東北ブナ紀行(7)   奥田 博

岩木山は、津軽富士といわれ富士山の形をした火山である。この山麓周辺は、ブナの森に覆われていた。しかし、岩木スカイライン、百沢スキー場、鯵ヶ沢スキー場などの開発によってブナ原生林はかなり消えてしまった。そんな中、まだ辛うじて残されたブナの森があった。 

13)岩木スカイライン道路脇「巨木の森」
 スカイラインの存在は、走っていては気付かないが、遠くから眺めると中々、凄い景色だ。ジグザグに山肌に切られた傷跡は、山頂付近まで伸びているからだ。その道路を走ると、どこにも森は見当たらないような気もする。 スカイライン途中には、湧き水があって休むポイントになっている個所がある。この水場よりも、もっと下の西側にはブナの二次林が広がっていることに気付く。入口には何と「巨木の森」という案内板が建っている。小道が見えたので車を脇に置いて森の中に入ってみた。 若い森だが、二次林としてはよく管理されているように見えた。幹の太さは不揃いだが、その中にリズムを感じる。これから50年、100年後が楽しみな森だ。だが、気になるのは近くの道路を走る車の存在だ。
■スカイラインゲート(車で15分)小道入口(ただし駐車スペースはない)

14)鯵ヶ沢スキー場上部

岩木山はスキー場に囲まれているが、その間をぬうようにブナの森が広がっている。残念ながら登山道から見ることができる森は少ない。一方、岩木山は春スキーのメッカである。登山道ではないコースを滑ることができ、ここでブナの森を通過する。弥生コースと長平コースは、楽しいスキーコースだが、またブナを巡るコースでもあった。ところが長平コースにはスキー場が造られて、岩木山に残された僅かな森を消してしまった。その名を「鯵ヶ沢スキー場」。 久し振りに、旧長平コースを滑った。山頂から急な無木立斜面を滑っていく。単純に尾根や沢上部の斜面を滑る悦びを身体で感じながら、ザラメの感触を大事に滑る。次第に、ブナの喬木が現れ、それが大きな森を形成して、その中に吸い込まれるように滑り込む。そこはブナの森の聖域だった。そしてスキー場のリフト終点は目前だった。
■岩木山頂(40分)ブナの森(5分)鯵ヶ沢スキー場上部


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