奥羽山脈花回廊(3)笠ヶ森

            奥田 博

 笠のような形をした山容から付いた名前であろうか。特徴的な姿は、確かに目を引く。この山には登山口が2ヶ所あり、夫々の登山口が近いこともあり回遊することができる。アプローチはマイカーなどの車によるしかない。

 下の登山口に当たる側から歩き始める。登山口では早速コバギボウシが紫の美しい花で、向かえてくれた。直ぐに森の中を歩くようになる。夏の暑い季節に森の中を抜ける涼風が気持ちいい。下り気味の道をたどり、左手の沢の流れが次第に近づいて、それを渡ると、いよいよ本格的な登りとなる。足元には、セリの白い花が咲き、ヤマハギが登山道をふさぐように咲いている。その先の小さな湿地ぽい荒地にはカヤ類が見られた。

 杉の植林地を歩いていても、コバギボウシが点々と咲いているのが見られる。この花は明るい湿地に咲くといわれるが、暗い道の脇に咲いている。杉の人工林が終わると、見事なミズナラ、ブナ、アカマツ、カエデ類などの広葉樹林へと入る。急坂であるが、素晴らしい森を鑑賞しながら歩きたい。

 急坂が一服すると密生していた林床からスッキリとして見通しの効く林床になる。そこにはミズヒキが可憐に咲いている。上から見ると赤いが、下から眺めると白い。これが紅白の水引に見立てられるのだろう。暗い林にあって一服の涼風である。

 尾根を越えると、こんどは一旦下りの道となる。沢を越え、緩やかに下ると、上の登山口からの道に合流すれば、ここからは登りの道に変わる。

 道を少し登れば、伐採地と思われる一角に差し掛かる。ここではキンミズヒキの黄色が森に開けられた太陽の光を奪うように輝いている。ほんの50bほど、伐採によって太陽の光が入った結果育ったものだが、植物の勢いを感じてしまう。

 再び森の中を登れば、鶏峠に差し掛かるが、峠を表す道標も朽ちたままである。分水尾根では、オカトラノオの白い花が見られた。たくさんの花を付けていて虎の尾を形成しているが、ひとつひとつの花を見ると、サクラソウ科の花である事が納得できる可愛い白花だ。白花といえば、道を一杯白く花を散らせている場所に差し掛かった。上を見るまでもなく強い香りでリョウブの花と分かる。大きな木にたくさんの花を付けて、これは幸運としかいいようがない。

 山頂への道はロープの張られた急坂を急がずに登りたい。ここはカエデ類の紅葉が美しいところだ。やがて反射板の建つ山頂到着となる。山頂の展望は素晴らしく、安達太良山、磐梯山、吾妻連峰を始め、額取山、高旗山、そして阿武隈の山々まで見通せる。山頂には、ヤマハハコ、ノアザミ、ホタルブクロ、クルマバナ、オヤマボクチなどが咲いているが、西側は笹が密生しており花が見られないのが残念だ。

 先の合流地点までくだり、そこから左の道へと入る。沢を越えて杉の植林地を歩くが、単調である。やがて伐採地に飛び出すと、ヒヨドリソウ、メマツヨイグサ、など太陽の光の元で咲いている。この先は古い林道を歩くが、ミヤマヨメナ、ツユクサなどの野草が目を楽しませてくれる。やがて上の登山口へと到着する。ここから下の登山口までは林道を5分ほどの距離である。

キンミズヒキ

オカトラノオ

ノアザミ

アオダモ

ハナイカダ(♂)

ホウチャクソウ

ムラサキケマン

ムラサキヤシオ

ウリハダカエデ

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