東北ブナ紀行(70 奥田 博

  山形の大境山といわれて分かる方は少ない。飯豊連峰の北の端に静かに横たわる山なので、飯豊の臭いの強い山である。岩手北部の遠島山は、今年40年振りに歩いた山で、新鮮な気持ちでブナと接することが出来た。いずれにしても東北の山は北から南までブナに覆われていることを実感した。

105)百石山 599m

百石山に棲み悪事を働くオオワシを征伐した若者に殿さまが百石を授けたという昔話が伝わる。山形と新潟を結ぶJR米坂線の無人駅伊佐領駅から歩き出す。小学校跡地が登山道入口で小さな駐車場になっている。スギ植林地を過ぎると自然林を歩くのは、どこの低山も同じ。沢に沿って咲くキクザキイチゲやオオタチツボスミレの群落を眺めながら登る。沢から離れると、突然急坂に変わる。この急坂は、山頂から延びる尾根まで続く。ブナを眺める余裕もなくフクラハギが痛くなる頃、尾根にたどり着いた。
ここからは緩いブナの尾根をたどるが、丁度ユキツバキの花が見頃で赤が目立つ。ブナの新緑とユキツバキの濃い緑葉に赤い花は、森に映えた。コースタイム:
登山口(1時間30分)尾根(30分)山頂(1時間30分)登山口

106)黒沢峠 424m

今から約500年前に置賜地方から越後へと通じる街道として、伊達14代の稙宗(たねむね)によって大里峠が開かれた。後年、街道には13の峠があるため「十三峠」と呼ばれた。その一つが黒沢峠で、現在も石畳の道が残っており、街道脇にはブナ林が広がる貴重な道である。
登山口には立派な看板と小屋が建ち、広い駐車場があるが、お祭り広場と記されておりイベントでも行うのだろうか。道に入ると直ぐに石畳が現れる。大きな石畳は残っており、道は切り開かれたことが分かる造作だ。スギの人工林も見られるが、ブナの自然林が広がる谷も見られる。緩やかに登ると、次々とブナが現れる。途中、古屋敷と呼ばれる広場からは、真白な飯豊連峰が間近に眺められた。
黒沢峠からは、市野々への下り道を見送り471mピークに登える。山頂はブナ二次林に覆われて展望はない。ここから北西に伸びる道を下るが、ここはもっと原生的なブナ林が広がっていた。こちらもユキツバキが見頃、それにイワウチワが足元に広がって彩りを加えていた。コースタイム:登山口(60分)黒沢峠(10分)471ピーク(50分)登山口

 


ブナ林では丁度ユキツバキの赤い花盛りだった(百石山)

登山口から断続的ではあるが、黒沢峠まで石畳の道が続く(黒沢峠)


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