121回鹿狼山自然林観察会12.04.08()

 

 

 

 

 

ニッコウネコノメソウ

ニッコウネコノメソウの群落

 ネコノメソウ

クモノスシダ

4月8日鹿狼山観察会に参加して 伊賀和子(南相馬市在住)

 
 
「高山の原生林を守る会」の観察会に参加するのは本当に久しぶりでした。鹿狼山は地元といってもいいくらいの距離にありますが、なかなか登るチャンスのない山でもあります。震災で一年遅れになってしまいましたが、昨年予定されていた観察会の時からとても楽しみにしておりました。鹿狼山に最初に登ったのは小学6年生の時で、その時にくらべるとずいぶん整備されて都会の山になったみたいな印象です。当時は山麓は萱場になっていましたから、萱屋根がなくなって萱場の必要がなくなり、遷移が進み林になったり、杉の植林がなされたりしたのですね。それでも頂上直下にコナラなどの大木が残っているのはうれしいことでした。
 
 さて、今回は鹿狼山で見たネコノメソウ属について話したいと思います。観察会が始まってまもなく進行方向左側の沢筋に砂防堰があり、そこで「ヨゴレネコノメ」を観察しました。撮影なさった方もたくさんいらっしゃいましたね。この「ヨゴレネコノメ」を「ニッコウネコノメソウ」に訂正願います。これまで相双地区では鹿狼山で見たあのネコノメソウ属は「ヨゴレネコノメ」と記載されてきました。しかし、たまたまですが、鹿狼山登山の直前に私がインターネットに投稿した写真をご覧になった方から「ニッコウネコノメソウでは?」という指摘がありました。そこでいろいろな図鑑にあたってみましたら、ニッコウネコノメソウの方が正しいという結論にいたりました。

◎ ニッコウネコノメソウの特徴
雄蕊は普通8本で花時は萼裂片より高くなる。2.葯が暗赤色 3.萼裂片は黄緑色あるいは黄色。4.開花時の萼裂片は斜め上に開く。もしくは平開する。5.分布は本州(東北地方南部から中部地方)、四国でおもに太平洋側の半日陰、沢筋など湿った場所。図鑑の分布では東北地方南部となっておりますが、観察会に参加された瀬川さんによりますと岩手県一関市でも確認されたそうです。

◎ ヨゴレネコノメの特徴
雄蕊は4本〜8本で花時は萼裂片より高くなるか同じ程度。2.葯は暗赤色。3.萼裂片は暗い赤褐色か緑色。4.開花時の萼裂片はほぼ直立で開かない。5.分布は本州(関東以西)から九州の太平洋側の山間の湿り気のある場所。

 「ニッコウネコノメソウでは?」と指摘くださった方によりますと、ヨゴレネコノメは東京の高尾山では足の踏み場がないくらいの群生だそうです。また現在、相馬市では新たな市史編纂に向けて様々な視点から調査をし、資料を収集、蓄積しているところですが、今回の植物調査ではニッコウネコノメソウとしてリストアップされています。

 

新地町、そして鹿狼山  (岩手・西和賀町)瀬川陽子

 

こんにちは。岩手県の西和賀町で、毎月1回観察会を主催しているカタクリの会の瀬川陽子です。

私の住んでいる西和賀町は、奥羽山脈の真ん中、秋田県の横手市に隣接する特別豪雪地帯。平成17年に湯田町と沢内村が合併し西和賀町になりました。高山の会の皆さんとは、18年前の『東北自然保護のつどい・男鹿大会』で知り合いました。あの時乳飲み子だった息子二人は、社会人となって働いています。その長い年月、高山の会のみなさんとお互いの観察会に参加して刺激を受けてきました。会報高山の小幡仁子さんの『鹿狼山から』のエッセイは、楽しみにしているコーナーの一つです。鹿狼山のカタクリはどんな風に咲いているのだろう。去年観察会に参加したいと思っていたのですが、大震災で行くことができませんでした。それで今年は早々とカレンダーに予定を書き、とても楽しみに出かけたのでした。


1 新地町にて

4月6日(土)まだ庭に1m以上の雪がある自宅を8時半に出て北上インターから高速に乗り、宮城県の富谷ジャンクションから常磐道を目指し、新地町の役場のある交差点に着いたのは1115分でした。(高速料は2,450円ほど)仁子さん宅におじゃまして昼食にし、それから震災後の海を案内してもらいました。

仁子さんは「海は怖い。震災後に行くのは初めて・・」と言われましたが、津波ですっかりなくなった新地駅にまず向かいました。「確かここに駅があった・・この道路は駅前の道だけど・・あ、どうなってたっけ。建物がないとよく思い出せない・・」とつぶやきながら歩く様子に、仁子さんの悲しみに張り裂けそうな胸の中が見えるようでした。
防波堤の大きなコンクリートが粉々に砕けむきだしになっている様子は、津波の大きさを物語っていました。枯れた木があって何だろう?とまじまじ見て赤松であることがわかりました。塩害で枯れたのでしょうか。また相馬漁港や市場などのがらんとし建物の中に入ったり、クジラの形をしていたという壊れたトイレも見ました。松川浦の松川浦大橋は素敵な吊り橋でしたが、この吊り橋に掴まって助かった命もあったとうかがいました。

