東北ブナ紀行(3)   奥田 博

2回にわたって白神山地のブナを取上げました。今回の藤里駒ケ岳も田代岳、白神山地の端っこに連なります。都合6個所を紹介したことになりますが、白神にはまだまだ他にも我々の知らない素晴らしいブナの森が存在するはずです。

5)秋田県・藤里駒ケ岳
 藤里駒ケ岳は、平坦な白神山地の中では尖ったピークを空に向けて、目立つ存在だ。藤里駒ケ岳には、秋の紅葉の盛りに訪れた。長い林道を車で走って奥に入って、青森県境の山並みが見えてきて驚いた。稜線から谷に向かって一帯には皆伐された斜面が広がっていた。奥の人目の付かないところは、丸裸とはお寒い。間もなく、林道も終点となって、歩き出す。すぐに大きな田苗代湿原が現れた。草紅葉の中に木道が敷かれている。この湿原を越えるとブナ林に入ってゆく。紅葉が盛りで、ブナの葉は黄色に輝いて美しい。カメラを構えてばかりいて、少しも進まなくなった。相棒はたまりかねて、先にどんどん行ってしまう。冷水分岐を過ぎても、次々と現れる見事なブナを写真に収めていた。太いブナではないが、青年期の勢いを感じるブナであった。ブナ林からかん木となったのでピッチを上げると、間もなく頂上であった。この山には、他にも二コースあって、それぞれにブナを楽しめる。

(コースタイム)
 登山口(10分)田苗代湿原(30分)冷水分岐(40分)山頂(1時間)登山口

 

6)秋田県・田代岳
 田代岳は、白神山地の東端にそびえる山である。ブナの山というよりは山頂部に湿原を持つ山として知られる。登山口は5ヶ所あるが、荒沢コースをとる。大川目川沿いの道に入ると直ぐに太いブナの木が現れる。水場も現れて、しっかりと補給して登り出す。巨木が多く、その度に写真を撮りながら進む。尾根の登りが一息付いても、ブナの見事な木が、次々に現れて飽きさせない。何合目という表示が、ブナの木などにくくり付けられて、美観を損ねている。あまり意味の無い表示にガッカリとさせられる。それにしても、見事なブナが、見事に続く。ヒョッコリと大きな湿原帯に飛び出した。池に岩木山の姿を映して美しい。静寂の山にあって、ひっそり池が点在している様は、心打つものがある。しばしの登りで、大きな神社のまつられた山頂に到着した。山頂からは、岩木山と藤里駒ケ岳が大きくそびえていた。帰路も往路を下ったが、登りで撮ったブナを、朝とは違う光で、また撮 った。登山口近くの水場で飲んだ水は、甘くておいしい。これもブナの森の恵みだ。

(コースタイム)
 荒沢登山口(1時間)六合目(40分)田代岳山頂(5分)田代湿原(1時間20分)登山口

 

 

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