東北ブナ紀行(1) 奥田 博

「東北ブナ紀行」第一回は、白神山地です。ご存知の通り、ブナの森としては我が国最大面積を誇る。ブナは白神にしか残っていないと思っている人も多いくらいに有名。

1)青森県・白神山地・高倉森
 
高倉森とは、地図上にはその名前は無い。この登山口は、青秋林道よりも遥か昔に建設された弘西林道で暗門の滝から車で30分程登った津軽峠であった。峠から歩き始めるとすぐにブナの尾根が始まる。こちらは原生的なブナ林で、木のツブが揃った林だった。このコ−スはマタギがツア−コ−スとして、峠から暗門の滝まで募集しているとチラシにあった。3500円である。これは、白神を観光とするにはいい方の仕掛けだ。根深誠氏は「マタギのテイタラク」と評していたが。津軽峠の登山口から数分のところには、樹径1bほどのブナの大木を見た。貫祿があり、比較的素直に真っ直ぐに伸びたブナ。品位を感じさせるブナだった。それにしても暗門の滝周辺は、観光地並みの混雑であった。お土産屋、温泉、キャンプ場などが出来て、結局は白神を観光の道具にしか思っていない現れだろう。


■(コースタイム)
津軽峠(1時間)高倉森(往復するか暗門の滝まで下る)

2)秋田県・白神山地・岳岱
   白神山地でも秋田県側には、まとまったブナの森は残されていない。その中で岳岱は小面積ではあるが、いいブナが残された貴重な森である。藤里町にはホテルや「世界遺産センター」なるモノが出来て、随分と変わった。その町から長い林道を走って、取付きに至る。そこから両側にオオバコがビッシリと生える道を進むと、突然ブナの森に入る。どこでも歩けそうな林床で、あちこち踏まれている。この森の主みたいなブナは最後に立寄ることにして、奥へと進んだ。曇りのせいか、鳥の鳴き声は聞こえない。一番奥まった個所にベンチがあったので、朝飯にした。ブナの森で朝食、守さん特製のブドウ、そしてコーヒーを頂く。次第に太陽が森に差し込む中、ゆっくりと至福な時間を過ごした。

   この森には岩がゴロゴロと多く、木はその大岩の上に根を下ろしている場合も多く見られる。そのためブナの根が張り出して、そこに苔が付着して、実に面白い風景をつくりだしている。岳岱の大きな特徴だろう。最後に深い襞や瘤のある大ブナの周りで時間を過ごして、帰途についた。この森をさらに、藤里駒ヶ岳の登山口まで行くと、皆伐された県境の斜面が見えてくる。岳岱とセットで見るといいだろう。


(コースタイム)
入口(1時間で回遊)


うねるように岩を被うブナの根


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