東北ブナ紀行(53 奥田 博

  東北の山に残されたわずかな面積のブナの森。そのわずかなブナの森を訪ねて歩く。そして期待通りの森に合えることは嬉しいが、期待しない山で出合ったブナの森は、殊更喜ばしい。そして森で過ごすのは至福の時間だ。今回は、期待しないで登った山で出合ったブナの森の紹介を!

85)徳網山 788m

朝日連峰の南端、祝瓶山の西側にそびえる788mの徳網山。祝瓶山に向かう途中の森も素晴らしいが、この山のブナは第一級なのだ。登山口から30分も登れば、見事なブナ林に囲まれる。この森が、山頂直下まで続く。
入口には小さな目立たない標柱が建っているが、見逃してしまいそうだ。登山口の看板を見て、杉の人工林に入ってゆく。これを抜けると、雑木の二次林だ。さらに登ると、明瞭な尾根に出て北へと方向を変える。すると見事なブナが現れる。ブナの間に道があって、ブナ街道といったところだ。深い雪に枝や幹が変形したブナが多く見られる。ここは新潟県境に近い豪雪地帯であることがうかがわせる。気に入ったブナを見付けて、ザックを降ろしてコーヒーを飲む。至福のひと時だ。
道は直角に西に向かうと、山頂が顔を出す。そんなに展望の尾根ではないが、東側は崖になった立派な山容だ。尾根を上部に上り詰めると、ブナはさらに立派になって、見上げて首が痛くなるほどだ。再び、尾根は直角に北東へと向かうが、尾根は細くなってくる分、ブナは細くなってくる。さらに高度を上げると矮小化したブナとなって、狭い展望の山頂到着となった。

コースタイム:登山口(20分)尾根ブナの始まり(1時間)山頂

 


個性豊かなブナが点在する徳網山

86)白髪(しらひげ)山 1294m

船形連峰は多くの登山コースがあるが、実際に登山道周辺でブナ林が見られるのは、宮城県の大滝キャンプ場周辺のみだろうか。船形山周辺は人の手が入っているからだろう。山形側の柳沢小屋を過ぎて、さらに林道終点まで向かうと船形山へと登山口となる。11月に入って間もなく、船形山頂目標ではなく白髪山から寒風山を経て関山峠までの縦走である。
登山口から入って間もなく、大きなブナが現れて驚かさられた。このブナ、300年は経っている魑魅魍魎ブナと呼んでいい。何とも怪しげにしてキッカイな太さと枝ぶりと大きなウロ(洞)。アガリコだろうが、実に面白い。この先にも、端正なブナから枯れる寸前のブナ、若いブナなどが楽しめた。白髪山への登りに差掛かると、船形山が霧氷に輝いており、皆でしばし見入る。山頂からの展望を味わい、縦走路を寒風山へと向かった。(実際には、私だけ車を関山峠に廻すために、来た道を戻るのでした)この先の縦走路には目ぼしいブナ林は無いのでした。
 コースタイム:登山口(1時間)白髪山(50分)寒風山(1時間10分)関山峠

 
白髪山登山口にある魑魅魍魎ブナ

 


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