東北ブナ紀行(68 奥田 博

  山形の大境山といわれて分かる方は少ない。飯豊連峰の北の端に静かに横たわる山なので、飯豊の臭いの強い山である。岩手北部の遠島山は、今年40年振りに歩いた山で、新鮮な気持ちでブナと接することが出来た。いずれにしても東北の山は北から南までブナに覆われていることを実感した。

101)大境山 1101.5m

大境山は飯豊連峰北部、地神山と頼母木小屋の間から派生する尾根の最後の千m峰となる。尾根の途中の西俣ノ峰までは踏み跡が続くが、そこから大境山までは道もない。対岸の南5qには手倉山がそびえている、という位置関係だ。ブナのレベルが高いことは容易に想像できる。
登山口には目立たない看板が立っており、水路に沿って歩き始める。最初は谷筋を歩き、尾根にのればすぐにブナが現れた。丁度、朝霧が切れてゆく時間帯だったので、幻想的なブナの中を登る。ブナは狭い尾根の両側に並木のように現れる。急坂に差し掛かると、霧が晴れ日差しが出、森林限界を抜けて展望が得られる。登りが緩くなると、県境を越えいったん新潟県となる。水場を経て展望の県境に出ればひと登りで大展望の山頂であった。この日は佐渡まで見える快晴で、山頂には長時間留まった。コースタイム:
登山口(2時間)県境尾根(30分)森林限界尾根(45分)山頂(2時間30分)登山口

霧の中のブナは幻想的だった(大境山)

102)遠島山 1262.3m

遠島山を登るには、そのアクセスが課題となる。福島から高速道路を岩手北部まで走らせ、さらに国道や地方道、林道を走り、やっと登山口に到達する。北上山地北部は、一昨年豪雨に見舞われ昨年は林道が壊れていたが、今年再開通して通行が可能になった。
登山口近くには立派な遠島山荘が建ち、一度は泊まってみたいと思わせる雰囲気の良い山小屋だ。広い林道跡と思われる道をたどる。林道はカラマツの紅葉が見頃だったが、100mほど登っただけでも、東側のカラマツは葉を落とし、ダケカンバ、シラカバも葉を落としている。ハウチワカエデの赤が目を引く。傾斜が増してくると、ブナの大木が現れる。林床には緑の低木が広がっているが、キヌガサソウのようにも見えるが花もないので分からない。花の季節に再訪したいと思った。二本並んだブナで、朝日が木々を染め出した。太陽に向かって幹越しにカメラを向けると、光輪が見える。細かな枝が、光線の方向だけに反射する現象だ。賢治『風の又三郎』の「ガラスのマント」を見る思いだったが、写真撮影は難しかった。道を塞ぐ大ブナの倒木を越えると、忽然とブナ林は消えてオオシラビソが現れ、山頂は間もなくだった。コースタイム:登山口(80分)山頂(1時間)登山口


大ブナだがサイズが写真では分からない二本ブナ(遠島山)


大境山


遠島山


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