19 奥田 博

福島県の森林除染

   今年1月、我家の除染作業が終わり、福島市街地の除染作業はほぼ終了した。6月には毎年配られる「全市放射能量測定マップ」(2〜3月計測)が届いた。結果は、2011年6月の平均1.33μSv/hが2016年3月の平均0.25μSv/hで理論値通り2011年比81.2%の減であった。我々が継続測定を続けている霊山での計測結果とも一致する減衰だ。
   
環境省、福島復興庁、農林水産省の3省庁は「福島の森林・林業の再生のための関係省庁プロジェクトチーム」の初会合を201625日に復興庁で開いた。環境省が福島第一原子力発電所の事故後に進めてきた森林除染の対象を拡大する方向で検討に着手した。
 環境省が2012年度から本格的に開始した除染の対象は宅地が中心で、森林の除染は住宅から半径20m以内に限定していた。その後、同省は201512月に開いた環境回復に関する有識者会議で、「住居等近隣の森林」(エリアA)と「利用者や作業者が日常的に立ち入る森林」(エリアB)では除染を進める一方、それ以外の森林(エリアC)は対象外とする方針を打ち出した。被災地の自治体と林業関係者は、林業で利用する森林を除染の対象から外す方針と受け止めて反発し、見直しを求める緊急要望を年明け早々に同省に提出していた。
  3省庁はこれを受けて今回のプロジェクトチームを発足させ、被災地の「里山」を対象に、除染の実施を視野に入れて復興事業に取り組むとしている。里山は一般に人の生活圏との結び付きが強い山林を意味する。エリアACのどれに相当するかは明らかにされていない。環境省の担当者は「里山再生に取り組むなかで、201512月に出した方針におけるエリアBの範囲を柔軟に検討する」と述べ、林業従事者が立ち入る森林を除染の対象に含める可能性を示唆した。森林除染をいつ開始するかは未定だが、エリアCを除染の対象から外した。そして9月、3か所をモデル地区として選定し、実質スタートさせた。モデル地域はさらに増やし、その結果を検証した上で対象範囲を決定するという。
 森林除染については、その効果を疑問視する向きもある。宅地の除染では中心的な作業となる土壌表層部のはぎ取りや入れ替えを森林で行うと、落ち葉などの堆積有機物が失われ、樹木の生育に悪影響を及ぼす恐れがあるからだ。環境省がエリアCを除染の対象から外した理由の一つはこれだった。環境省の担当者は、「方法をよく考える必要がある。除染の効果を追求しすぎて森を壊す結果になってはいけない」と述べた。除染作業を工事として受注することになる建設会社や造園工事会社は、現場でそんな対応は可能だろうか?

 

森林除染は本当にやる気か?(塩手山) 

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