東北ブナ紀行(56 奥田 博

  「大震災が教えてくれたもの」Ⅻ

霊山での定点観測、3年を経過して

 

 2014年11月末日の総会後、佐藤守さんから三年間の「霊山登山道の空間線量測定報告」がなされた。三年間の線量の推移は、概ね理論値と一致すること。しかし赤松の下など一部に下がっていないホットスポットが存在すること、空間に露出した岩場では、ほぼ平均値よりも下がっていること、などが解かり易く説明された。
講演の後半はセシウムの山から森を経て川に至る流路でのセシウムの動態の説明があり、岩場と落葉広葉樹と針葉樹の違いを含めて、土壌とセシウムとの関わりが、こちらも解かり易い説明があった。質問が数多く出たのは、解かり易い説明であった証でもあった。

 学習院大学の村松研究室から線量計を貸与されて、計測が始まったのが2011年6月。村松教授を迎えて、霊山で第一回の計測を行ったのが2011年9月10日。以降、2012年9月9日、2013年9月14日、そして今年2014年9月23日と3年間の4回のデータが集まった。定点観測は多くのものを教えてくれている。村松先生には、毎回同行いただき、多くのアドバイスや考え方を教わった。佐藤守さんとの意見交換も貴重なお話だ。また村松先生は現地のキノコも毎回研究室に持ち帰り計測を行っている。そのデータも楽しみなところ。

 3年間で多くの線量計にも出合った。村松研究室から貸与された線量計測器はRDS31(Semiconductor)という簡易型の計器であったが、守さんは並行してTCS172(NaI) (Scintillation Survey Meter)を使っていた。常に比較校正という意味もある。GPSを備えた京大製なるKURAMAは10kgあって背負うのは大変だったが、今年はその軽量化版ともいえる1kgのHot Spot Finder(CsI,only 2014) で進歩を重さで感じた。今後も霊山での計測は継続してゆくだろうが、新たな発見・出合いもあるだろう。

 いわれなき解散による年末の総選挙は、自民党の思惑通りに圧勝。野党が調整にモタモタしている最中に抜けだした感がある。原発のエネルギー問題を争点にせず、ひたすら消費税10%の延期とアベノミックスに絞った戦略は功を奏した。2015年は、原発再稼働の年になるだろう。自民党圧勝=原発再稼働容認、という免罪符をもらったという方程式が成り立ったのだ。

Hot Spot Finderによる計測↓とトレース結果↑

2011年と2014年の線量対比↑

 

 


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