東北ブナ紀行(46 奥田 博

 「大震災が教えてくれたもの X」〜実情、東北の山の放射能〜

 前回の号で『この一年間、「ブナ紀行」は実質お休みしたが、次回から再開したい」と述べたが、実はまだ言い足りないことがあって、放射能シリーズを続けます。次回こそ「ブナ紀行」を!と願うが?。
 5月13日米沢の斜平山で開催された観察会は、好天に恵まれ新緑を堪能した。山頂では、関根さんから山菜のコシアブラを分けてもらい、久し振りに山菜を堪能した。思えば、昨年から今年の山菜は、福島県や宮城県では、採れない状態が続いている。キノコを含めて、庶民のささやかな楽しみは、取り上げられたままだ。この状態は、一体いつまで続くのだろう。
 現在、山に登れば必ず放射線量を計測しているが、少しまとまって来たので、放射能分布図に代表的な福島県外の山の線量をプロットしてみた。青森県の多くの山は0.05μSv/hレベルであり、平常数値と思ってよく表記しない。数値は山頂での1m高さのデータである(山頂部の数値が高いとは限らない)。
 早川由紀夫氏作成の放射能の広がり図を見ると、福島県外でのホットスポットは、岩手県・平泉を中心とした場所、姫神山を中心とした場所、船形山、牡鹿半島の4か所に見られる。今後、それらの山々を調査したいと思っているが、いずれの場所も福島市よりも遥かに低い水準(1/10)であることを考えると、この空間線量値は大きな問題はないと思われる。
現在は空間線量による外部被曝よりも、食物や水などから摂取される内部被曝の方に注意が必要だといわれる。4月から暫定基準値から厳しい基準値に置き換えられて、農家などは厳しい対応を迫られている。今のところ山菜などは、それ相当に高いと思って口にした方がいいだろう。我々、福島県民は既に多くの食物や飲物から放射能を摂取していると思われる。ガンの発生リスクばかりが話題になっているが、チェルノブイリでは、心臓が急に苦しくなる、起きていられない倦怠感、やる気を喪失する、などの症例が多くの人に発生しているが、原因不明で片付けられている。広島の肥田医師は、同じ事例を原爆投下後に多く見ているという。これらは全て内部被曝によって起こされた症例であり、今後注目してゆく必要がある。

 


戻るブナ紀行目次へ