第144回観察会〜安達太良・仏沢ブナ林雪上観察会

16.2.28()

 

228日(日)に第144回観察会〜安達太良・仏沢ブナ林雪上観察会を行いました。参加者は15名でした。昨年と同じコースですが、今回は、出発前の珍事により、昨年の観察会では辿り着くことがかなわなかったブナ林の散策が目的です。予報は曇りでしたが風もなく、時々陽ざしが差し込む穏やかな天候となりました。例年ですとこの時期はまだまだ厳冬期ですが、今年はまれにみる暖冬で昨年の観察会より1月近く早いにも関わらず積雪は、1mぐらいは少ないようです。前日に降雪があったのでふかふかの心地よい雪中散策を期待しましたが、季節外れの暖気で水分を多く含んだ重い雪にスキーが沈み込み、一足に力が入ります。雪面ではヒメネズミやノウサギ、ホンドキツネなどのフィールドサインがみられ、セッケイカワゲラ(クロカワゲラ)も姿を見せてくれました。このカワゲラよりも大型で翅を備えた同類と思われるユキムシも一緒です。

今回の観察のポイントはコシアブラとタカノツメの冬芽の識別でした。芽だけの観察では曖昧でしたが、枝を切って髄を観察すると髄には隔壁のある空洞が確認され、コシアブラであることが分かりました。昨年、ウサギのような花芽が多くみられたオオカメノキはなかなか花芽が見つかりません。昨年の終了地点を超えて平坦な斜面を進むとミズナラの2次林が切れ、見通しの良い広場に出ました。その先には多くの枝を伸ばしケヤキの様にシンメトリックで美しい姿を備えたブナが現れました。今回の目的地です。

 

ミズナラ2次林の緩斜面を登って

クロカワゲラの仲間、あなたは誰?

クロカワゲラ
(セッケイカワゲラ)

ナナカマド

 

リョウブの果実をルーペで観察

ホンドギツネ

 複数の樹のシンメトリー

ヒメネズミの
フィールドサイン

懺悔の春待つ山歩き     長岡義人

今日は閏年の二月二十九日。自室の窓からどんより曇った暗い空を眺めながら、ボーっと昨日の楽しかった山行を思い出している。天気予報はこれから雨が降り気温も下がって、穏やかな昨日とは打って変わり、大荒れの冬型の気圧配置になるそうだ。

さてここで私は、昨日一緒に同行してくれた十四人の皆さんに、懺悔しなければならない。高山の原生林を守る会主催の、第144回自然観察会「安達太良、仏沢尾根の冬芽の観察をしよう」の山行に参加するに当たり、私の動機が大変不純であったことをここに告白いたします。計画書を見てまず思ったことは、前回参加させていただいた霊山で、咲き誇っていた可憐な花々を観賞するのなら、まだ喜びの興奮もあるだろうが、木々の花芽を見て何が面白いのだろう、ましてや葉にも芽があると聞いても全く興味は湧かなかった。だが、気の進まぬ私の気持ちが妻の一言で俄然沸き立つことになった。「山での昼ごはん、またすごいのかなぁ」。それを聞いた我が心に、あの霊山での和洋中の沢山のメニューの豪華なランチが浮かんだ。私は告白します。この観察会に参加した一番の目的は、樹木の冬芽の観察なんかではありませんでした。あの豪華なランチにつられたのです。私は妻が前の晩から明日のためにと一生懸命作っていた弁当には、何の期待もしていませんでした。会員の皆さん、並びにわが妻よ本当に申し訳ありませんでした。ゴメンナサイ。 

さて観察会当日の2月28日、参加者15名は7時30分に四季の里駐車場に集合して、3台の車に分乗させていただき、昨晩降った雪が凍結した土湯峠をスリップしながら越えて、高森川林道入り口駐車場に到着した。そこでスノーシューを付けたのだが、なにしろはじめての経験、どう着けたらいいのか全く分からない。第一その前に付けるスパッツでさえ前後、左右、上下の区別もつかない。会員の皆さんに手伝ってもらいながらなんとか一応形がついたように見えたのだが、心は不安でいっぱい、参加したことに後悔しきりであった。私が余程心細い顔を見せたのか、「今日はテレテレ歩いて木を見るだけだから」という言葉をかけられた。確か前回の霊山の時はダラダラ歩くだけとの説明を受けたのだが、今回はテレテレ歩き、「おいテレテレ歩くというのは、ダラダラ歩くのとどっちが楽なんだ。前回のダラダラ歩きの山登りは、俺には随分苦しかったぞ」と妻に囁くと、なにを言ってることやらこの人はという、バカにしたような目で睨まれてしまった。 

さあいよいよ初めての雪山経験。スノーシューを着けて、自分で自分の足を踏まないように、緊張しながら歩きはじめた途端、いきなり雪に埋もれた橋に出くわした。その高さはかなりある。これを渡るのには結構度胸がいる。怖い。スコップで橋のたもとまで道を造ってくれているし、妻は平気で先に進むし、ここで自分だけ帰るとはとても言えない。そんな追い詰められた気持ちになり、エイッヤッとやけっぱちで雪の橋を渡った。

二月は私の大好きな季節だ。厳冬期が過ぎたこの時節の雑木林は、遠くから眺めるととても美しい。だがそんな雑木林も近くで見ては、寂しくなるだけだと想像していたのだが、いざその懐に分け入ってみると、そこは、陽の光が優しく雪面を輝かせ、優雅に木々を照らし、もうすぐ春が来るぞと希望の力を伝えてくれているようだった。 

オオカメノキ(ムシカリ)の冬の芽は、まるで幼児が両手を挙げて万歳をしているような、可憐な姿をみせてくれ、ルーペで覗いたタムシバの芽は、上品な優雅さを湛えていた。そしてその小枝を噛むと爽やかな味と香りが口中に広がり。きっとこれらの芽たちは、木々の枝の先で苞に包まれ、じっと冬をやり過ごしながら、春を待ちわびていたのだろう、なんだか木々たちから頑張れよと声を掛けられたような気分だった。 

雪面に残された小動物の足跡(ヒメネズミ・ウサギ・キツネ)、木の皮につけられたクマのツメ痕、ウサギのオレンジ色のオシッコ、そしてそれがジャムの様な甘い匂いがする等々すべて皆さんに教えて頂いた。そうそうそれから忙しそうに雪の中を、出たり入ったりする雪虫の写真も撮りました。学んで知るということがこんなに楽しく嬉しい事なのだと、この年齢になってやっと知りました。感謝、感謝です。

タムシバの花芽は輝いていました

 ブナのフラクタル樹形

雪のテーブルを囲んで豪華な昼食

       
 食べきれない昼食  エゾゼミのミイラ  この爪痕はまだ新鮮  穿孔性鱗翅目?

 

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