東北ブナ紀行(8) 奥田 博

 森吉山は古くからの信仰の山である。中腹には大きな神社が建っており、山頂にもその面影が残っている。山頂直下の西側はオオシラビソに覆われているが、東側はブナに覆われている。しかしそのブナも、大規模な伐採と大規模なスキー場によって、多くは失われてしまった。僅かに、その片鱗を垣間見ることができる。竜ヶ森は小さな山であるが、かつてはブナで鬱蒼とした山であったが、今は森吉同様に、虎刈りの山である。

15)森吉山
 
マタギの山として知られる森吉山。熊の楽園を作っていたブナの森は、すでに無くなってしまった。僅かに、当時の片鱗を味わうしかない。こめつが山荘登山口からは長いスキー場を通過するのが、象徴的だ。ゲレンデが終わるとすぐに美しいブナ林の登山道に入る。スキー場内はブナ林であったことをうかがわせる。
 幸屋・戸鳥内コースも、中腹は素晴らしいブナの森が見られるが、実は登山道に沿って帯状に残されたブナなのである。葉の茂っていない季節に登ると、丸裸の伐採された斜面が広がっているのは、異様な風景だった。いずれのコースも、これほどに伐採されたブナを観察できる山は稀有な存在である。


参考コースタイム=こめつが山荘(1時間30分)一ノ腰(40分)前岳・森吉神社(50分)森吉山
スカイラインゲート(車で15分)小道入口(ただし駐車スペースはない)

16)竜ヶ森

鷹巣町、比内町、森吉町の三町にまたがる竜ヶ森は、登山ルート上のブナの森とその森が伐採された対照的な景色を楽しめる山である。山は小さく歩く距離はさほどではないが、林道のアプローチは長いので、車でのアプローチとなる。登山道は笹の林床にブナ原生林はなかなか見ることの少ない景観である。しばらくブナを堪能しながら進む。標高は1000bに満たないが、ブナは全山を覆っていたのだった。山頂には展望台が建っていて、森吉山や白神山地、大平山や日本海まで眺められる。
 帰路は小繋森の尾根をたどり、そこから離れた途端、急に視界が明るく開け、伐採された株がいたるところに点在し、今までと違った景観に驚かされる。虎刈り状に伐採された対岸の尾根の斜面が眺められる。登山道の斜面は赤土となり、登りと対照的な日差しの強い下山を強いられ、森の有難さがよく分かるコースだった。

参考コースタイム:東ノ又沢コース登山口(40分)稜線(20分)竜ヶ森(15分)分岐小繋森稜線(50分)登山口


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