松川浦の岩子漁港近くを走っていたら!大きな『丹下左膳之碑』・・なんだこりゃ?碑の裏の文字を読めば、平成元年にこの地域の方々が建てた様子。丹下は奥州相馬中村藩の出身とあり、ここで産湯をつかったの??仁子さんは何度もこの辺の民宿に泊まったけれども、この碑の存在は知らなかったそうです。記念撮影をパチリ。ネットで調べれば、丹下は架空の人物だよ。なんでここに碑が?福島の皆さん調べておくれ。松川浦でも津波に被災されていましたが、家は立派に修理されていました。海で暮らすと決めた方々の、潔さが感じられました。

そして仁子さんの実家にお邪魔させていただき、お庭にあるというマルバシャリンバイを見せていただいたのです。お父さんが庭石を組み立て小宇宙を作っておられ、そこの石垣に添うようにマルバシャリンバイが生えていました。庭づくり・植木はお父さんの25年来の趣味とか。ご病気で入院されたとき、仁子さんに植木の手入れを頼んだらすっかり伐られてしまったので「ずっと元気でいなくちゃダメだなぁ」と笑いながら話しておられました。

お祖父さんが二本松から新天地を求めて新地に住み、昭和初めから海岸沿いを田んぼにした話や、「仁子に勉強せ、と言ったことない」というエピソードなど、テープに録音して一冊の本にしたいような話がお聴きできたのは嬉しく思い出に残りました。その夜は仁子さん宅に泊めていただき、静かに夜は更けていきました。翌朝散歩したら、夫が「コジュケイが鳴いてる」と嬉しそうでした。西和賀にこの鳥はいませんから。


2 鹿狼山

 8時半頃に到着したら、もう数人がおみえでした。福島市内からの参加者も揃い、佐藤守さんのオリエンテーションで観察会はスタートしました。 肌寒い日でしたが、日当たりよい斜面にカタクリが咲いていました。私たちの花よりは色が淡く上品でした。今年一番に見た花として思い出のページに刻みました。

 途中「岩手と鹿狼山とどんなふうに自然が違いますか?」という質問を受けたのですが、一番は靴の違いです(笑)。私たちの歩く西和賀は長靴で歩くのがベスト。全体に湿っぽいのです。鹿狼山は乾いていて、長靴で来たことを悔やんだほどでした。その乾燥具合と150`程南であることが植生の違いを生んでいるのでしょう。見たことがなく歓声を上げたのはフサザクラ・イヌシデ・クマシデ・ネジキなどの木でした。

 スイセンの葉に似たナツズイセン。最初「野生のスイセンがある」と見ていたのですが、どうもスイセンじゃないようだ・・でも普段からスイセンの葉の匂いなど嗅いだこともなく、身近な自然をちゃんと観察することが大切なんだと感じました。 

 一緒に歩いていた伊賀さんが「この苔、ゲゲゲの鬼太郎の目玉おやじに似てるんですよ」というので、ルーペを取り出して「どれどれ?」直系2_位の翡翠色の丸い小さな玉に、レンズのような透明な目玉がついていました。それは「タマゴケ(玉苔)」という名前が付いているそうです。ほんと、星形をした葉から小さな球が飛び出していました。気をつければコースのあちこちにありました。

 ゆっくり観察しながら山頂についたのは1215分でした。 ずっと気になっていたのは、皆さんの背負っているザックの大きさ。鹿狼山は軽登山レベルなのに、何故大きなザックを背負っているのか。あの中には何が入っているのか? その答えは、手品のように出てくる昼食だったのでした。朝早くから起きて作ったおかずの数々に驚き、感謝の気持ちでいっぱいです。御馳走様でした。

 午後1時に登りとは別のコースを降りました。 どこかで見たことのある葉が芽を出していました。なんだか思い出せません。聞いたらホタルブクロというので、「あ!そうか。家にも園芸種があったじゃないか」身近な自然を丁寧に観察することの大切さをここでも感じたのです。

 3時位に下山し、まとめの挨拶。私はほとんどメモもせず「楽しい」と歩いただけでしたが、夫のメモに野鳥15種、つぼみも含んだ野草は20種記載されていました。ちょっとショック。

 『会報高山』の皆さんの感想文を楽しみに読んでいるのですが、じつは皆さん感想文を書くのは苦手なのだとか。「感想文を書く」ことになったときは、メモをしっかり取って説明を聞き漏らさないようにする・・と伺い、そのような心がけが会報を充実させているのだと感心したのです。

 観察会終了後は一路西和賀を目指し、夕方6時に自宅に到着したのでした。

 

 

 

 

 丹下左膳の碑 輪の中心にいるのは 陽子さんでした カタクリの花が間に合いました
       
タマゴケ(鬼太郎の父ではありません)  クマシデ(和賀には植生していません) 昼食のかたらい カタクリの葉が赤く萌えているのは

 

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