東北ブナ紀行(50号記念特集)「福島県のブナ50」    奥田 博

 東北ブナ紀行は前号で14回、青森・秋田の28回「ブナ紀行」を終えた。ところが、とある方から「いつになったら福島のブナ紀行は始まるの?」という質問がきた。北から順を追って南下しているが、確かに福島県のブナがいつ頃掲載になるのか、見当もつかない。単純に1県で7回と勘定すれば、あと21回で福島県に到達することになり、5年後になってしまう。しかも地元福島であることから、足繁くブナを訪れる機会も多く、福島県のブナ紀行が終わるのは、さらに数年も要することになる。今回はそんな背景から、福島県のブナを一気に掲載といきたいが、数えてみると何と50ヶ所もある。紙面の都合上、大幅に省略した形で、特集とします。

 今回は私の個人的な主観で、ブナ林のランクをA(優)、B(秀)、C(良)の3段階に分類してみた。あくまでも個人的な好みの世界・価値観ですので、惑わされないようご注意を。また私が歩いた線上(登山道であったり雪上であったり)の話であり面では捉えていません。当然、広大な面積であれば上にランクされる筈ですが、私には極めて困難なこと。

 最近、会津・只見の森が脚光を浴びています。昨年の東北自然保護の集いでは異例と思われる関東森林管理局がブナの伐採を謝るということがありました。また森林管理局は純度の高い森に線引きをしようと委員会を設けましたが、これも線を引くこと自体、線に漏れた森の伐採につながるとの意見に耳を傾け、撤回しました。とにかくブナを守るための施策が以前に比べると、大幅に変わってきたと思うのですが、いかがでしょうか。

福島県のブナ林を大きく3つに区分しました。奥羽山脈の山、その西側を会津の山、東側を阿武隈山地の3区分です。会津には広大な面積のブナ林が残されています。代表的な日本のブナ林といえます。ブナ林の質と面積は東北でも有数の地域ですが、まだまだ未知の部分が残されている場所でもあります。これからも、ここの森が素晴らしい、あっちの森が優れていると出てくる可能性が高く楽しみな場所である。

奥羽山脈のブナは開発されて辛うじて残されたブナ林が多い。そんな中で福島市の高山山ろくのブナ林は素晴らしいと思う。残念ながら、面積は少ないが、その質においては会津のブナ林に匹敵する。

阿武隈に至っては、元々少ないブナ林ですから、もっと貴重ですが、あまり俎上に上ったことはありません。イヌブナを中心にシロブナとも呼ばれるスベスベした木肌と明るい林は私の好みの森が多い。ほとんどまとまった面積の少ない中で茨城県境の小川保護林は特筆に価する。

 

■奥羽山脈の山

1.吾妻連峰:高山 A福島市 高山の原生林を守る会のホームグランドというべき場所。道の無い所にブナ桃源郷有。

2.吾妻連峰:早稲沢・デコ平A猪苗代町 遊歩道を歩いて味わえるブナ林。

3.吾妻連峰:二十日平A猪苗代町 スキー場から一歩入ると、見事なブナ林の中を歩ける。

4.吾妻連峰:中吾妻山A 登山道はなく、積雪期しか登ることができない。それだけに吾妻の中では原生的な森残る。

5.安達太良連峰:箕輪山・土湯峠B猪苗代町 ほとんどがスキー場になってしまったが、当時の面影が残る。

6.安達太良連峰・鉄山西面B猪苗代町 道の無い場所で、雪の季節にしか行けない。

7.安達太良連峰・船明神西面C猪苗代町 登山道に沿って鑑賞できるわずかなブナ林。

8.七ツ森・茂庭B福島市 伐採の林道が張り巡らされている割には登山道はない。茂庭の盟主、七ツ森や県境尾根。

9.川桁山B猪苗代町 三十三転ぶ坂の前後にブナの森が広がる。

10.笠ヶ森山C 伐採や植林でわずかに残されたブナは、価値ある存在。

11.権太倉山 B ブナ林の面積は少ないが、ミヤコザサの林床と若いブナの織りなすリズムが絶妙。

12.那須赤面山C西郷町 標高の高いところにのみ残されたブナ。矮性化直前のブナ林が見学できる

13.甲子山B西郷町 甲子温泉の直ぐ裏手から始まる急坂に展開するブナ林。

14.三本槍岳B下郷町 大峠から三斗小屋温泉に至る途中に広がる原生林ではサルに出会った。

15.二岐山B 1544.3, 天栄村、下郷町 ヒノキアスナロとの混交林。すでに伐採されてしまったブナ平も見ておく。

 

