東北ブナ紀行(5)   奥田 博

3回に分けて6山を紹介した白神山地のブナも最終回で7山目となります。登山道のある山で出会うブナの一部は紹介できたと思いますが、白神にはまだまだ我々の知らないブナの森はたくさんある。特に沢筋には、たくさん見られます。  この沢をたどるコースは、現在は原則として訪れることはできない。秋田県側は入山禁止、青森県 側は届け出制で限定されたコースのみ可能なのです。この入山規制に関しては賛否両論があります。この10月にも、青森で開かれる「東北自然保護集会」のテーマとなりますので推移を見守ってください。

9)秋田県・小岳
 小岳は秋田・青森県境に連なる白神山地の中央にある、目立たない名実共に小さな山である。この山へのアプローチは秋田の藤里町から延々と林道を1時間30分にわたって走り、やっと登山口へとたどりつく。そこはブナの森の真っ只中であるはずだが、周囲は伐採跡に植えられたスギも目立った。水場のある登山口から登山道を登ると、すぐにブナ林となる。このコースが開かれてまだ20年ほどのようだが、すっかり馴染んだ道の脇には原生的な雰囲気の漂うブナの森が展開する。太いブナは少なく、ブナ純林でもない。ブナを主体に、ホオノキ、カエデ類、などが混じっている。このようなブナの中を歩いて、突然急坂となる。それを越えると、森林限界を越えて展望が得られる尾根となった。ここには日本最低標高(約950b)のハイマツが自生している。やがて到着した山頂からは、駒ヶ岳を初め、二ッ森、泊岳、遠く白神山や向白神など白神山地の大展望台であった。そしてどこまでも続くブナの森が印象的であった。

■(コースタイム)
 登山口(80分)山頂(60分)登山口

小岳の若いブナ

10)青森県・大倉岳
 大倉岳を知っている人は、相当の山のマニアである。津軽半島の根っこの近くに大倉岳はあるが、アプローチでは一切看板・道標の類がないので、登山口までたどり 着くには苦労する。何とかたどり着いた登山口には立派な案内板が建っていて、ここから山頂に向かって尾根をたどり、赤倉岳を経由して回遊するコースに入る。
 最初の登りでは、ブナとアオモリヒバの混交林が現れる。登ると次第にブナ林となる。前岳手前の小屋を抜けると細いが見事なブナ林が現れる。前岳からいったん下り、再び登れば展望の大倉岳山頂であった。祠のある山頂からは日本海や陸奥湾が眺められた。山頂から少し戻り、赤倉岳への道に入ると、素晴らしいブナ林が現れた。特に、赤倉岳山頂の前後に現れるブナ林は、一定のリズムを感じる。標高700bに満たない場所でのブナであるが、立派なブナとしての風格を備えていた。ガイドブックのコースタイムよりも大幅に遅れて回遊コースを歩き終えた。

(コースタイム)

 登山口(1時間)六合目(40分)田代岳山頂(5分)田代湿原(1時間20分)登山口

 



大倉岳のブナは幽玄


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