奥羽山脈花回廊(4) 安達太良山         

                                    七宮 勝広

  奥岳登山口からの登山者は、圧倒的にゴンドラを利用して登る人が多い。烏川スキー場から五葉松平を経て、薬師岳山頂までの約一時間を約10分で運んでくれる。

  この機動力のせいか、山頂で観光客姿を見かける事もある。なんとも複雑な気持ちである。ゴンドラ駅を出ると広場があるので、そこで出発の準備をするのにちょうど良い。ピンク色のガクガクウラジロヨウラクに見送られながら、木の階段から出発となる。直ぐに分岐が現われ左が山頂、右が薬師岳へと向かう。時間があれば薬師岳からの展望を楽しむのも良いだろう。

  最初はハイマツとナナカマドの樹林帯の中を歩く。足元には、ゴゼンタチバナ、マイズルソウが咲いている。ハイマツからハクサンシャクナゲ、サラサドウダンに変わる頃、仙女平分岐に到着する。ガレ場の中にはシラネニンジンが咲いている。

 ここからは潅木帯になり展望が出てくる。急な登山道を登りつめると、大斜面の雪田に着く。まだ少し残雪が残っている雪田にはイワカガミ、ゴゼンタチバナ、アカモノ、マイズルソウ、ミツバオウレン、コメツヅジ、イソツツジ、ガンコウラン、クロマメノキ、ヒカゲノカズラ、ネバリノギラン、アカミノイヌツゲと豊富な植物が点在する。やがてガレ場帯を登り、目前のドーム状の岩場を登ると安達太良山頂である。山頂からは、360゜の展望が楽しめる。特に磐梯山方面は圧巻だろう。

  山頂からは、稜線を歩き矢筈ヶ森方面へ向かう。牛の背まで来ると噴火口の展望が見事である。風に乗った硫黄の臭いが鼻に刺すだろう。

  牛の背からは峰の辻へと向かう。途中の矢筈ヶ森の岩場には、ツガザクラ、コメバツガザクラ、が見られる。沢筋には、イワカガミ、ミネズオウ、ガクガクウラジロヨウラク、アカモノ、ミツバオウレン、モウセンゴケ、クロマメノキ、シラタマノキ、ガンコウランが見られ、峰の辻近くになると純白のオノエランが加わる。

  峰の辻は登山道の分岐点であり、休憩にもちょうど良い。ここからは東よりのトラバース道を勢至平へと向かう。篭山近くでは、ガクウラジロヨウラク、アカモノ、シラネニンジン、ネバリノギラン、ヒカゲノカズラ、アカモノ、ナナカマドが見られる。やがてシャクナゲの潅木帯となる。途中ヤエハクサンシャクナゲも見られ、ガクウラジロヨウラク、サラサドウダン、イソツツジの大群落を下ると勢至平分岐となる。

  勢至平分岐から5分ほど下り、休憩に良い広場に立ち寄ると、終りに近いがレンゲツツジの群落が見られた。その他イソツツジ、イワカガミ、ガクガクウラジロヨウラク、サラサドウダン、ミヤマホツツジも見られ、山頂との景観がよく写真を撮るには絶好の場所だ。

   勢至平からは、一気に急な下り坂となる。ダケカンバ、チシマザサそしてヒノキ林を下ると烏川の橋に着く。ここからは、このまま登山道を降りても、沢沿いの遊歩道を降りても20分ほどで奥岳登山口に到着する。

アカモノ

アルペン的な安達太良の稜線

ツガザクラ

戻る 花回廊目次へ