東北ブナ紀行(66 奥田 博

  今回も「山形百名山」に選ばれた二山を紹介します。どちらの山も無名ですが、山形では知られた山。長井市在住のガイドNさん曰く「山形百名山」のお陰で仕事が忙しくなったとのこと。「山形百名山」ガイドブックも売れ行き順調。

97)熊野山 670m

熊野山という山は地図上にはありません。途中に産土神として祀られた熊野神社が建つために熊野山と呼ばれている。
道照寺スキー場のエプロンから歩き出す。尾根にのると東からの登山道と合流する。尾根の上は、南側に杉林も広がるが、登った時にはブナをはじめ、トチ、カエデなどの新緑が美しい。その中にムラサキヤシオツツジの紫が映える。大きな熊野神社前には、東が開けた展望テラスがあり、コーヒーを頂いた。
ブナ新緑は、この先が本番。神社裏の大杉ご神木を見て、緩い道を登ると、ブナ新緑と足元にはイワウチワが迎えてくれる。第一展望台、第二展望台は不要な建物が目障りだ。長井ダムの向こうに残雪に覆われた祝瓶山が鋭く天を衝く。ブナは太い幹は少なく、二次林が主体で「未来の森」と呼べそうな存在だった。山頂の開けた南側からは、赤イタヤの新緑が印象的だった。
コースタイム:登山口(1時間)熊野神社(30分)山頂(1時間10分)登山口

ブナ新緑の時期は、太陽に透かすと産毛が光る

98)大頭森山 984m

昨年冬、第88回のブナ紀行で冬の大頭森山(だいずもりやま)中腹の一本・大ブナを紹介したのだが、昨年春、大頭森山は「山形百名山」に選ばれたことを知った。この山は車道から15分ほどで山頂に立てるのだが、道は大きなブナに覆われており、ブナ好きには容易に純度の高いブナに出会えるウレシイ山。
震災前年の6月に会員の佐藤恭二さんと朝日連峰に向かったが、あいにくの雨模様。登山を諦め、途中に立ち寄ったのがこの山だった。町道を車で走っていると「大頭森山」の看板を見付けて歩き出す。すぐにブナに囲まれ、深山の雰囲気が漂う。この時期、目に付いたのは真白なツルアジサイの花に絡まれた大ブナや大トチの木。木が弱っている風にも見えないが、大ブナが白い花を咲かせている木が何本も見られるのは異様というか不思議な風景だった。
登りらしい登りもなく、広い遊歩道を登ると大展望の山頂に到着した。確かに朝日連峰の展望台といえそうだ。しかし今日はあいにくの曇り空で朝日の山々は見えなかった。立派な展望説明板をみて、下りについた。
コースタイム:登山口(15分)山頂(10分)登山口

大頭森山にはこんなブナが、たくさん!


熊野山


大頭森山


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