われた.子供には自然の楽しさを知らせることの方がいい.

l         Bさん)環境教育という言葉があらゆる世界で登場している.学校教育(総合学習)でも取上げられるに至り、関わり方が単なる体験に留まってはいないか.環境を大事にというのが、清掃等に矮小化されてしまう.もっとグローバルな視点が必要ではないか.人間性に関わる教育であり、学校教育を根本的に考え直していきたい.

l         Eさん)環境教育は広範囲だ.私に出来ることは自然観察を通じて、老若男女に伝えること.幼稚園児と高齢者ではアプローチ方法は異なる.臭いや紙芝居、高学年になれば名前や調査・実験などを行っていく.その中でリーダーを育成することが大事だ.こなす授業ではなく、伝わる授業が大切だ.

 

2)             鳥の餌付け

l         Fさん)白鳥の飛来地が限定して、鳥の群れの集中化が起きているのはなぜか.

l         鬼多見)古い文献では1万羽の群れだったが、今は10万羽を超える状態.これは餌付けの影響.群れた方が安全であること.

l         Gさん)餌付けは餌不足のせいではないのか.

l         鬼多見)現実には餌不足問題はあるが、カモなどの動物をエサにする.

 

3)             山のオーバーユース

l         Hさん)八甲田の集団登山自粛があったが、同じ動きがあるのか.

l   佐藤)これに関しては青森県教育委員会から集団登山自粛を通達して実現している.

l   月山登山道整備については、上部は木道を設置、下部は石畳を敷く.

l   田中)八甲田の石垣は植生復元用でヤナギを植えたが?木道も水の流れを止めて作らないとダメだ.八甲田の裸地化調査で大量登山によることが明白.

l   Dさん)木道や砂利道を敷くとパンプスでも登れてしまう.道を良くするとまた大量登山が発生する.オーバーユースの人数定義は?

l   村上)雨の集団登山はダメージが大きい.泥沼化した道を歩くと道を削る原因だ.

l   村上)登山の前に教育

l   瀬川:福島森林管理署)道の設計に問題がある.

 

環境教育

l         横田)自然観察会の場としての有効性、「自然観察技術」は確立されていないと思う.里山で観察をすると自然の抱える問題が見えてくる.綺麗な個所だけに目が行っている.

l         星)自然保護教育の視点に立った観察会を行ってきた.Conservational EducationからEnvironment Educationに変化して文部省がこちらに飛びついた.そういう意味で環境教育は自然保護教育とは内容が乖離しているのが実情であると思う.

l         小林)自然観察会では子供たちに理解されたとしても、「保護」という観点では子供や一般者とは意識の乖離があることを感じる.残念だが、一般の人に分かってもらうことは非常に難しい.今後は地域の方々に知ってもらうことが大切.「綺麗な花」で終わってしまう観察会ではダメだ.

l         山内)福島市の奥にクマガイソウの群落地がある.水原の自然を守る会という団体が、今年「クマガイソウ祭」を開催した.山を切り崩し、道は広く造り、それによって他の貴重植物が破壊された実情がある.現場では鉄条網が張られ異常な場所であった.祭では山野草が売られていた.これが一見,自然保護団体のような団体の意識レベルの実情だ.

l         星)アツモリソウの観察問題は盗掘対策として公開した経緯がある.補助金を受けて行ったものだ.公開するための覚悟はお話した.野生生物保護条例の制定で罰則規定ができるが、大人に対する環境教育が必要だ.

l         Jさん)水原の近くにザゼンソウがあるが「クマガイソウ」のようにオープンにはしたくない(オープンにしなくて、保護する).自然愛好会、山野草を愛する会などの意識は開発志向だ.産廃場問題でも身近な問題として意識が薄いことが問題だ.しかし意識すればするほど、自分の生活が出来なくなってしまう.生活環境や将来の子供や老人問題など様々な課題が里山から見えてくる.

l         子供・大人を観察会に連れて歩くと、山の水を飲む、ヘビイチゴを食べる、ヘビを観察する等をすると、側にいるオバサンが汚い、危ないという.自然に対する恐れとは「無知」なこと.地道に地元でそんな活動を続けることが大切だ.

