奥羽山脈花回廊(14) 那須連峰・赤面山
                                              
奧田 博

赤面山は那須連峰の主脈から離れた標高1701mの山である。この山頂へと登ると、短い標高差、短い登高時間(2時間程度)の中で手軽に垂直分布を体感することができる。山麓のブナ林、中腹のわい性化したブナやダケカンバ林、やがてかん木から高山帯へと移りかわる自然の様子が観察できる。また登山口から途中までは倒産したスキー場をたどるので、スキー場の自然破壊現場をつぶさに見ることもできる。

那須甲子有料道路のスキー場脇から歩き始める。赤土の中を登るが、潰れたスキー場ほど空しいことはない。両側にはブナ林が広がっているだけに、惜しいことをしたという気持ちがこみ上げる。スキー場には、道路脇に植えられたマーガレットが咲いている。ミヤマニガイチゴの白い花も、一面に咲いている。リフト2本分を歩き、やっとスキー場の強い太陽から逃れ、ブナの森に入る。すぐに、那須甲子少年自然の家への分岐となる。そんなに太いブナはないが、リズムを感じるブナ林だ。林床にはマイヅルソウが可憐に咲く。林の中には、ツルシキミ、ナナカマド、オオカメノキの飾り花や、ムラサキヤシオツツジのピンクが咲いている。タイミングが合えばハウチワカエデ、ミネカエデ、その根元に珍しいシャクジョウソウが見られる。

ブナからダケカンバの林にかわると、森林限界も近付き、アズマシャクナゲやヤマザクラ、サラサドウダン、ナナカマドなどの丈の低いかん木帯となる。ササ原を抜けると、岩のゴロゴロした山頂の一角に到着する。ネバリノギラン、オヤマリンドウ、イワオトギリソウ、ミヤマシャジンの花が楽しめるのはこの辺り。もう山頂は目の前である。

山頂からは、那須連峰が手にとるように眺められる。茶臼岳、朝日岳、三本槍岳、旭岳、甲子山、大白森山、二岐山、鎌房山など360度の展望が楽しめる。山頂付近は、高山の様相を呈しており、ハイマツに加えイワカガミ、コメバツガザクラ、コメツツジ、ミネズオウ、クロマメノキ、マルバシモツケ、ハクサンオミナエシ、シラネニンジンなどが見られる。

下りは、那須甲子少年自然の家への道をたどる。分岐からスキー場をかすめて、ブナ林の中を下っていく。ここはシロヤシオの花のトンネルを下るようになる。ブナ林の中にゴヨウツツジ(シロヤシオ)の花トンネルは、実に見事なプロムナードコースだ。ここは楽しみながら、ゆっくりとたどりたい。ミズラナ、ミヤマザクラ、ナツツバキなど多様な林の中の長い下りをたどる。途中、ナガバノコウヤボウキ、レンゲショウマ、ミヤマツチトリモチ等も観察できる。下山後は、堀川から林道を下り那須甲子有料道路に出るか、そのまま那須甲子少年自然の家まで歩くことになる。

コースタイム:赤面山スキー場跡登山口9:15−9:45第1リフト9:50−10:15リフト終点10:25−11:10山頂13:00−13:30分岐13:45−15:15林道ー15:25道路(堀川脇)

シャクジョウソウ

ハクサンオミナエシ

イワカガミ

シロヤシオ

コメバツガザクラ

マイヅルソウ

ミヤマシャジン

ミヤマツチトリモチ

ナガバノコウヤボウキ

オヤマリンドウ

シラネニンジン

ツルシキミ

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