東北ブナ紀行(58 奥田 博

  「大震災が教えてくれたもの」(]W)

2030年の電源構成

 今から15年後2030年の電源構成が有識者会議から答申を受け政府案が決定した。以下、読売新聞から。

 太陽光や風力などの再生可能エネルギーを現在の2倍以上に増やす一方、東日本大震災前に約3割だった原子力の依存度を引き下げ、再生エネを下回る水準にした。政府の今後のエネルギー政策の基本方針になる。
 具体的な比率は、▽再生エネ=22〜24%▽原子力=20〜22%▽天然ガス火力=27%▽石炭火力=26%▽石油火力=3%――など。また、比較的安い費用で安定的に発電できるベースロード電源(石炭火力、原子力、水力、地熱)の割合を、今の40%程度から、56%程度に引き上げるとしている。
 比率は4月の有識者会議案と同じだが、文言について、政府案では、原子力発電所の再稼働で「国も前面に立ち、立地自治体など関係者の理解と協力を得るよう取り組む」ことを新たに加えた。再生エネについては、「最大限の導入拡大と国民負担抑制の両立」が必要だとしている。


一方、人口は現在の1億2800万人をピークに減り始め、2030年には1億1600万人と10%近く減少し、2050年前に1億人を切る。すなわち原発を使わなくても人口減によって、脱原発をはかることは十分に可能なのだ。原発の現状はゼロである。福島第一原発事故への反省をもとに改定した原子炉等規制法で、原発の寿命は40年に制限されている。これに従えば30年度の原発比率は15%以下にしかならず、原発を20%以上にするには法律の例外規定を援用、すなわち40年制限を延長するしかない。構成案は、無理をして原発の比率を増やしていくことを意味する。朝日新聞は「原発回帰」とまで表現している。
 安倍さんが言ってきた「原発への依存度を可能な限り低減する」はポーズであったのか。ポーズでないなら自分の意志で15年後の未来図に盛り込むべきだ。7月にも政府案として決める予定だが、その前にパブリックコメントにかける。この未来図でいいのか。改めて考える機会である。
 電源構成は、不測の事態で電気が供給できない事態にならないよう、あらかじめ電気の賄い方を考えておく目標値のようなものだ。再エネ22〜24%という目標は非常に高い。再エネの課題克服に向けた施策が次々に打ち出した方が、雇用も増え、経済成長も見込める。原発回帰が新しい成長の芽を摘みかねない。電気の自由化を機に、再エネを軸にしたエネルギー産業への参入を考える企業や地域経済の核にしようという自治体も増えている。
 最近、東京でも福島でも感じることだが、震災直後の省エネ・節電は影を潜めている。原発事故は過去のもので、今は何もなかったようにも感じる。福島の地方紙では相変わらず原発関連記事が毎日掲載されているが、中央紙にはたまに掲載される程度で、その頻度は極端に少ない。「原発事故は過去のもの」という意識こそがもっとも怖い。政治も原発は争点にならず、再稼働も易々と通る。気付けば原発事故前と何ら変わっていない状況こそが、今の政権の思うつぼだ。風化は後退だ。

 

 

除染袋で満たされたゾーンと新規ゾーン

葦に覆われた常磐線と空の送電線


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