■会津の山

16.猫魔ケ岳B 1404.0, 北塩原村、磐梯町 峠から山頂に至る尾根筋。その林を刈って造ったスキー場も見学できる。

17.裏磐梯野鳥の森B 1271.2, 北塩原村、塩川町 桧原湖に西岸に広がる一帯に歩道が開かれ、そこのブナは絶品。

18.飯森山B 1595.4 熱塩加納村 長い尾根に広がる普通のブナ。面積は広大であると想像できる。冬のブナが極み。

19.飯豊山A  2105.1, 山都町、塩川町 川入からの下十里〜上十里までのブナは質も量も高級品。

20.鏡山B 1338.9, 西会津町 飯豊連峰の派生尾根らしくブナは素晴らしい。尾根上部では矮性ブナも見れる。

21.高陽山B 1126.5, 西会津町 そんなに広い面積ではないが、落ち着いたブナ林が広がる。

22.飯谷山B 782.9, 柳津町 山中の飯谷神社の前後には、びっくりするほど立派なブナ林があった。

23.明神ヶ岳B1074.2, 会津高田、柳津町 山頂付近に広がるわずかなブナ。冬のブナに感動。

24.博士山A 1482.0, 高田、柳津、昭和村 博士山は周囲が見事に伐採され、山の中にはブナ林が残る。

25.志津倉山A 1234.0, 三島町、昭和村 山頂付近やホソヒドコースには見事なブナが見られる

26.小野岳C 1383.4, 下郷町 登山道では大内からの途中が見事。大きな面積ではない。

27.大戸山C 大戸岳には登山道があるが、ブナの森はほとんどない。その北隣の大戸山には残っているが道はない

28.横山 B 1379 積雪期にしか歩けない山。その奥にはブナが広がっていた。

29.会津朝日岳 B 1624.2, 只見町 避難小屋周辺は見事なブナ林で、一泊の価値有

30.三岩岳A 2065.0, 伊南村、桧枝岐村 中腹のブナは会津屈指のブナ林。

31.会津駒ヶ岳A 2132.4, 桧枝岐村 登山道からの味わいもいいが、春山スキーで林間を抜けるのもブナの風景。

32.燧ヶ岳B 2356.0, 桧枝岐村 登山道よりは車道の脇のブナ平周辺がいい。積雪期の森歩きは素晴らしい。

33.大嵐山B 1635.4, 舘岩村 ブナよりもミズナラ、サワグルミ、カツラなどがいいが、湯倉岳の尾根のブナはいい。

34.山椒山B 舘岩村 山頂付近のブナも見事だが、その前のミズナラ林が見事。

35.長卸山C 舘岩村 木賊温泉の裏側から取り付く急坂には、ブナが残っている。

36.本名御神楽岳B 1266.0, 金山町 沢から山に取り付く頃にブナが見られる。新潟側の御神楽岳西面のブナもいい。

37.浅草岳A  沼の平 1585.5, 只見町 沼の平への途中、そして沼の平周辺。ここのブナ林に桃源郷を感じる。

38.浅草岳A只見尾根  只見町 只見尾根の長く辛い尾根に取り付く直前のブナ林。

39.山毛欅沢山A 1523 ブナが沢山あるという名前の山。実際に片鱗は見られるが、ほとんどは伐採。上部に僅か。

40.大博多山B 1315  伊南村 山頂に近い付近は典型的な会津の多雪地帯特有のブナ林。

41.小沢山周辺B もちろん道はない会津の山々であるが、春山での縦走で、時折現れるブナの森はオアシスだ。

42.南会津烏帽子山周辺C昭和村 特に道は無いが、とにかく林床にユキツバキ咲くブナの木々が鑑賞される。

    他に昭和の森に見られるような「○○の森」公園も、それなりにイイ林が見られる。

 

■阿武隈の山

43.五台山C   原町市 山頂から下部の谷に広がるイヌブナ林。

44.大滝根山 C 1192.5, 常葉、川内、滝根町 御沢コースにはイヌブナもブナも見ることができる。

45.鎌倉岳C  669.1, 古殿町 山頂の南面や東に伸びる尾根にはブナが散見される。

46.高太石山C   川俣町 「大ブナ」と呼ばれるシロブナの大木一本が目当て。

47.八溝山B 1022.2, 棚倉町、矢祭町 山頂から福島県側にはイヌブナを中心とした林を鑑賞できる。

48.背戸峨廊B    いわき市 谷は多くの植物が見られるが、回遊コースにはイヌブナの林が見られる。

49.一本山毛欅山C   いわき市 ブナの名を冠した山であるが、ブナは少ない。探すところに意義有りの山。

50.小川保護林A 茨城県境にある阿武隈随一のブナ林。太くて見事な森が残っていることに感動。

浅草岳 飯谷山 川桁山
箕輪山 明神ヶ岳 長卸山
大博多山 裏磐梯野鳥の森 高太石山

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