第161回自然観察会:十万劫自然林陽だまり観察会

18.11.23()

 

十万劫山(429m)
多くの人々で賑わう花見山の陰にどっしりと構え、標高の割に貫録がある歴史ある名山である。この山は、風神、雷神を始め多くの神様が祭られており、かつては地元の人々にとって雨乞いの山であった。現在はハイキングコースとして親しまれている。
 十万劫の名前の由来
 今から1300年ほど前、名僧行基が仏教の普及と勧進のため陸奥に向い、この山で一夜をとったとき、周りの雄大な絶景に「この地は聖地なり、永劫に鎮まり慈悲を垂れ給え」と、背負ってきた地蔵尊を老木の根元に安置したことによると伝えられている。
※劫:一つの宇宙が誕生し消滅するまでの期間。非常に長い期間(観察会資料より抜粋)

小雨混じりの中

皆で観察

ナガバノコウヤボウキ

オケラ

 

 

  アカマツとコナラの混交林ですが、里山の歴史を感じさせるポイントが随所で見られました。

   第161回自然観察会:十万劫自然林陽だまり観察会に参加して    佐藤昌子

11月23日、今年一番の冷え込みの中、朝7時に花見山大駐車場に16名が寒さと雨対策のウエアに身を包み集合しました。その後、スタート地点の峠まで守さんと奥田さんの車2台に分乗させて頂き移動しました。
 さて、いよいよ観察開始ですが、歩き出し早々にアオダモの観察から始まりナガバノコウヤボウキの説明では驚きの事実を目にしました。というのは1年目と2年目が全く異なる外観(葉の形、枝の姿)でとても同じ植物には思えない姿だったのです。他にはウワズミザクラの成長と共に変化する木肌や落枝痕についても教えて頂きました。途中でアオダモの豆の様な種子も観察出来ました。オヤリハグマとオクモミジハグマは仲良く並び、まるで「私達を見比べて!」と話しかけているようです。ムラサキシキブの紫の実、サルトリイバラの赤い実、ワインレッドのオトコヨウゾメ。また、真っ赤なヤマウルシと晩秋の里山の紅葉を十分に楽しめました。更に、タンポポの様なセンボンヤリ、薬草のセンブリ、ドライフラワーみたいなオケラ等、次から次へ観察が途切れません。 
 カエデの種類も多く、それぞれの特徴の説明を受けますが、奥が深すぎて私はギブアップの状態でした。時には、太陽の日差しを受けたクサゴケの伸びた胞子体が美しく光ります。モジゴケの名前の由来が文字のように見えるからと聞き、早速ルーペで観察したところ、黒い線状の物が有り確かに文字の様に見えました。しかし、モジゴケがコケ類ではない事にビックリでした。時折降るみぞれ交じりの雨が冷たく、みんなで歩こう!と声が掛かるも、すぐに立ち止まり、これって何だっけ?の連続でした。
 山頂では、全員で記念撮影を行い午後からの総会に備えすぐに下山となりました。登山道からは千貫森や天井山が見え、晴れ間には眼下に阿武隈川の川面がキラキラ光り、自然を感じるには最高のロケーションでした。
今回の観察会に参加して、私の生まれ育った渡利がこんなにも自然に恵まれた素晴らしい所である事を知り嬉しくなりました。

 161回自然観察会:十万劫自然林陽だまり観察会に参加して 土井 昇
 

もの凄い速度で花見山に715分前に到着したものの道に迷っているうち駐車場らしき所に車が沢山集まっているのを発見。無事定刻に「守る会」の方々お目にかかれました。どこから?お年は?何時に出てきたの?その自然さに、私も次々答えていき、なんだか楽しくなってきました。普通の会話をしているのに今まで生きて来たことを労って声を掛けてもらっているようなのです。相手に思いをはせる心の奥行きを感じ、同世代であることも手伝って、良好なスタートとなりました。

 おしゃれで充実した資料をもらって、しぐれ始めた森に入っていくと、早速森の地衣類を見ながらアオダモの話。種子もさわれます。「道は着られると風が入るので陽を好む樹を植えたと言うけれど、実は日の当たる方に伸びただけ」と樹の性質に触れて佐藤守さんが述べられました。なる程そんなふうに視るものかと納得し、進みます。ウワミズザクラは須賀川でもよく見られますが、伐採されて、線路際や道端のものは今年かなりなくなりました。そんなことをしなくとも、自ら傷痕を残して枝を落としているのに・・・。ナガバノコウヤボウキは、1年目と2年目で葉の形が異なり、幼形の1年目は丸みがかって鋸歯は上(先端方向)半分位、2年目になると葉は細長く葉柄近くまで、そうなって大人となり、花が咲くらしいのです。見渡せばここら一面に仲間がたくさんいるのに気づきました。名を知り、営みをイメージするとあちらこちらの植物が一つ一つの生命として立ち上がって来ます。私の頭の中で森の時間が流れ出した瞬間でした。ここは通り道や風景ではなくなって、足元の植物たちの呼吸や微細な動きが私の足や皮膚を揺らしているかのような感覚が起き「あっ、こうした生き物たちの暮らしている場所にお邪魔しているんだなあ」としみじみした感慨にひたることが出来ました。先に進むにつれて、益々その感じが広がっていきました。

 山からの眺望も楽しんで、お昼。急いだせいで昼食を持たずに来たのですが、おにぎり一つならと差し入れていただいているうちに、いきなり寿司、漬物、サラダ・・・瞬く間に眼の前はバイキング!心の中で唾を垂らして有難くおいしくいただきました。?、実際に口から垂れていたですって?恐るべき自然観察ならぬ人間観察。本当にごちそう様でした。

 午後の総会も大変きちんとしたもので感心させられました。放射能調査など一つ一つを疎かにせず積み上げて考察を続けてこられたことに頭が下がります。会計も厳格でした。また、奥田先生の山歩きのための「こまめに歩くこと」というアドバイスは、私のこの一年を振り返っても至言なり実感しました。それにしても、疲れが出てきて眠くなる頃におやつが何度か回って来たりするしかけもできており、何から何まで行き届いていました。

 まるでオセロゲーム?

どんな方たちかの不安も人を思いやる親しさに溶け

時雨の森の中も様々なことを知り、大切な感覚が生まれ

昼食がなく困っても食べ物が優しく提供され

総会中に疲れが出てもおやつをもらって話に加えていただき

・・・黒から白への反転。誰もが負けることなく、どの人にも良い流れとなる。まるで幸せなオセロゲームのようでした。ずっとこの活動を続け支えてこられた方々のご努力に深く感謝致します。そして、皆様に心からお礼申し上げます。

近頃、こんな刺激的で愉しい一日はなかったなあ、と思い起こしながら、須賀川への帰途、なんともいえない幸福な気持ちがずっとずっと続いていました。

今でもまだ続いています(「よたかの星」風に)。(201913日記)

ミノムシ

ムラサキシキブ

 ヤマウルシ

モジゴケ