l         蜂によって年間40名程度が死んでいる.ヘビによっての死亡は起こっていないが、大きな機能障害を残す可能性がある.水を飲むにも上流の状況を確認して飲む用心はあってもいい.何か事故が起きると観察会に来なくなることにつながることが問題だ.

l         佐久間)自然保護に結びつく自然観察、環境教育という概念、自然を大切にするという行動は、気付いたときから始めていくということが必要ではないか.大上段に構えないで取組むことが必要ではないか.

 

餌付け

l         戸沢)白鳥の餌付けは基本的に反対だ.しかし最小限の餌付けは必要悪であるかと考える.

l         佐久間)私の町では餌付けをしているが、隣の町では沼が結氷した時に限り、餌付けをしている.

l         Kさん)周囲の田んぼにマコモを小学生が植えている活動がある.休耕田を活用した事例はあるか.

l         Lさん)田んぼに水を張って餌付けはしていないで、白鳥を飛来させている.北海道の流氷・探鳥会ツアーに参加して多くのオジロワシやホオジロを観察した.しかしそれは漁船が魚を撒き散らして鳥を集めているという背景を知って驚いた.シマフクロウもしかりだった.人を集めるための餌付けは言語道断だ.

l         瀬川)北上でも餌付けをしている.彼等(鳥)は賢くて、安全に対しては敏感だ.鳥と人はかつては信頼関係で結ばれていた.今は、そんな関係を子供などに伝えることこそ大切だ.餌付け100%悪ではない.

l         給餌は必ずしも悪ではない.必要最小限の給餌は必要だ.

 

登山道問題

l         関口)登山道問題は、オーバーユースやストック問題もあるが、登山道を整備する側にも問題がある.馬場谷地でのくい打ち問題、月山の登山道造りに見られる木道至上主義、はいずれも森林管理局側の問題だ.トラロープを張る等,自然に優しい方法があるのではないか.

l         月山道を走っていると、高圧線の下が伐採されているのを目にしたので、環境庁に説明を求めたら東北電力との取交し事項とのこと.電力側は以前から行っていたのが、今後は考慮するとの回答.

l         高倉)東北森林管理局の者です.馬場谷地のその後を報告したい.山形大学の青柳先生とモニタリング調査を行った.馬場谷地湿原とそこまでの歩道を行っているが、どちらも良い方向に向かっている.打たれた杭については、6年間そのままにしておくこととしている.送電線の下の伐採は土が見える程だったというが、事実関係を調べたい.

l         高倉)トイレ問題については、白神(秋田側)周辺には5箇所のバイオトイレを設置している.山頂にはお薦めだ.犬連れ問題は頭を悩ましている.協力してもらうしかない.

l         犬問題はペットのオーバーユースだ.登山規制は今後必要だろう.観光ビジネスの確立している場所では困難だが、ペットは止めることも可能だ.

l         洗堀溝の道のような事例は、今後ゴンドラなどを建設しないことが必要だ.

l         佐久間)必要の無い場所まで木道が造られることも散見される.地域で密着した活動が必用ではないか.

l         瀬川)農業基盤整備補助事業で里山の自然が失われている.これは全国レベルの問題である.

  

第三分科会―「公共事業を考える」(林道・リゾート開発・ダム)

                コーデネイーター 東瀬 紘一 (博士山ブナ林を守る会)

発表者 望月 達也 (花巻のブナ原生林に守られる市民の会)

早地峰地域の保護と利用に関する提言

l         早地峰山頂のトイレ問題については県からTSS方式のバイオトイレ設置の提言があり、検討している.

l         携帯トイレの普及推進キャンペーンを行う(名称:マイボトラーズ).

簗川ダムの必要性を考える

l         市民NGO団体が活動して簗川ダム建設の反対運動が少しずつ市民権をえてきた.

l         動物用の横断歩道を造れないかと道路管理者に提案、(動物の足跡等のマーキング)

l         行政に対する提案が少しずつ受け入れられている.

