奥羽山脈花回廊(1)那須連峰・三本槍岳

                                        奥田 博

コース:大峠林道終点〜大峠〜三斗小屋温泉(泊)〜隠居倉〜三本槍岳〜大峠〜大峠林道

 江戸時代に、会津藩、白河藩、大田原藩の三藩が山頂に槍を立て、その境界を確認したことに由来するといわれる、那須連峰の最高峰三本槍岳。その中腹には、江戸時代には賑わっていたといわれる山の湯三斗小屋温泉がランプの宿として今も静かに営まれている。近年人気が高い会津側から入り、前夜は温泉に泊り、翌日は回遊コースで、山の花を存分に味わう山旅を。

  大峠林道終点から5分ほど進むと、大蛇伝説の鏡沼への分岐となる。そのまま、古い会津街道の石畳の面影を残す道を大峠まで登る。峠では、石仏が数体迎えてくれる。大峠は福島と栃木を分ける峠であるが、十字路にもなっている。ここから三本槍岳と大倉岳のへ道を分けている。峠から流石山までの斜面は、ニッコウキスゲやハクサンフウロ、アズマギクやウサギギクなどのお花畑となる。時間が許せば、訪れてみたいが、片道約1時間の距離である。

  峠からは、下り道となって森の中に入ってゆく。最初に出合う沢は峠沢と呼ばれ、意外に大きな流れだ。渡渉地点で水を補給しながら休むのがいいだろう。次第にダケカンバ、ミズナラ、ブナの立派な木が目立つようになる。その低木にはノリウツギ、クロモジ、ツルアジサイ、ウラジロヨウラク、タニウツギ、ハクサンシャクナゲなど花をつける木々が楽しめる。草木類では、マルバシモツケ、タケシマラン、ツクバネソウ、ミズヒキ、エンレイソウ、ツマトリソウ、ヤマオダマキなど森の中でこれらの花が目を楽しませてくれる。三斗小屋宿へと下る道を分けて、三斗小屋温泉へと向かう。紛らわしいので、間違えないこと。中ノ沢、赤岩沢を次々に渡渉するが、その度に急な下降と登高を繰り返す。この道はブナやミズナラなどの森歩きの間にも初夏のサラサドウダン、アズマシャクナゲなどの花々、サルやカモシカなどの動物に出合えたりと変化に富んでいる。ゆっくり歩いても2時間ほどで、今夜の宿である三斗小屋温泉に到着出来る。三斗小屋温泉には2軒の旅館が建っており、今宵の宿となる。

(参考タイム)林道終点(35分)大峠(1時間30分)三斗小屋温泉(泊) 

三斗小屋温泉裏手の温泉神社に手を合わせて歩き出す。ナナカマドやオオカメノキ、ダケカンバなどの喬木の中、オトギリソウ、タマガワホトトギス、シラタマノキ、エゾリンドウなどの花を足元に見ながらゆく。しばらく登ると、温泉源泉となる。モウモウと煙が立ち昇るさまは、迫力がある。これをやり過ごすと、かん木帯の急な登りにかかる。ピンクのホツツジが咲く道をたどれば、茶臼岳が目の前に現れる。茶臼岳の噴煙を眺めながら、展望の尾根を隠居倉へと向かう。マイヅルソウ、エゾリンドウ、タカネニガナ、トモエシオガマなどが足元に見られる。急な登りを登り切った隠居倉山頂では息を整えよう。

  大きな石組の道標とベンチも置かれた山頂からは、朝日岳の岩場が目の前に見える。ここから少し下って、再び緩い登りにかかる。この細い尾根は、草花が美しい。ヤマハハコ、ネバリノギラン、ハクサンチドリ、ツクバネソウ、ミヤマアキノキリンソウ、ヤマトリカブト、オオバキスミレ、シラネニンジン、ソバナ、ツルリンドウなど思わず見とれてしまう場所だ。写真を撮ったり、スケッチを描いたり、高山植物を楽しみたい。熊見曽根と呼ばれる岩山で、朝日岳方面からの道と合流する。高山植物を観察しながら、緩い尾根をたどる。土砂崩れ防止の杭の打込まれた階段状の道を降りると、清水平となる。遠くに緩いピークの三本槍岳が見えてくる。ガンコウランやクロマメノキ、ツルツゲやベニバナツクバネウツギなどの中を進む。道が幾重にも出来ているのは、登山者が歩き回った結果である。現在は、杭の打たれた道をたどるようにしたい。湿原にも木道が敷かれている。昔は田代池と呼ばれる池があったが、現在は枯れている。ハイマツに混じってシャクナゲやホツツジ、サラサドウダンなどのかん木の道をたどれば、やがて三本槍岳山頂到着となる。

 1等三角点の置かれた三本槍岳山頂からは、さえぎるものがない大展望が得られる。北には須立山の向こうに旭岳が素晴らしい。遠く吾妻から飯豊の連峰、目の前には流石山から三倉山が痩せた尾根を見せている。遠く日光の連山、帝釈山、燧ヶ岳、会越国境の山々が連なる。南方には噴煙たなびく茶臼岳から朝日岳など荒々しい風景が望まれる。山頂では、ゆっくりと展望を楽しみたい。

 山頂からは、大峠に向かって下山する。縦走路を北上すると大峠への分岐となる。西へ向かって鏡沼を見下ろす支尾根に入る。流石山から三倉山が痩せた尾根を正面に見ながら、足元の高山植物を楽しみながら下れば、やがて大峠へと戻ってくる。大峠からは林道終点には、すぐの距離である。

(参考タイム)三斗小屋温泉(1時間)隠居倉(20分)熊見曽根(15分)清水平(40分)三本槍岳(10分)大峠分岐(45分)大峠(30分)林道終点

エゾシオガマ

アマニュウ


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