東北ブナ紀行(4)   奥田 博

北海道の黒松内町の歌才という場所に北限のブナが自生しているといわれる。以前から行ってみたいと思っていたが、今年(2000年)の5月連休に、その機会があって訪れてみた。今回のみ「東北ブナ紀行」は海を超えて「北海道ブナ紀行」です。

7)北海道・歌才
 国道5号線から町道に入り、歌才が近付くとブナ特有のこんもりとした小山が見えてくる。  案内板の立つ大きな駐車場が道路脇にあって、そこに車を置いて歩き始める。車がそこそこに止まっているので、訪問者は多いようだ。
 沢に沿った道を登り始める。ミズナラやダケカンバの中を進むと、雪も現れる。少し急坂を登れば、トドマツの植林地に入る。今度は、次第に坂を下る。沢に架かる橋を渡るとブナ林に入って行く。ゆったりとした登りにかかり、道の脇にはカタクリやキクザキイチゲが遅い北海道の春を歌っていた。
 そして白い肌のスラリとしたブナが現れた。平地のブナ、本土なら阿武隈山地のブナに似ている。しかし ブナではない。寒さは厳しいのだろうが、積雪はそんなに多くはないのだろうか。大きなミズナラの木も見られる。道は最高点から、次第に下り気味の巻き道になってくる。この辺ではブナの森の持つ心地よいリズム感が伝わってくる。太陽は次第に西に傾き、長い影を落とし始める。適当なところで、道を戻り、橋のところからブナセンターへと向かう道に入る。少しの登りで尾根に着くが、こちらにはブナはほとんど見られない。下るに従って次第に公園化してくる。このエリアには、公園に加えてビジターセンターや宿泊施設、日帰り温泉施設などがある。
 歌才ブナビジターセンターに立ち寄って、北限のブナをレクチャーして帰途についた。今度は、葉の茂った季節に来てみたいと思った。
■コースタイム
駐車場(30分)→橋(30分)→ブナ行止り(30分)→橋(45分)公園・歌才ビジターセンター


歌才のすらりとしたブナの木


歌才の白いブナ

8)北海道・長万部


広い林間のブナ(長万部岳)

 朝、車を走らせていると長万部岳と黒松内岳が並んで、立派に聳えていた。とても千b以下の山とは思えない。二股温泉の分岐を右に入ると、間もなく除雪は終って、ここから歩き出す。正面には、長万部岳が真白に眺められる。 林道を3`で長万部山岳会の山小屋「うすゆき山荘」に到着する。ここから噴火湾が望まれる。ここからはブナの林の中を歩くようになる。長万部山岳会の冬山道標があって、これを目標に登ってゆくので、気楽だ。次第に、周囲の山が見えてきて、素晴らしいブナの森が展開する。この森は、朝日連峰山麓のブナのように素晴らしい。北海道のブナ林ではなく、まるで東北のブナ林を歩いているような気分だ。林間は広くて、見通しも良く、長万部岳山頂から落ちる急峻な谷に、雪崩の跡までも望まれた。
 看板の立つ山頂からは、太平洋と日本海を初め360度の大展望が楽しめる。北に見える太平山や狩場山、黒松内岳もブナに覆われた山であることが分かる。奥尻島にもブナが自生しているという。
 下りは急斜面に加えて固いバーンで慎重に滑る。しかし瞬く間に標高差200mを滑ってコルに到着。ここからは緩いブナ林帯となり、ゆったりと滑る。広い林間の気持ちの良い斜面を、穏やかに滑る気分は、何と表現したらいいのだろうか。ブナの再び急な斜面が現れるが、勿体無い斜面なので、コーヒータイムとする。最後の大斜面 を滑れば、登山口の山小屋に到着してしまった。たったの25分の下りだった。あとは余韻を楽しむように、林道を下ったが、こちらもよく滑り、結局山頂から1時間余で車の所に着いてしまった。まさに会心の山であった。
■コースタイム
道路終点(1時間)うすゆき山荘(1時間)コル(45分)山頂(スキーで35分)うすゆき山荘(スキーで15分)道路

 

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