Q ダムの工事主体は?

A 盛岡市 

l         鶴岡市では今も月山ダムの広域水道の負担が続いている.

l         洪水対策としてのダムと言うが被害想定は近年のことなのか昔からなのか?
高橋 淳一(高山の原生林を守る会)

公共事業とリゾート開発

l         福島の現状を報告すると首都圏からの距離の関係でリゾート開発が盛ん.磐梯山周辺、博士山、吾妻、いわき等

l         現状はレジャーの多様性で経営状況が悪化し破綻する所も出てきた.アルツは950億円の負債で民事再生、再建中.箕輪は5000億円の債務で再建中.

l         経営悪化の建物施設等は維持管理が難しく、地域自治体のお荷物になってくるのではと懸念される.

l         飯豊山麓リゾート計画では、見直しをして身の丈にあった開発を行っている

Q 高山の原生林を守る会の活動は

A スキー場計画は凍結中で観察会を中心にした啓蒙.ダム上流の鳩峰牧場の自然林復帰植林活動.

登山道の整備ボランティア.

l         ヨーロッパ形グリーンツーリズムを推進してはどうか(滞在型農業体験など).

l         経験者の話で、街作りは100年単位で計画しないとうまくいかない
菅  敬浩(博士山ブナ林を守る会)

博士山林道訴訟

l         住民訴訟の林道問題は1審敗訴、2審係争中.原告の適格性があるか.門前払いになる可能性が大きいので住民訴訟とした.

l         1審の敗訴理由は,公金支出の違法性,費用対効果、裁量権の範囲.

l         林道は公の施設か?詭弁でかわされる、使える法律(武器)が少ない

l         環境アセスメント義務違反.アセスをそのまま追認、裁判官の無理解が大きい・

発言

l         質問ではないが、三陸の北の浜でゴルフ場の被害.被害の状況がはっきりしなければ対応できないとの裁判の結果があった

 

早地峰のトイレ問題

l         早地峰に限らず磐梯山、富士山、屋久島等広範囲の問題である.携帯トイレも最近は手に入りやすくなってきた反面、現在の携帯トイレは使い捨てなのでその後の処理の面で疑問点もある.

l         早地峰ではバイオトイレまで必要か、試行錯誤している、携帯トイレについては,回収ボックスを設置しているが出来るだけ持ち帰るよう要望している

ダム問題

l         昨年の大会で観察したダムは着工しました.ホタルの営巣地が危ない状況.鳴子峡の水がせき止められるので鳴子温泉とタイアップもしたい.

l         受益者負担の詳細が知らされず工事が着工されてしまう.住民理解のため情報提供が必要.

l         山形では、ほ場整備の中止が多くなっている、市民団体が声を上げれば行政も聞く耳を持っている(歓迎している面もある).着工前(計画段階)で行動を起こすことが重要.

l         開発側は量より質(安全な水)を考えている.反対する場合もそこを十分考慮しなければならない.

l         ワークショップで幾つかのシナリオを市民に提案してみることもよいのではないか.

 

リゾート開発

l         岩手の安比は身売りし、周辺のペンションも休業状態.

l         山形の例ではスキー場は身売りしゴルフ場のみの経営、宿泊施設はケア施設などが考えられている

l         鳥海山の麓、遊佐町では生協(首都圏)とタイアップして自然の良さも理解して貰う取り組みがある.

l         グリーンツーリズムという言葉に踊らされないようにしたい

 

林道問題

l         裁判の勝ち負けではなく、裁判はひとつの手段として様々な面(手段)から考えていかなければならい.

l         地域だけでなく他の保護団体や地域等も巻き込むのも一案.

 

◎各自まとめの意見

l         土地改良区の体質改善が必要ではないか.

l         受益者負担(水道料金の跳ね返り等)の広い理解が必要.

l         森林計画が出た段階で反論をしていくのが大事.

l         工事を止めるには着工前に声を大にしよう(言い方は悪いがお祭り騒ぎのようにしていく).