大震災の年9月10日に始まった霊山の線量計測とキノコの汚染計測は今年で6回目を迎えた。学習院大学の村松康行教授とは、第1回の調査の時に初めてお会いした。新聞やテレビで知っている教授というよりは、気さくで親切で丁寧な所作が印象的だった。村松先生との出会いは、霊山での計測を定例化し定点観測を行う切っ掛けを作った佐藤守さんの尽力に負うところが多いのだが、、、。
ところが2016年7月2日、村松先生の突然の訃報をメールで知った。あまりにも若過ぎる急逝。まだやり残した仕事も多くあり、まだまだ福島県のために教えてもらいたいことがあったのに、残念であった。
ここに改めて村松先生の略歴をネットから紹介したいと思う。
村松 康行(むらまつ やすゆき)教授
1950年静岡県生まれ。74年学習院大学大学院修士課程(化学専攻)修了。77年独ゲッチンゲン大学理学部地球化学専攻博士課程修了。77年同大学地球化学研究所研究員。78年放射線医学総合研究所入所、04年まで在籍。その間に国際原子力機関(IAEA)国際公務員および千葉大学客員教授にも就く。 04年より現職。92年科学技術庁長官表彰。04年地球化学研究協会学術賞(三宅賞)受賞。主な著作に『放射線と地球環境』(編著)『放射線と人体』(共著・いずれも研成社)などがある。福島原発事故に際しては福島県のアドバイザーとして、農耕地や森林の放射能汚染について助言を行っている。
福島原発は廃炉に向けて今後40年以上、リスクと向き合っていかなければならない。村松先生には、何かと助言や調査を行って頂きたかった。今はご冥福をお祈りするだけだが今後、当会としても霊山の計測を続けることが村松先生の遺志を継ぐことになるのだと思う。
11月26日、原発廃炉費用が政府の従来の想定とは、大幅に膨れ上がることが判明した。当初11兆円となっていた費用は二倍の20兆円を上回る見込みとなった。すなわち
賠償:5.4兆円=>8兆円
除染:2.5兆円=>4兆〜5兆円程度
汚染土を保管する中間貯蔵施設の整備:1.1兆円
廃炉:2兆円=>数兆円規模で拡大
毎日新聞によれば、政府の従来想定は2013年末時点に見積もったが、賠償や除染の対象が増加している。廃炉も原発内に溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出し費用などが拡大。経産省は既に現状で年800億円の費用が年数千億円程度に達するとの試算を明らかにしている。
費用の工面について、政府はこれまで、賠償は国の原子力損害賠償・廃炉等支援機構がいったん立て替え、東電を中心に大手電力が最終的に負担金を支払い@除染は国が保有する東電株の売却益を充当A中間貯蔵施設は電源開発促進税を投入B廃炉は東電が準備−−との枠組みを示してきた。
政府は、賠償費の増加分について、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の立て替え増額を検討。これとは別に、大手電力や新電力が送電会社の送電線を利用する料金への上乗せも検討している。この料金は政府の認可制となっており、最終的に電気料金に転嫁される。
除染費も東電株の売却益で賄えない可能性が高く、東電などに負担を求める案が検討されている。その場合、最終的に電気料金に転嫁される可能性がある。
廃炉作業はまだまだ終わらない、というか始まったばかりで課題は山積しているが、震災以来継続してきた「大震災が教えてくれたもの」を今回で終えたいと思います。次回から「東北ブナ紀行」を再開したいと思っている。
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