東北ブナ紀行(6)   奥田 博

青森に行くと、低地に近い場所でブナの森が見られる。昔は海辺の近くまでブナの森が覆っていたといわれます。三内丸山遺跡の展示館の再現モデルを見ると、住居の周囲はブナの森で、近くには海が見えた。海の幸と山の幸が得られる縄文の昔の人々の生活は、豊かだったに違いない。今回は、標高わずか3〜400メートルの縄文のブナ林への訪問です。

11)ミニ白神
 

コース終点(始点)に茂るブナ

2000年、鯵ヶ沢で東北自然保護集会が開かれました。いつも集会の時には、どこかの山に登るのだが、天気が悪く予定した登山は見合わせた。鯵ヶ沢の町に入ると「ミニ白神」の案内があるので、集会前に訪れてみた。ここは、52haの場所に1kmの遊歩道を付けた観察路で、しかも有料(300円)でした。JRのコマーシャルにも載っていて、観光バスも立寄りそうに見えました。ただ鯵ヶ沢駅も遠い上に、駅からも1時間弱のアクセス(バスはあり)は、気軽に立寄る場所としては、辛いところ。

 立派な駐車場・トイレ・総合案内休憩所「くろもり館」の建つ場所に切符売場がある。ここで300円を払うと、木製の許可証をもらって首から下げる。「右回りで行け」とツッケンドンに言われて歩き出す。ここは鯵ヶ沢役場の外郭団体が経営しているのだろうか。

 すぐに見事なブナ林になった。太いブナ、ミズナラ、ケヤキなどが見られる典型的なブナ林である。幅2mの遊歩道、時折現れる道標、あづま屋、後半に現れた木造の立派な道には疑問があったが、全体としては「よく出来た自然公園」というイメージでした。森の質は高いし、めぼしい木も散見されるが、どこかヨソヨソしく感じるのは、「自然公園」のせいかも知れない。それでもブナは300年モノが次々と現れ、ブナの質は高い。

 中間部で親子観察会とおぼしき集団に出会った。こういった企画の場所としてはうってつけのように思えた。この管理者がガイドもすると面白い場所になると思う。

■コースタイム:回遊で40分〜1時間

12)梵珠山



この山のマザーツリーは紅葉真っ盛りだった


 この山も今から6年前の94年の東北自然保護集会が青森で開催された時に訪れた。標高わずか486mですが、中々面白い山でした。登山口には「県民の森・梵珠山県立自然ふれあいセンター」があってレクチャーできる。山頂近くに山小屋が建っているが、私たち(淳一さんと)は登山口に建つプレハブ小屋に泊りました。

 登山口から歩き出すと、沢筋を登り尾根を巻くように道が付けられている。周囲は既に素晴らしいブナ林になっている。丸い形の小屋は、現代的なあづま屋だろうが、少しもったいないように思えた。そこからしばらく登ると、この山最大の「ブナ」巨木が現れた。樹齢は300年とも400年とも思えるマザーツリーだ。これを見るだけでも価値があって、とにかく素晴らしかった。木の香りのする山小屋を過ぎ山頂に登ると、白い岩木山が姿を現わした。圧倒的な迫力で、実に見応えのある姿だ。山頂には大きな六地蔵が並んで、昔から信仰の山であったことをうかがわせた。

 下りもブナの林をたどり、そのままネイチャーセンターの前に出た。もちろん、見学してから帰途についた。ふれあいセンターでは、この周辺の観察会を実施しているようだった。

■コースタイム

 南登山口(20分)大ブナ(40分)山頂(50分)県立自然ふれあいセンター


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