東北ブナ紀行(67 奥田 博

  今回紹介する村山・葉山は第82回の村山・葉山の中で「十部一峠から登るのが、最も短い距離でブナの純度も高い。このコースは次号で項を改めて紹介したい」と述べた後、東日本大震災が起きて「大震災が教えてくれたもの」シリーズに入って、そのまま書かなかったコース。樽石山も葉山の東外れの山。結局、葉山は今回を含めて、4コース全てを紹介したことになる。

99)葉山 1462m

寒河江市と肘折温泉を結ぶ国道485号線の十部一峠は、標高880mで豪雪のため半年しか車は走れない。峠の山神様に挨拶して、長い林道を走ると登山口に到着する。
 登山口は既にブナ林の中だが、沢を越えて急坂を登り斜面が落着くと、ブナ林が広がる。穏やかな斜面は根を据えるには急斜面よりは安定するためだろう。大木が多くなったように思えた。下界は暑い日々が続くが、この森は暑さ知らずだ。東西に広がる尾根に出ると、急にブナは矮小化して森も形を失った。尾根は展望があり月山や鳥海山、朝日連峰などが近い。池塘を越えて葉山神社は至近の距離だった。
コースタイム:登山口(1時間)東西の尾根(30分)山頂(1時間10分)登山口

十部一峠(上)と樽石山(下)のブナ。ブナは下から見上げることが圧倒的に多いが、表情は千本差万別

100)樽石山 1155m

葉山はCの文字状に尾根が繋がるが、山頂はCの中心。山頂からみると東の末端に位置する樽石山だが、地図上に名前はなく、実際に登った1155mピークにも樽石山の表示はなかった。名前は山麓の樽石集落から名付けたと思われる。いずれにしても、山頂のハッキリとした表示が無い山は珍しい。
 樽石集落から樽石川に沿って舗装された道を観察センターと呼ばれる小屋まで入る。ここに車を停めて歩き出す。山道に入って暗い杉林から自然林に入るが、その先で送電線の巡視路となり、小沢に沿った急な道をたどる。尾根にのると、北斜面に粒の揃ったブナ二次林が広がる。途中、社務所跡の看板を見て「シャムコース」はこの社務所跡から名付けた?と疑問が解けた。北の尾根を巻くように登ると、主尾根を辿るようになる。そこは見事なブナが林立しており、ブナにカメラを向ける時間が増え、自ずと登るスピードは落ちる。願掛岩からは蔵王連峰などの展望が得られた。樽石山とおぼしき山頂を越え、「千万ドルのドウダン」では沢山のドウダン花筒が落ちていた。尾根を下ったところに大ブナがあり、そこで撮影と大休止して戻ることにした。
コースタイム:登山口(1時間45分)社務所跡(40分)山頂(10分)大ブナ(2時間20分)登山口


葉山


樽石山


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