東北ブナ紀行(65 奥田 博

  私が歩いた山形県のブナの森も終盤に近い。「山形百名山」に選ばれた山には、公園のような山や道の無い山も含まれている。そういった意味で福島県には登山道があるだけでも150山を超える山があるので、山に恵まれているといえる。白太郎山は積雪期した登れない山形百名山。冷水山は、車道の脇にあるが、冬しか登れないブナの山だ。

95)白太郎山 1003m

この山は小国山岳会により厳冬2月に町民登山が開かれるというユニークな山。それもそのハズで、登山道は無い。私が登ったのは3月で既に雪は重いザラメだったので、2月の新雪時に登りたいと思った。
ログハウス風の民家の間から急斜面に取り付くが、ここがコース中一番の急傾斜だった。スギ林の中を抜けると広いブナの森に入る。林間は広く好ましい空間にブナやトチ、ホオノキやカエデ類などがゆったりと広がる。途中の小ピーク766mを超えると、尾根も次第に明瞭になりブナの森をたどるようになる。対岸の徳網山が急峻な姿を見せていたが、こちらの標高が高くなると威圧感は無くなる。ブナ林が程よい間隔で連なり、朝日連峰の南端であることを感じる。
山頂からの眺めは西側以外、丸見え状態だった。目立つのは祝瓶山、それに続く大朝日岳までの朝日連峰。南には真白な飯豊連峰、その奥に二王子山などが春霞の中に指呼できた。下りは3時間かけて登った斜面を1時間で滑り降りた。
コースタイム:登山口(1時間45分)766m点(1時間15分)山頂(1時間)登山口

白太郎山はブナ林が山頂まで延びるブナの森山だった

96)冷水山 1340m

冷水山を知っている方は、山のマニアといえる。蔵王エコーラインの脇、坊平スキー場の近くにヒッソリとある。山というには、あまりにも「目立たない高み」といえる。
エコーラインの除雪終点に車を置いて、道路脇を深いラッセルで歩き始める。道形をたどり、カーブする道をショートカットしながら進むとオオシラビソの森に行く手を阻まれる。若いブナ林を進路にして進むと、突然一本の大ブナが現れる。昔、オオシラビソを伐採した後にブナが自然萌芽したと思われるが、その母樹だったのだろう。誰にも知られずにヒッソリと長い間、孤高を守ってきた一本ブナだったのだろう。
最後の車道カーブを巻くと、見事なブナの森に入り込む。丁度、今朝までの吹雪も小康を保ち、ブナの白い森が広がる。青空こそないが、幻想感は素晴らしい。このブナの森を抜けると、灌木に囲まれた山頂だった。風を避けて、ブナの森に逃げ込んでコーヒータイムを取った。
コースタイム:登山口(1時間20分)山頂(30分)登山口

強風によってブナの幹には雪が付着して幻想的な景色


白太郎山


冷水山


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