東北ブナ紀行(11) 奥田 博

 秋田の山々は低い山から高い山までブナは多彩に広がっていると思う。スギと共存したり、炭焼きと共存したり、昔から人々との関わりの深い森が広がっている。今回は形の変わったブナ、奇形のブナを写真で紹介したい。別に秋田の山に奇形ブナが多いという訳ではないが。

21)八塩山

 標高わずか713mの里山である。山頂には当然のごとく、祠がまつられており、古くからの人との関わりが感じられる里山である。ゆっくりとしたペースで登り出すと、小さな沼が現れる。ヒッソリと静まり返った湖面に鳥の羽ばたきと鳴き声だけが響く。しばらく登るとブナの森に入っていった。特に素晴らしい森が広がっているわけではない。しかし個性豊かなブナの木々が顔を出し楽しませてくれる。

 腫れ上がったブナ、内部が空洞化したブナ、虫食い状態でもなお生きるブナ。何だか奇形ブナのパレードのようだ。多分、これも昔から人々が山に入っていた証であろう。小さな山頂を楽しみ、山麓の人家の前を流れる冷たい水で食べた稲庭うどんがうまかった。

コースタイム)登山口(1時間)山頂(50分)登山口

22)鳥海山麓・中島台

 

鳥海山は独立した火山で、広い裾野は、絶好の山スキーエリアとなる。鳥海山は、常に滑る対象の山である。そんな時に、写真集でみた「中島台のブナ」の形を確かめたくて、雪の無い季節に鳥海山を訪れた。山頂に立ったわけではなく、山麓を歩き回っただけである。ここは回遊できるように遊歩道が整備されているので、次々と現れるブナを観賞しながら歩けるのがいい。

 歩き出してまもなく、すぐにブナの林が現れた。しかも「アガリコ」と呼ばれる奇形のブナだが、その形が面白い。次々と立派なブナが現れカメラに姿を収める瞬間は胸がトキメク。山頂から流れてくる鳥越川の支流を渡ると、さらに見事なブナ林が広がっている。特に見所は「アガリコ大王」と呼ばれる大ブナである。大きな手を空に向かって広げて立ちふさがる大魔王といった風情である。

 この奥には湧水群があり、その深い川の周囲には見事なブナ林が広がっている。水は鳥海山頂から流れ出る冷たい水だが、果たして悪水で飲めないという。湧水群周辺の景観も凄い。水が流れているだけで、こんなにも風景が変わるものかと妙に感じ入ってしまった。

コースタイム)登山口(40分)アガリコ大王ブナ(20分)湧水(1時間)登山口


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